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BOOK INFOMATION

単行本 『 片付けられない女魂 』 は、Amazonマーケットプレイスで購入できます。
片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



ネットやケータイに加えてkindleiPadが普及しつつある今、新聞や書籍などの紙媒体不要論を目や耳にする機会が増えてきた。
紙媒体が完全になくなることは暫くないとは思うが、これを単なる流行だとも捉えてないし、実際紙はどんどん少なくなるのだろうし、もしも好きな作家の新作が電子書籍としてしか読めないのならあたしは迷わずそれを買うけれど、そうなっていないから、今のところあたしはまだ、新聞も小説も紙で読んでいる。
場所をとらないとか読みたい時にすぐ買えるとか、電子書籍の良さはたくさんあるだろうが、紙ならではの良さもたくさんあると思っている。
でも、これだけは声を大にして言いたい。



うちの郵便受けにチラシを入れても、10ヶ月は見ないですよぉー、と。






かつては、DMやポスティングを企画する側だったこともあるし、大昔にはポスティングのアルバイトをしたこともあるのだが、でも、その頃からすでに、常に、「ポスティングにどれだけの効果があるんですの?」と疑問を抱いていた。
だから尚更、広告媒体が多様化し、企業だけでなく家庭でのペーパーレス化が進んでる今、なんで「チラシをポスティング」なわけ?と思うのだ。
近所のクリーニング屋とか飲食店とかなら解る。
あと、ピザ屋も許そう。
あたしが「なんだかなあ」と思うのはそういうのじゃなくて、ターゲットを絞らずにポスティングしている感が見てとれる一流企業のチラシやダイレクトメール、フリーペーパーの類である。

仕事を終えて家に帰ってきて郵便受けを開けた時、まるで紙ゴミを突っ込んだかのようにグシャっとなったそれらが入っていたら疲労感が増す。
仕方なくそれらを持って、思いつく限りの暴言を頭の中で吐きつつ、大事な郵便物だけを抜きながら階段を上り家に入る。
で。



靴 箱 の 上 に ド サ っ と 置 い て 放 置 、 と 。






……って長々と書いてみて解った。
最後まで不満を溜めつつやった仕事はクオリティが低い、ってのと同じように、文句ばっか言ってから整理しないんだな、俺。

まあとにかく。
いよいよ、いつ何時ズサーっとなってもおかしくない高さになってきたので、これ以上の汚玄関化を阻止すべく整理に着手した。

基本的にこの山の中にあるのはチラシやダイレクトメールやフリーペーパーばかりで、たとえば自動車税の納付書みたいな期限のあるものや、待ちに待っていたものは開封済みなので、数冊ある、Amazonや楽天ブックスで買ったのに開封してない本を除けば、あとは山ごとドサっと捨てても全く困らないハズである。




(山のてっぺんは、「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞作)
ふがいない僕は空を見た
(泣けるんだ、これが)



それらを抜いて山ごと裏返してみた。






本当ならこれをこのままゴミ袋にツッコんでしまいたいのだが、如何せんわが街には「分別」という素敵なルールがあるため、これを、資源ゴミ・包装用プラスチックゴミ・その他のゴミの3つに分ける必要がある。



…………………………。





分 別 メ ン ド ク セ 。



……なんて、4年前から全く進歩していないことを思いつつ、渋々、分別を始めた。




(秋かー。秋刀魚たくさん食べたなー)




(冬かー。カキ。あん肝。たらの白子。年中食べたいんですけど)


(忘年麻雀大会で例年通り大敗)


(新春麻雀大会で例年通り大敗)


(すっごく欲しかったのに、TVで「40代の男性に大人気」と言ってて即萎えた)


(決算時期が憎い)



……と、結局、チラシやダイレクトの中身までガッツリ見ながら分別していたところ、ようやく、探し求めていたイイモノを見つけた。




(うひょひょひょ!)



が。
これを開封すると、全てを放り投げ、財布だけを持って家を飛び出したくなるのがわかっているから、はやる気持ちをぐっと抑えて、最もメンドくさい分別に取り掛かった。






電話会社からの請求書である。
よその街のことは知らないが、我が街でこの封筒をざっくり分別しようとすると、こういうことになる。




(上=封筒の裏は資源ゴミ、下=封筒の表は燃やせるゴミ)



正確には、宛名窓のフィルムを綺麗に剥がせばそれだけが燃やせるゴミで、他は資源ゴミになるのだが、超メンドクセと思いながらやっているせいでいつもかなり手こずるので、ここまでやれば良しとすることにした。(元来、雑)
っていうか。
固定電話で通話をしなくなって久しいから、送ってこなくていいんだけどなー。







…………………………。



@ビリングを申し込めば問題解決、と。
(NTT西日本のサービス 『 Myビリング 』 はコチラだそうです)



クレジットカードの請求明細書や宛先の入った封筒は、セキュリティスタンプをコロコロした後、資源ゴミへ。








始めてみれば30分程度で終わったので、大した手間ではないってことは百も承知なのだが、3分だろうと3秒だろうと、メンドくさいモンはメンドくさいのだ。




(100点じゃないざっくりとした分別でもメンドウに変わりはない)



で、いよいよ、最後にとっておいたお楽しみを開封する時がきた。




(うひょひょひょひょひょ!)



「無料券在中」とスタンプが押された茶封筒の中には、我が家にポスティングされた広告の中で、唯一あたしが有効活用できるものが入っているハズである。
高価なものでは全然ない。
でも、たとえ10ヶ月に1度でもいいから、確実にニーズがあるこれが入っていてくれるのなら、他のチラシやDMやフリーペーパーの分別だって苦にならないと断言できる。
あたしにとっては、そのくらい嬉しいものなのだ。
さあ行くぞ。




い ざ 開 封 !











