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BOOK INFOMATION

単行本 『 片付けられない女魂 』 は、Amazonマーケットプレイスで購入できます。
片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



マンション管理組合の会計担当になったので、先日、町内会費を集めに全戸を訪問して回った。
いつ行っても何度行っても不在の家や、うっかりなのか故意なのかインターフォンの電源が入ってない家、「○月×日なら払えるかもしれない。いや、払えないかもしれない」という家などがあって難儀もしたのだが、これまで何年も挨拶を交わすことしか関わりのなかった人とのコミュニケーションは思ったよりもずっと楽しかった。
が、それ以上に興味深かったのは。
同じマンションなのだから、どこの家も、特に玄関先は似たような作りだというのに、照明の色や玄関マットや三和土の横にある靴箱の上の飾り方なんかで随分印象が違っていたこと。
和風だったり北欧風だったり無印っぽかったり、でかいリボン猫のぬいぐるみを置いていたり(萌えた)、なんというか、玄関は、住んでいる人の好みやセンスや暮らしぶりを表している場所なのだなあと、21歳にして初めて気づいたのだった。(年齢をサバ読んでいる痛いおばちゃんはスルーするが吉です)



風水では、みたいな話をしたいわけではもちろんない。
もっと単純な、というか、もっと低ぅーいレベルの話。



玄関に郵便物を10ヶ月も積み続けたあたしは、
やっぱ汚部屋住人気質なのね。



という話である。




(いつズサーっとなってもおかしくない量だが俺基準では、全然大した事はない)




(それどころか、びゃーっと広げず、一ヶ所に積み上げ続けたことが奇跡)



というわけで、汚部屋マニアのみなさん、こんにちは。
4畳半の壁の続きを始めネタはたくさんあるのに、如何せん8ヶ月半、140文字以内の、文章とも呼べないようなものをTwitterに書くだけだったので、全く調子がつかめませんが、とりあえず、文章を書くリハビリも兼ねて、玄関に積み重ねていた郵便物を整理した話から書こうと思っております。
っていうか。



あたしの記憶が正しければ、この中に、すんごいイイモノが入ってるハズなんだ。











(短め。明日に続きます)





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 本を出す人とか、こっち界唯一の良心とか、蟲の人に倣い、カテゴリを変えてみました。


家にいる時間が少なくなると、それまで全く気にしていなかったことや急ぎでもなんでもないようなことが、気になって気になって仕方なくなったりする。
大昔、付き合っていた男と休みのたびに会うのが暗黙のルールになってしまったことがあったのだが、その頃あたしは土曜の朝になると決まって、なんでだか布団を干したい欲に駆られていて、「布団が干せないのなら布団乾燥機を買うべきか!?」と本気で考えたりした。
天気の良い週末に布団を干したくなるのは至極当たり前の感情だとは思うのだが、当時のあたしは既に、陽の当たらないコテコテの汚部屋の万年床で寝起きするような人になってしまっていたから、天気のいい週末に何も用事がなかったとしても布団を干したことはなかったし、その男と別れて早速布団を干したかというと、それもない。
実際のところ、その男と別れて最初の週末にやったのは惰眠で、翌週は、土日続けて朝から晩まで雀荘にいた。
つまり、どうもあたしは、ひとりの時間が減ることにより、わけのわからない焦燥感を生み出してみるタチらしい。
さて。
ここ数ヶ月、平日週末問わず、家にいる時間が極端に短くなったあたしの気掛りは専ら「お箸」だった。
確かに、長年使っていた箸の先の塗りが剥げてはいた。
でも、たとえばそれで唇を傷つけたとかいうわけではないし、そもそも、暫く自宅で食事が出来ていなかったのだから、仕事が落ち着いたらゆっくり新しい箸を買いに行けばいいだけのことだ。
そう頭では判っているのだが、でもなんでだか家のことを考えるたび、「新しいお箸を買わなくちゃ!」と軽く焦っていた。
そんなある日のこと、風呂と着替えのために家に帰ると、トイレの便座カバーがピンクのに変わっていた。




(マナーとしてぼかしてますが、我が家の便器はなぜか綺麗。小人の仕業か?)



まあ、長期間あたしが替えてなかったから夏目父がやる気になるのは理解できるけど、それにしても、家にピンクの便座カバーなんてあったっけ?
ねえよ。
もしかして夏目父が買ってきた?
いやいや、ヤツにこの手の買い物が出来るハズはないから、きっと、使わないまま家のどこかにあったのを見つけたんだろうなあ。
洗ったやつがちゃんとあるのに、それは見つけないでこっちを見つけちゃったんだろうなあ・・・・。
くらいに思っていた。



そしてまた別のある日。
深夜に帰宅し、コーヒーを淹れるため真っ暗なリビングの灯りをつけると、テーブルの上になんとも微妙な物が乗っていた。




(どう薄目で見ても菊)



墓参りに行くたびに夏目父は、墓地のあちこちに雑草よろしく生えている菊の葉っぱを引っこ抜いて持ち帰りベランダで育てているのだが、これまでは、それが咲くと仏壇に供えるのが常だったから、ガラスの瓶に挿してリビングに置いているのは見たことがなかった。
というか、菊=供花のイメージがあるせいか、飾るための花としては最も相応しくない気がするんだが。
ああ、もしかして、綺麗に咲いた自慢か?
源平蔓のときみたいに大騒ぎしたいのに、なかなか娘と顔を合わせないから、見せるために飾ったとか?

・・・・と、家にいることが少なくなっていた数ヶ月の間、こういう、夏目父らしからぬ行いをたびたび目にして、そのたび頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされた。
が、あたしがそれらを目にするのはたいてい深夜で、風呂に入ることや1分でも多く眠ることが先に立ち、だから翌朝には忘れてしまっていた。



そんな状態からようやく抜け出した先週、まともな時間に帰宅できたので、ものすごく久しぶりに家で晩ご飯を食べることにした。
既に食事を済ませていた夏目父は、あたしが今にもスキップしそうなくらいのテンションで茶碗にごはんをよそうのをリビングの定位置から見ながら、「外食のほうがいいじゃない」とか何とか、ぼそぼそとツッコミを入れていた。

「外食ばっかだと、卵かけごはんとか明太子とか納豆とか食べたくなるんだよ」
「納豆はないよ」
「・・・・昨日の夜中に4パック買って帰ってきたんですが」
「今朝2パック食べて、さっき2パック食べた」
「相変わらずの納豆セレブっぷりですなあ」
「明日の朝食べる納豆がない」
「残念だね」
「とても残念です」
「明日の朝の分、とっておけばよかったのに」
「そういうことは出来ないの」
「娘の分をとっておくことも・・・・」
「出来ないの」(即答)

納豆ははなから残ってると思っちゃいなかったから、卵かけごはんを食べることにした。
ごはんを窪ませて、卵を割る。
・・・・と、夏目父が突然立ち上がり、「あ、新しいお箸!」と言った。

「へ?」
「このあいだ、ブラックオリーブの缶のプルタブ開けるのに使ったら折れちゃって」
「・・・・「折っちゃった」の間違いだろ」
「思いっきりやったわけじゃないのにポキンと折れちゃって」
「・・・・なんでそういうことを人の箸でやる」
「だって俺の箸が折れたら困るもん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「で!」
「あ?」
「探したら、キミにぴったりの箸がありましたー」
「探したら?」
「食器棚の中見たら、結構使ってない箸があったんだよ」
「ほう」
「その中でもキミにぴったりの箸を用意しといたので、これからはそれを使ってください」
「・・・・侘びのつもりでしょうか?」
「侘び?なんで俺が」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「だってずっと前から、塗りが剥げてるから買い替えるとか言ってたじゃない」



あたしが箸の塗りが剥がれたと口にしたのは繁忙期に入る前のことだったから、夏目父がそれを覚えていたのは意外だった。
そして。
関係ないような、興味の無いような素振りをしつつも、実は意外と、いろんなことを気にかけている人なのではないかと思った。
その気になれば何でも自分で出来る人なんじゃないか、とも。
そもそも、便座カバーを取り替えることすらしない人だったし、菊にしたって、切って仏壇に供えるのはあたしの役目だった。
仏壇に供えるまではやらずとも、やって貰える当てがなければ、切って水に挿すくらいは自分でやるんだ、うちの親って。
そんなことをグルグル考えながら突っ立っていると、夏目父は食器棚の引き出しを開ける手を止めて、「ああそういえば」と話し始めた。



「仏壇の花の水ってどこに捨てるの?」
「へ?」
「なんか、暖房つけっぱなしでいたらでろでろになってた」
「・・・・水替えてくれって言ったのに」
「だから、替えようとしたら、花も水もでろでろになってて」
「どこにって、普通に台所に流してるよ」
「でろでろは?」
「三角コーナーにじゃーっとやってる」
「でろでろが三角コーナーにあったらイヤじゃない?」
「それがイヤだから、そうならないようにマメに水替えるの。三角コーナーに入ったでろでろは新聞に包んで冷凍室」 (我が家ルール)
「ああ、そういうこと」
「で?花はどうなってるの?」
「水がでろでろだったからトイレに流そうとしたんだけど、便座カバーにびゃーっとなっちゃって」
「・・・・だからカバー替えたのか」
「そう。あのカバー探すのに4時間かかった」
「・・・・探し下手だな」
「で、結局見つからなかったから、○○(徒歩3分のスーパー)で買ってきた」
「は?」
「で、疲れたから、花瓶はそのまま、仏壇のところに戻した」
「・・・・えーっと、なんでそうなりましょう?」
「それから、花を買い忘れたので菊の花を切りました」
「なのに、仏壇には供えてねえ、と」
「惜しい惜しい!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



惜 し い 惜 し い ! っ て 、 ど ん だ け 自 分 に 甘 い ん だ 。



ここまでで既に、持っていた茶碗を落としそうなくらい脱力したのだが、本当に脱力したのはこの後である。



「仕事呆けてる娘に・・・・」
「遊び呆けてるみたいに言うなよ」
「仕事にかまけて」
「言い直しても悪意を感じるなあ」
「仕事にかまけて仏壇の花の水替えを怠けた娘に」
「・・・・おうこら。いい度胸してんじゃねえか」
「今以上の災いが降りかからないような」
「災いの100%は親がせっせと降りかけてるんですが」
「素敵な箸を見つけましたー!じゃーん!」






センスはどうであれ、一瞬、「ああ、こんな人でも箸を準備してくれたのは本当なんだ」と感謝しそうになった。
が、金で書かれた文字を見て、今度は膝の力が抜けそうになった。




(萎えるネーミング)




(へ?)




(あ゛?)



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ずっと前に初売りの景品で貰ったやつだけど、幸福になれる箸だよね!下の字は気にしないで。まあ、オヤジっぽいから「お父さん」ってのもアリっちゃアリだし。うひゃひゃひゃひゃ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あー、あとさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「それ食べたらでいいから納豆買ってきてね」







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。







て め え が 行 け 。





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 1ヶ月半も更新してないのに・・・・!


(腕力自慢話の時間ですが、予定を変更してお送りします)



1ヶ月に1回くらい、平日の夜にあたしが夏目父よりも早く帰宅することがある。
で、あたしがリビングにいると夏目父は、帰宅してリビングのドアを開けた途端、驚いてピョンと飛び上がる。
先に帰ったあたしが自分の部屋にいたとしても、後から帰宅した夏目父がいるリビングのドアを開けると、ピョンと飛び上がる。
時には「ギャッ!」と声をあげたりもする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もう14年も2人で暮らしているのだから、家に帰ってあたしがいることにいちいち驚かないで欲しいのだが、夏目父曰く、「驚くなって言われても、自分が帰った時に誰もいないのが当たり前になってるから、自然に体が反応しちゃうんだよ」だそう。
そうですかそうですか。(棒読みで)

それにしても。
リアクションって個性が出るなあと思う。
少なくともあたしは、家で何かに驚いてピョンと飛び上がった記憶などないし、ましてや「ギャッ!」なんて、大人になってからは一度もない。
そもそも、心底驚くこと自体が年々減ってきているから、自分がどんな驚き方をするのかを、すっかり忘れてしまった。
きゃっ♪だっけ?(絶対違う)
ギョギョッ!だっけ?(それはさかなクン)
オヨヨか?(それは三枝。しかも昭和)



・・・・なんつうしょーもないことを深く考え込んでいたわけでは勿論ないが、夕べ遅くのこと、久しぶりに、思いっきり驚く出来事があった。

23時ちょい前に帰宅し、玄関から真っ直ぐにリビングに行った。
あたしが「ただいま」と言うと、夏目父は何やらピリピリした様子。

「遅ーい!」
「へ?」
「お客さんきてるのに帰りが遅い!」
「は?」
「お友達。最初は玄関で待ってて貰ったんだけど、いつ帰ってくるのかわかんないし申し訳ないから、部屋に入ってもらってるよ!」
「どの部屋に誰を」
「アナタの部屋に。お友達の名前は知りません」
「名前知らないのに家に入れるって何」
「だって俺、会ったことあるもん」
「それ、男?女?」
「まあ、部屋に行ってみりゃわかるよ」
「つうか布団敷きっぱなしなんですけど」
「うん」
「うん、じゃねえよ」
「いいから早くー。俺が帰ってきた時間からずっと待ってるんだから!」
「・・・・それ何時」
「7時半くらいかな」



聞き間違いかと思った。
何故なら、重ねて書くがあたしが帰宅したのは午後11時ちょい前だからである。
いくら顔見知りの友達だからって、フツー、家にあげたことのない他人を3時間半も、ひとりであたしの部屋に置いとくか?
夏目父がオカシイ人だということは嫌というほど知っているけれども、基本的に人と関わるのは好きだから、そんな常識外れな招き入れ方をするとは思ってもみなかった。
つうか。
いくらあたしが仕事だからってさ、電話するとかメールするとか、来客を報せる方法はあるだろーが。
それもせず、かといって客人の相手もせず、何でお前はリビングでのほほーんとテレビなど見てるんだ?
・・・などなど、我が親に小一時間説教したい衝動に駆られたが、それはいつでもできると思い直し、あたしは急いで自分の部屋へと向かった。
後ろから夏目父がついてきたが、それは大して気にしなかった。



その向こうにいるのが誰か判らない状態でドアを開けるのは、結構怖いものである。
だから、自分の部屋なのに恐る恐るドアを開けた。
で、ますますワケが判らなくなった。
なぜなら。



部屋には誰も居なかったからである。



「どういうこと?」と、真後ろに立っている夏目父に訊いた。
すると夏目父は、あたしが着ている上着を引っ張りながら、おすぎかピー子のような口調(どっちでも同じだ)で叫んだ。



「ほら居るでしょ!お友達が!」

おすぎです。映画を観ない女はバカになる!バカな女は20分で飽きる (中経の文庫)
(どうしても、口真似しながら読んでしまう)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
真っ暗で誰もいない部屋を見て「ほら居るでしょ!お友達が!」と叫ぶ、 歳に不足がない我が親を想像してみて欲しい。
あたしはいろんな意味で怖くなり、今度は恐る恐る後ろを振り返った。
本格的にオツムが壊れてしまった可能性が高い夏目父は、それを裏付けるかのごとく、まるで何かに憑かれたような目で、部屋の中のある一点を凝視していた。
あたしは、もう一度部屋を見やり明かりをつけると、夏目父の視線が釘付けになっているであろう方向に目をやった。
すると、いた。







(注意:苦手という人が多いであろう系の画像が出ます)








(ブラインドの汚れっぷりを写したわけではありません)






(近づきます)








(体長3センチ程度の蛾です)







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
本人に確かめたわけではないが、確かめるまでもない。
夏目父がおすピーになるまでの経緯は多分こうである。

夏目父が帰宅して玄関のドアを開けたとき、外から蛾が入ってきてしまった。
異常なまでに虫嫌いの夏目父は大慌て。大暴れ。
で、意図的にかどうかは定かじゃないが、というかどっちでもいいが、勇気を出して娘の部屋のドアを開け、「しっ!しっ!」かなんかやったりやらなかったりしてみたら、運良く蛾は娘の部屋の中へ。
バタンとドアを閉めれば隔離終了。
ふぅ・・・・。
あとは娘の帰宅待ち。
うちの娘は虫なんて平気だし。
友達かよっ!っつうくらい平気だし。

・・・・みたいなカンジかと。
後から考えてみれば、確かに要領を得ない話ぶりだったし、玄関に並んだ靴を確認してさえいれば客人がいるのかどうかは一目瞭然だったハズで。
だから、「「友達」ってのを鵜呑みにしたあたしがド阿呆でした」ってことで話は終わるハズだった。
が、この後、思いもよらない夏目父の行動によって、あたしは思いっきり驚くことになる。



さて、夏目父があたしの部屋に招き入れたのが蛾だと判明したのだが、問題はその処遇である。
が、夏目父が相変わらずあたしの上着を力任せに引っ張っているから、部屋に入ろうにも入れない。
なので、「離してください」と言ってみた。
すると夏目父はおすピー度を増してしまい、「離したらどうする気っ!」と、まあ煩くて仕方ない。

「蛾を外に出すだけですが・・・・」
「どこから!」
「・・・・・・・・・・・窓から」
「どうしてティッシュで丸めてポイしないのっ!」
「丸めたティッシュ、どこに捨てりゃあいいわけ」
「・・・・あ」 ←虫の死骸入りティッシュが家の中にあるのもOUT
「だから殺さないで外に出すの」
「どうやって!」
「あ?」
「とまってる蛾をどうやって外に出すの!」
「どうやって?」
「そう!どうやって!」
「どうやってって、そりゃあ手で・・・・」



あたしがそう言ったときだった。
夏目父が、強く引っ張っていたあたしの上着から手を離した。
そして次の瞬間、後頭部に衝撃を感じた。
というか。



2 0 年 く ら い ぶ り に 、 親 に マ ジ で 叩 か れ ま し た 。



しかも。
ペシ、じゃなくバシッ!っと。
バシッ!っつうか、バコーン!と。
バコーン!っつうか、ズバコーン!と。
・・・・って、もういいですかそうですか。

言ってもきかない時にペシっとやる親ではあったけれど、まさかこの歳になって、悪くもないのに叩かれることになろうとは予想だにしなかった。
が、あたしが驚いたのは叩かれたことにではなく、蛾を素手で掴みかねない我が娘の後頭部を脊髄反射的に叩いてしまった己に驚いた夏目父の一言に、である。



「ひゃ・・・・」
「?」
「ひゃ・・・・!」
「??」





「 1 0 0 円 あ げ る か ら 今 の は 無 か っ た こ と に し て !」
(註:アラフォーの娘に言ってます)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





駄 賃 か 。





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 なにこの、一足も二足も百足も早い大掃除ブーム。


(4畳半ヤニ掃除記事の途中ですが、割り込んで草の話です)



暑さに滅法弱い夏目父が南側のベランダで植物を育てるのに、この冷夏は都合が良かった。
朝晩せっせとベランダに出て、(ヤカンがないのでバケツで)水や肥料を遣ったり、アブラムシ対策にとオルトランを過剰に撒いたりしている。

(だから食える物は育てない)

これがもし猛暑だったら、暑さに勝とうとする意欲がない夏目父はいつも通り、野菜室並みに冷やした屋内に篭り、ベランダの鉢植えを片っ端から枯らしていただろう。
が、あたしにとっては枯れてしまったほうが面倒がない。
なぜなら、草花が順調に育った年の夏目父は、「見て!花芽が出た!」「見て見て!花が咲いた!」「肥料買ってきて」「植え替えしたいんだけど、鉢底に敷く網、どこにやったっけ?」「種か虫かわかんないから触れない!」「ぎゃー!アブラムシ!」と、とにかくやかましいからだ。
この夏の夏目父はいつも以上に騒々しい。
原因は、枯れたと思っていた植物が復活したせいである。



15年は前からあるのに一度も花が咲いたことがなかったから、あたしにとってそれはただの観葉植物だった。
夏目父が大事にするあまり室内に置いてしまうせいで花芽がつかない、という可哀想な境遇で育てられたせいか、葉の色も薄く厚みもなくてひ弱な観葉植物ではあったが、それでもなんとか生き続けていた。
が、今年の2月初旬、突然葉が枯れ始め、みるみるうちにそれは蔓だけになってしまったのだった。
ひょろひょろ伸びた蔓だけが残った鉢は寒々しく、「残念だったね」とか何とか言いながらその鉢をベランダに出したのが3月のこと。
そして、見紛う事なき枯れ木だったそれが芽吹き始めたのはGW直前だった。



それを喜んでいるだけなら問題はないのだが、夏目父は草花に限って、「見て!見て!」とウルサイ。
しかも。



「復活しそうなんだよ!」
「ほう」
「見てみてよ」
「いいよ」
「えー、見てみてよー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「見っ!てっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」



という具合に、幼児よりシツコイ。



あたしが頑として「見ない」と言ったところで夏目父の「見て見て」が止むことはないため、言われるがままに見に行くはめになる。



「芽が出た!見てみて!」
「はいよ」 ←てめぇひとりで楽しめや、と思っている

「芽が伸びた!」
「ほう」 ←昨日見たのと同じ芽だろーが、と思っている

「別のとこからまた芽が出た!」
「どれどれ」 ←葉っぱの数だけ呼ぶつもりかよ、と思っている

「花芽かもしれない!」
「いよいよか」 ←花がひとつしか咲きませんよーに、と願っている

「花芽だ!」
「やっぱり」 ←昨日と全然変化ねーし、と思っている

「花芽だ!」
「おう」 ←今朝見たばっかだけどなっ、と思っている

「蕾!蕾!」
「へー」 ←咲いてから呼べや、ごるぁ!と思っている



こうしてこの4ヶ月、あたしが泥酔していない限り1日1回、ともすれば2回、下手すると3回は呼ばれて、1つの植物の成長を見せられた。(多い)

気温が低いだけじゃなく、どんより曇ることが多かった我が街では日照不足が深刻らしいが、遮るものが何もない南側のベランダでは、マメに手入れしたこともあって花がジャンジャン咲いていた。
そしてとうとう件の花が咲き始めたのは7月中旬、具体的には7月14日のことだった。










源平蔓(ゲンペイカズラ)というらしい。
綺麗だし、あんま見たことがない花ではあるけれど、4ヶ月もわーわー騒ぐほどのことか?というのが、あたしの正直な感想だ。
つうかそもそも。



「白と赤の花が咲く蔓(ツル)草だから「源平蔓」」
「へ?」
「え。もしかしてうちの娘は「源平合戦」も知らないとか・・・・?」
「昔話?」
「それは、猿カニ合戦」
「ああ・・・・」
「じゃあなんで、運動会で赤組と白組に分かれると思ってたのさ」
「め、めでたいから」
「・・・・おめでたいのはお前だよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「さて、それでは問題です。源氏と平氏、どっちが赤でどっちが白でしょうか」
「へ?」
「正解する確率は50%です」
「じゃあ、源氏が赤」
「・・・・勘まで悪いな。気を取りなおして2問目!」
「もういいです」
(無視して)「源氏は白、平氏は赤が正解ですが、その白と赤は、何の色でしょうか」
「は?」
「大ヒントです。源氏は白の、平氏は赤の何かを持っていました。それは何!」
「判りません」
「考えて!」
「うーーーーーん」
「あと10秒!9、8、7・・・・」
「あっ・・・・」
「おお!さあ、答えをどぉぞっ!」





「 ふ ん ど し ? 」
(註:真剣です。が、正解は「旗」)





つうくらい歴史音痴のアホ娘を相手に、名前の由来から語ったところで何が楽しいんだ。
あたしに名誉というものがあるのかは甚だ疑問だが、あるという前提で一言加えると。
あたしは歴史だけじゃなく社会科全般と国語全般にアホだが、でもそれは大昔からなので、いい加減、「そんなことも知らないなんてありえねー」的ことを親に言われるのは飽きた。
ついでに。
上司や同僚にもこの手の問題を出されることがあるが、どうせ9割9分ハズレるのだから、もうそろそろ、哀れんだ目で見るのはやめてほしい。



さて。
こんな具合に、冷夏&一鉢の花で夏目父は毎日テンションMAXなのだが、この夏の日照不足はあたしにとっては深刻な悩みだ。
というのも。
4畳半の部屋から繋がる小さいベランダで種から育てている日々草の生育状態がすこぶる悪いからだ。



まあ、別に日々草が咲かなかったところで大したダメージはないから、「深刻な悩み」というのは大げさだが、「こっちのベランダで俺が育ててるのはガンガン咲いてるけどお前のはどうよ?」と、上から目線で頻繁に訊いてくる夏目父が鬱陶しくて仕方ない。(鬼娘)

(註:我が家では、リビングを含む南向きの部屋は全て夏目父が使い、北側にある2つの部屋(4畳半&8畳)をあたしが使っている)

あたしが北側のベランダに出るのはタバコを吸うためなのだが、その直後にリビングに行くと当然あたしからはタバコの臭いがする。
すると夏目父は必ず訊くのだ。
「日々草、咲いた?」と。




(左:蒔いた種から発芽。右:ヅラ店長からの頂き物)



「咲いてるよ」
「ヅラ店長じゃないほうだよ」




(これだって源平カラー。なのに名前は「ヅラ店長」)



「咲いてない」
「お盆も過ぎたのにね」
「うん」

で、この会話の最後に必ず言うのだ。



「 南 軍 の 勝 ち だ な 」 と 。
(南側使用の夏目父=南軍、北側使用のあたし=北軍)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
つーか競ってねーし。
・・・・と言いたいのは山々だが、それを言ったところで、「じゃあこれから競おう」と言い始めるに決まっているから、何度聞いたか判らないその言葉には一度も反応せずにいる。
で、数日前。
いつものように北側のベランダでタバコを吸いながら日々草を眺めていて気がついた。




(花芽キター!)



それからの数日は、ヅラ店長の日々草のようにわっさわっさと花が咲く様を思い描き、ワクワクしながら成長を見続けた。
が、先日。
ようやく開いた花を見て、なんとも複雑な心境になった。




(小さ)




(1個ぽっち)



もちろんその日も夏目父は訊いてきた。

「そろそろ咲いた?」

少し迷ったが、答えた。

「うん。1個だけポツっと」
「おお!じゃあ見てあげましょう見てあげましょう」

・・・・「見て」なんて頼んじゃいねえんだが。

夏目父はパタパタと4畳半へ行き、すぐリビングへ戻ってきた。
そして言った。

「ちっちゃいね」
「うん」
「でも咲いてよかったね」
「まあね」
「絶対咲いてよかったよ!!!!!」

それにしても夏目父は、話が草花のことになると、どうしてこうも暑苦しいのだろう。
が、ふと、いつもの暑苦しさとは質が違うような気がして、先を促した。

「随分力説するね」
「だって!」
「はあ」





「華がない人生なのに、育てた花まで咲かないなんて可哀想だもん」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





その、「今俺すげー上手い事言った!」みたいな顔、やめれ。





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 2週間空いたのに!びっくりしております。


随分前、夏目父を初めて某ロックユニットのライブに連れて行った時のこと、ライブが終わると夏目父は、あたしとあたしの友人に向かってそれはそれは輝いた目で、「こんなにいっぺんに、感激して興奮して感動したのは人生で初めて!」と言った。
その言葉を聞いてあたしも友人も、夏目父を連れてきて良かったと心底思ったのだが、と同時に、孫がいる年齢になっても尚、人生で初めての経験をするチャンスがあるものなのだと、改めて気づかされた。
それから10余年が経ち、アラフォーとなった今のあたしも、経験していないことがまだまだ、まだまーだあるのだなあとつくづく考えさせられる出来事が、先日あった。



きっかけは、20年近く前に買ったこのコタツ布団である。






「実家の冬といえば炬燵にみかんだろー」と思っているにもかかわらず、我が家で大昔に買ったこのコタツ布団を4シーズンしか使っていないのは、例年、リビングのテーブルをコタツに替えるのを億劫がっているうちに冬が終わってしまっているからというグダグダな理由なのだが、一応毎年シーズン前になると押し入れからコタツ布団を出して干してみたり、まともに使った後はクリーニングに出してはいた。
ただそうしたところで、経年によるものであろう埃っぽさや古さを感じる匂いは消えてくれず、今年の春先、何年かぶりにコタツにかけていたこの布団を外した時には、「捨てちゃおうかな」とさえ思ったくらいだった。
ただ、今回も入れて4シーズンである。
いくらで買ったのかも、一般的なコタツ布団の耐久年数がどのくらいなのかも知らないが、「たった4シーズン」という気がしまくりで、だからこのコタツ布団をどうにかスッキリさせたいと思うに至ったのだった。

さて。
この手の物をスッキリさせるといえばやはり丸洗いである。
そして出来ることなら。
仕上がりはクリーニング店のそれではなく、たとえるなら、家で綿のシーツを洗い真夏の太陽の下に干した時のような、



スーパースペシャルにスッキリ仕上げたい。



そうなると一番いいのは自分ちの洗濯機で洗えることなのだが、我が家の洗濯機はコタツ布団よりも前に、少なく見積もっても21年前に買った4.2リットルキロサイズのため、コタツ布団はおろか、シングルの毛布1枚でいっぱいいっぱいだ。
風呂場の浴槽にお湯をためて・・・・という方法も一瞬頭を過ぎりはしたが、脳内シミュレーションし始めてすぐに気が遠くなったため、これは早々に諦めた。
で、結局あたしが選んだのは、コインランドリー。
ボロだろうと何だろうと常に洗濯機のある暮らしをしていたあたしが縁が無いと思い込んでいた場所であり、20年生きてきて初めて立ち入る場所でもある。
#激しく歳をサバ読みたい年頃のオバさんです。突っ込まないでやってください。



そうと決まればあとは行動あるのみ。
カーっと晴れて気温が高い日に決行することとし、それまでの間、家から行きやすくて綺麗なコインランドリーを探さねば!と意気込んでみると、縁が無い場所だと思い込んでいた時は気づきもしなかったのだが、家から徒歩5分の場所にある、いつも行っているクリーニング屋に隣接してコインランドリーが出来ていたことを思い出したのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





しょっちゅう見てんだろーが。覚えとけよ、あたし。



というわけで。
ミミズも乾涸びるくらい晴れた日、 朝6時台から準備を始めた。






せっかくだから(と言っても徒歩5分)、家の洗濯機じゃイマイチ洗いきれてない感が漂っていたダブルサイズの毛布も洗うことに決め、






運びやすいように、何の違和感もなしにそれらを風呂敷で包んだ。






これを玄関まで運んでいる最中に起きてきた夏目父が、






「夜逃げスか?」とか(朝だし)、「こんな暑い日によくもまあそんな大仕事を」とか言っているのは聞き流し、でも、背中越しに聞いた、「不審者だと思われるから車で行きなよ」という言葉にはなんとなく従うことにし、徒歩5分のコインランドリーに車で向かった。

コインランドリーに着いたのは朝6時55分。
こんなにこっ早く行動を開始したのには、あたしなりの理由がいくつかあるのだが、一番大きな理由は、事前に数回偵察してみたところ、かなり早い時間から6機ある洗濯機が全て使用中になっているらしいと判明したからで、つまりあたしは、朝7時のオープンと同時に入り、洗濯機も乾燥機も順番待ち無しで済まそうと目論んでいたのだった。
が、甘かった。

コインランドリーの入り口には、オープン前だというのに既に大きな荷物を持った人が4人も並んでいた。
1番目は推定腹囲130cmなおじさん、2番目は孫と思しき男の子を連れたおばあさん、3番目はサッカーのらしい泥だらけのユニフォームを手にした20代男性、そして4番目は、背が高く背筋が真っ直ぐでイマドキ珍しいほど真っ黒い髪を短く揃えた推定30前後のメガネ男子である。

コインランドリーのドアを解錠するのは隣接するクリーニング店の人らしく、見慣れたおばさんに挨拶をしながらデカい風呂敷包みを持ってコインランドリーに入ると、おじさんが2機、おばあさんが2機の洗濯機を使い始めてしまったため、既にあたしが使える洗濯機はなかった。
かといって、その場を離れるわけにもいかないので、洗濯が終わるまでの間に読もうと思って持ってきた本を読みながら待つことにした。






ササリー無しで夏を越せない身体になった)



当たり前っちゃ当たり前の話だが、全6機の中で一番先に空いたのは、1番目に並んでいた、推定腹囲130cmなおじさんが使った2機である。
が。
あまりに一方的で失礼だということを承知で書くと。



おじさんがトランクスを洗った直後の洗濯機で洗った布団は綺麗・・・・?



なんつうことを考えてしまったからさあ大変。
空いている洗濯機の前で約1分、どうしたものかと考え込むはめになってしまった。
「そんなことを考えるヤツはコインランドリーなんか使うんじゃねえ」と自分で自分にツッコミを入れては見るものの、何しろトランクスである。
じゃあ、おばあさんが入れていた、3世代分はあろうかという量の洗濯物の後ならいいかといえばそうでもないし、泥だらけのユニフォームの後がいいわけでも勿論ない。
一番いいのは、「前に誰がどんな物を洗ったか?」を想像させないシチュエーションだったが、5番目になってからそんなことを言ったところでどうにもならない。
で。



今日洗うのは止めよう、と思った。
(マジで)



が。
2機の洗濯機の間で途方に暮れているあたしの目の前に、すぅーっと長い指が現れた。
そして横から、「これを押すと随分気持ち変わりますよ」という声が聞こえた。
声の主を見やるとそこには4番目が立っていて、長い指が示した先には、黒いボタンがあった。






「ちょっと潔癖入ってるとキビシイんですよね」と4番目は言った。
汚部屋住人であるあたしが潔癖なハズは勿論ないが、見知らぬ人と洗濯機を共有することに対する小さな違和感は、4番目が教えてくれたこのボタンを押すことで消えそうな気がした。

「ありがとうございます」
「いえいえ」

なんつう会話をしながら洗濯機にコタツ布団と風呂敷を突っ込み、フタを閉めてコインを入れた。
すると4番目が「あっ!!!!!」と言う。

「え?」
「あっ・・・・えーっと」
「はい?」
ドラム洗浄ボタンは、フタを閉めた後、コインを入れる前に押さないと効きません
「え゛っ」
「残念ながら、一度入れたコインは戻りませんからやり直しは出来ません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・残念です」
「じ、次回頑張ってください」




(17キロまで洗える洗濯機は1回600円)



そ、そうだ。
あたしにはもう1枚毛布があるのだ。
容量的には、17キロまで洗える洗濯機1機でコタツ布団とダブルの毛布を一緒に洗えるらしかったが、せっかく丸洗いできるのだからここは贅沢に、たくさんのお湯で少しの物をぐるんぐるんしたくて、敢えて別々に洗おうと決めていたのだ。
おじさんが使っていた、1機目よりは容量の小さい洗濯機に毛布を入れフタを閉めた。
で、また。



ドラム洗浄ボタンを押す前にコインを入れた。
(学習機能が無いらしい)






(13キロまで洗える洗濯機は1回500円)



が、洗剤まみれになって大きくぐるんぐるん回るコタツ布団や毛布を見ていたら、コインランドリーのシステムに抱いていた僅かな違和感みたいなものが吹っ飛んだ。
そうそう、こんなふうにぐるんぐるん洗いたかったんだ、ずっと。

洗濯を終え、次は乾燥。
脱水したままのコタツ布団を持って帰るには重すぎるし、たとえそのまま持ち帰って家で干せたとしても、にわか雨でも降ったらお終いなわけで。
ある程度のところまでは乾燥機を使いましょう。そうしましょう。



2サイズある洗濯機のうち、デカいほうに書かれていた説明文をみると、コタツ布団は1枚が適量だとはっきり書いてある。






が。
家に乾燥機がないせいか、ピーカンの日、濡れたモンを乾かすのに何百円も使う気にはどうしてもなれず、









300円(=18分)だけ入れて乾燥開始。
(ケチ)





しかも。





適量以上だと判りつつ、コタツ布団と毛布を一緒に入れて乾燥開始。
(ドケチ)








このドケチっぷりが致命傷になるかもとうっすら怯えつつ18分後に乾燥機のフタを開けてみたが、幸い、毛布もコタツ布団にも、水分の重みはまったく感じられなかった。
ホクホクした気分でそれらを取り出し、一緒に乾燥させていた風呂敷に包むと、何をどんだけせっせと洗っているのか未だ居た4番目の潔癖青年にお礼を言った。
潔癖青年が静かに言った、「でも、2回目も残念なことになってましたよね」という言葉にも全くメゲず帰宅して、人生初のコインランドリー体験は終了した。


大仕事を終えた気になって帰宅したものの、この時点でまだ午前8時半。
日当たりのいい南側のベランダに、洗いたてのコタツ布団と毛布を干し、それはもうカラッカラに乾燥させた。










プロがやるクリーニングには勿論それ相応の技術が施されているのだろうが、洗濯機でぐるんぐるん洗い、お日様の下で干した時の風合いとは確実に違う仕上がりだ。
どっちが手間だとかラクだとかどっちが高いとか安いとかいうんではなく、もっと単純に好みの問題で、多分あたしはこれからもコタツ布団はコインランドリーで洗うんじゃないかと思っている。



午後になり、カラッカラでふっかふかに乾いたコタツ布団と毛布を取り込んだ。
すると、それを触って匂いを嗅いだ夏目父が言った。

「あー、お日様の匂いがして気持ちいいねえ」

そうだろそうだろ。

「行ったことないけど、コインランドリーって綺麗なの?」

新しくできたばっかのところだから、洗濯機も乾燥機も備品も、みんな綺麗だったよ。

「じゃあさ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
嫌な予感がした。
ちなみに、あたしのこの予感は外れたことがない。



案の定夏目父は、「納豆買ってきて」くらい軽ーい感じで言った。





「 来 週 は 俺 の 毛 布 を 洗 う ん だ ね 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





人 の 予 定 を 勝 手 に 決 め ん な 。





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 本業が一段落したので、ようやくブログも本格復帰でーす。


南国出身の同僚とあたしは上司から、 『 チーム ハイエナ 』 と呼ばれている。
食いっぱぐれるわけにはいかん!とばかりに、仕事の匂いがすればわらわらと寄り集まりガッつき始めるという悲しき習性に由来しているのだが、そのチームに最近、新たなハイエナが加わった。
うちの部署に異動してきた、見惚れるほどに美しい29歳の独身男・山口である。
山口がどのくらい美しいかというと。
異動してきて3日目、山口が初めて出席したクライアントのオフィスでの打合せの席でお偉いさんが冗談で、「是非うちの社の広告モデルに!」と言ったのを聞いた女性社員たちが、うっかり大拍手してしまったほど。
が、本人曰く、「ルックスを褒められるのは慣れてる」のだそう。
つまり。



イケメンだという自覚が充分ある、敵が多そうな男である。



ちなみにこの山口は1ヶ月ほど前、連日帰宅が午前様だったあたしに、「睡眠時間少ないと肌がヤバくなるよね」と言ってきて、あたしが、「オバさんだから、睡眠時間に関係なく常にヤバいよ」と答えると、急に真面目な顔になって、見惚れるほど美しい顔で、「夏目さん、オバさんじゃないよ」と言った男である。
それに続けて、



「夏目さんは、オバさんじゃなくてオジさん」と言った男である。



つまり山口はあたしの、



社内で2人目の天敵である。
(1人目は柳沢という若造)



さて、ある金曜の夜のこと。
深い時間にオフィスに残っているのが南国とあたしと山口の 『 新生 チーム・ハイエナ 』 だけ、という日が2ヶ月以上続いていた。
いつも通りひと息つこうと、夜食を摂りがてら雑談を始めたのだが、山口があたしに向かって何の前触れもなくいきなり、「トルコ桔梗って今の季節に売ってる花?」と訊いてきた。

「売ってんじゃない?年がら年中売ってる気がする」
「夏目さん、花屋に行くことあるんだ」
「・・・・あるよ」 ←供花を買いに週2回ね、とは言わない
「家に花飾ったりしてるイメージないんだけど」
「ふうん」 ←仏壇に飾ってますが何か、とも言わない

南国が会話に加わった。

「山口。で、トルコ桔梗買って誰かにあげるわけ?」
「はい。あ、母親にですけど」
「へー!」
「来週末、母親の誕生日で。トルコ桔梗が好きらしいんで、プレゼントはそれにしようかなあと」
「俺、母親が好きな花なんて知らねえぞ」
「俺も知らなかったんですけど、GWに実家に帰ったとき、妹と母親がそんな話をしてたのが聞こえて。毎年、誕生日プレゼントを何にするか困るんで、「これだ!」と思ったんです」
「いい息子だなあ、お前」

天敵のいいところなんて知りたくないので(性格悪すぎ)、うっすらクサクサしながら話を聞いていると、南国がニヤけながらあたしに訊いてきやがった。

「お前、男から花貰ったことなんてある?ないだろ。貰っても喜ばなさそうだしなー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
会社の連中はどうしていつもあたしを悪キャラに設定するんだと思いながら黙っていると、南国と山口はあたしそっちのけで盛り上がり始めた。

「確かに喜ばなさそうですよね!」
「だろー」
「俺、夏目さんがキティちゃん好きだって知った時も意外でした」
「似合わないよなー」
「ええ。キティちゃん見ても、「ただの猫じゃん」とか言いそうなのに」
「そうそうそう!リラックマも「ぐうたらすんなや、このクマ!」って蹴り入れそうだし!」
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「あはははははは!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



深夜0時、いい歳した大人の男2人が、何故こんなネタで大笑いできるのかさっぱり判らんが、ここのところ3人揃って仕事漬けだから、ランナーズハイみたいなもんなんだろうか。
ただ、いつものことだがあたしは、周囲が自分のことで盛り上がれば盛り上がるほど気持ちが閉塞し無口になるため、大いにウケている2人をよそに黙々と食事を続けた。
なのに、今度は山口が重ねて訊いてきた。



「で、夏目さん、男から花貰ったことあるの?」



うるせーよと思いつつ、しかしそれはすぐにあたし自身の疑問となった。
「あれ?あたし、男から花を貰ったことなんてあったっけ?」という疑問に。



昭和から平成ヒトケタ前半迄のことは抜きにして、たとえば30歳以降、男性から花を貰ったことなどあっただろうかいや、ない。(即答)
付き合った男から花を貰った記憶もなけりゃ、意中の男性に花を貰った記憶もない。
それどころか、平成ヒトケタ後半には今の会社で働いていたから、餞別で花を貰ったことまでない。
若かりし頃のことは抜きにして、と前置きしたせいで、10代20代の頃はしょっちゅう花を貰っていたかのように読んだ人もいるかもしれないが、哀れなことにあたしの人生にモテ期は存在しないので、山口がお母さんにあげようとしてるような、心のこもった花を貰った記憶がない。



「ねえよ」
不機嫌100%な声であたしがそう答えると、深夜0時に上がった男たちのボルテージは最高潮になった。

山口 「そもそも夏目さん、花貰って喜ぶ人なの?」
夏目 「うん」
南国 「喜んでるフリするだけじゃなく、心底嬉しい?」
夏目 「うん」
二人 「えええええええーーーーーーーーーーーーーーー!」
夏目 「うるせー」
南国 「花貰って喜べない人も哀しいけど、喜ぶのに貰えないのはもっと哀しい!」
夏目 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
山口 「俺、あげようか?」
夏目 「・・・・結構です」
南国 「あ、お前の誕生日っていつ」
夏目 「だからいいっての」
山口 「誕生日に、夏目さんが好きな花、どーんとあげるよ!」
南国 「そうそう、社内でカンパ募って
夏目 「絶対要らない」
山口 「じゃあ俺ら2人であげるからっ」
夏目 「要らないっつってんだろーが」
南国 「やっぱ花は嬉しくないんじゃね?」
夏目 「そういうノリで花を貰って喜ぶ人いねえと思うけど」
山口 「そうかー」
南国 「つーか、ホントにないの?花貰ったこと。彼氏からじゃなくても」
山口 「百歩譲って家族からでもいいよ」
夏目 「ないなあ」
南国 「じゃあ千歩譲って!」
夏目 「譲ってくれなくていいんですけど」
南国 「サボテンでもいい!
山口 「盆栽も可!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もはや、何でもアリである。
が、「サボテン」とか「盆栽」とか、鉢植えのものが挙げられた途端、ごく最近自分が男性から、鉢植えの花を貰ったことを思い出した。



「 あ 、 あ る 」



ここまで、何でなのかはよくわからんが、「サボテンでも盆栽でもいいから、花じゃなくて草でも木でもいいから、男から貰った経験アリで頼む!」と土下座する勢いで質問攻めにしていた南国と山口である。
あたしの「ある」という答えで安心してくれるかと思いきや、



「見栄はらなくていいって」 「嘘だ!」



と、言いやがる。

山口 「マジで?」
夏目 「うん」
南国 「ああ、麻雀仲間からだ」
夏目 「いや」
山口 「じゃあ誰。会社の人?お客さん?」
夏目 「違う。キミたちの知らない人」
南国 「飲み屋で隣合った人だ」
山口 「そうだ。だって夏目さん、仕事関係か雀荘か飲み屋でしか出会い無いもの」
夏目 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ←釣具屋と釣り場でもある!とは言わないほうが無難

その後も2人は、まるで犯人でも探すかのように、「○○(居酒屋)の親方じゃね?」とか、「いや、○○(定食屋)のおやじって可能性もありますよ」とか、あたしそっちのけで盛り上がっていたが、予定していた休憩時間が過ぎ、あたしが「仕事しろ」と声をかけると2人は、それまでの盛り上がりが嘘のように、黙ってガツガツと仕事を始めた。
この、どんなネタでも掴めば大いに盛り上がり、時間がくればピタっと話をやめるところが、彼らと一緒に仕事をしていてラクチンだと思うことのひとつである。



さて。
あたしが最近男性から鉢植えを貰ったという話に嘘偽りはない。
が、端折ってる部分を添えれば随分印象の違う話になる。
具体的には、ただの痛々しくて残念なお話しに成り下がる



あたしが最近男性から貰ったのは、鉢植えの日々草である。




(ちょっとカワイイ)



そして、この馴染み深い花をあたしにくれたのは。
長年被り続けていたベレー帽のようなヅラを1ヶ月前に脱いだ、今、我が家から半径300メートル圏内で最も潔く最も勇気ある男・近所のスーパーマーケットの店長(推定60歳)である。




(蕾が開く途中もカワイイ)



売り出し期間中に3,000円だか買うとお花をプレゼント、みたいな企画をやっていたのだが、そんなことを知らずにレジへ行き、1,300円くらいの買い物をしたあたしを見ていた店長が、「おまけだよ」と言いながらくれたのがコレだったのだ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





視界がボヤけてるけど、泣いてなんかないやい。



南国と山口の求める答えとはまるっきり違うが、とにかく我が家に最近、長年被り続けていたベレー帽のようなヅラ・・・・(中略)・・・・の店長からおまけで貰った日々草が増えた。
ちなみに。
あたしが蒔いた日々草の種は、かろうじて4つ発芽したのだが成長が鈍く、






ワサワサと伸びポンポン咲いている、ヅラ店長の日々草の元気っぷりには遠く及ばない。






がんばれ、あたしの日々草。
ヅラ店長に負けるなよ。

とはいえ、あたしが蒔いたものより大ぶりな品種と思しきヅラ店長な日々草も枯れて貰っては困る。
できることなら種を採りたいからだ。
つうわけでこの週末は、ヅラ店長の日々草のふにゃふにゃなビニール製の鉢を、夏目父から分けて貰ったオッサンくさい陶器の鉢に植え替えた。




(before)




(after)



夏目父が聞く。

「また日々草?」
「うん。でも偶然」
「どういうこと?」
「○○(スーパーマーケット)で買い物したら貰ったの」
「へー」
「このあいだ、会社の人に「男から花貰ったことある?」って訊かれて」
「ぷっ」
「思いついたの、これだけだったよ」
「ぷぷぷっ」
「ヅラ店長から、オマケをオマケして貰った花だけなんて」
「我が娘のことながら、これだけモテないと面白いよ」
「あたしは少し悲しいよ」
「まあでも、そう悲観することでもないさ」
「なんでよ」
「だってヅラ店長」
「うん」
「お前と同じで」
「あ?」





「 バ ツ 無 し の 独 身 ら し い か ら 意 外 と ・ ・ ・ ・ 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





何 が 言 い た い 、 我 が 親 よ 。





い 、 い や 、 や っ ぱ 、 そ の 先 は 勘 弁 。 マ ジ で 勘 弁 。





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 結っ構順位に変動あるものですなあ。特に11位から先。