………………あれ?





無 料 券 、 入 っ て ね ー し 。





…………………………。






(さようなら)




(……はっ!)




(もしや、チラシのどこかに無料券がくっついてる……?!)




(やっぱねえし)



10ヶ月も積み続け放置していたものを処分したのだから気分がスッキリしてもいいようなものだが、唯一の心のよりどころであった雀荘のゲーム無料券が入っていないと判り、心身ともにどっと疲れた。
が。
我が家の玄関に置いてあったゴミがこれで片付いたわけではなかった。
放置していた期間はチラシより短いものの、チラシとは比べ物にならないくらい邪魔で厄介なブツがまだあったのである。



(まだ続く)





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 カテゴリを変えても浮いてる感が否めない、俺&蟲の人。


思いつきやノリで買ったっきり使わないでいた物のほとんどを処分して以降、めっきり、服や雑貨を買わなくなったため、以前のように「気づいたら物が増えてる」ということがなくなった。
ただ、大量に捨てたそれらは、朝から晩まで嫌なことや辛いことをぐっと腹の底に押し込めて働いてようやく稼いだ金で買ったものだったからあたしは、使いこなせなかった大量の物を捨てるという行為で、自分のバカさ加減を思い知ることになった。
つまり、今あたしが安易に物を買わないのは、二度と再びバカな自分を目の当たりにしたくないから、に他ならない。

でも、だからって未だにヤカンも鍋もフライパンも買っていないのはどうかと思うし、いくら使い勝手のいい物だからって、まともに使えないくらいボロになってるものを使い続けるのもどうかと思う。
物を大切に!とか節約とかエコとか言ったところで、古くなるモンは古くなるのである。
が。
毎日せっせと使っている物に限って、ボロになっても気がつかないものだ。



さて。
前回同様、気持ちよく晴れたある朝のこと。






資源ごみの回収日だったため、新聞やダンボールや雑紙をまとめてマンション1階の集積所に持っていった。




(この程度の量なら、4階から1階まで、1回に運べると最近気づいた)



汗だくで4階まで戻り、「ちょっとそこまで」な用事のときにいつも履いている靴を脱ぎ、それがなんだかヨレヨレなのに気がついた。




(年齢的にもアウトじゃあるまいか)



娘の行く末を案じた親の制止を振り切り、休みになれば早朝から海に行っていた20代前半に買ったエスパドリーユは、改めて見てみるとすげー汚くて、当時は物凄く気に入って買った記憶があるのだけれど、今も気に入っているかというとそうでもない。
「ちょっとそこまで」の時にだけ履いていたけど、そんな靴ばっかあっても仕方ない。
夏の休日はもう、Sassariさえあればいいさ。




(本当に安易に物を買わなくなった人が、色違いで3足とか買わねえと思う)

(履き易さと歩き易さが、デザインに勝る)



こうしてひとつのボロに気づいてしまったせいか、その日は、普段何気なく使っていた物をしげしげ眺めるようになり、伝線はしてないけどもしもの時(×色っぽいシチュエーション、◎その他のシチュエーション)にどうなのよ?なストッキングや下着をじゃんじゃん捨て、卵を入れた納豆をとくのに丁度いい大きさだけど随分前から欠けてしまっている40年物の小どんぶりを捨てた。








(5個組の4個目。残りの1個よ、あと20年くらいがんばってくれ)



そんなちまちました片付けでも、エアコンのない部屋で動いていればうっすら汗はかくもので、休日のまだ午前中だったけれど風呂に入ることにした。
で、風呂場で、毎日毎日使っているボロを見つけた。






(雑巾ではありません)





風呂場じゃちゃんと写らないので、部屋に持ってきてみた。






(重ねて書きますが雑巾ではありません。ボディタオルです)



そういえば随分前から、身体を洗っている最中に爪がひっかかるわ爪がひっかかるわ爪がひっかかるわで、朝から軽くイラっとしていたんだった。(カルシウム摂れ)
このボディタオルはもちろん捨てた。
で、新しいのを買ってこなくちゃなあと考えていると急に、だいぶ前にどこかでボディタオルを見たような気がしてきた。
なんかね、ピンクのヤツ。






(懐かし画像。「呆れる程コスメバカ」より)






(ブログって便利)






(洗面台の下から再発掘)






(幸い、荒々しい洗い方をしても肌を傷めない柔らか素材)



あぶねーあぶねー。
在庫を使い切らないうちに新しいのを買ってしまうところだった。
発掘したはいいが、仕舞ってしまったが最後、二度と再び陽の目を見ないなんてことにならなくて本当に良かった。



新品ばかりに囲まれて暮らしたいわけでは全然ない。
でも、それしか無いならともかく、他に使える新品があるというのにずっとボロを使っていては、いつまで経っても物が減らない。
日常的に使っているとうっかりボロさを見過ごしてしまうけど(あたしだけか)、貰いもののタオルなんてのは、じゃんじゃん使ってしまおう。
・・・・なんてことを思ったり、雀荘に行ったり雀荘に行ったり悔しがったりしているうちに休日が終了した。



ところで、今あたしのいる部署は空前の打ち上げブームである。
これまでどんだけ辛かったのか、いや全然辛くも大変でもなかったのだが、やたら手のかかる仕事をひとつ終えたというだけで連日、「打ち上げ」という名の呑み会が開催されている。
ひとつの仕事が終わって思いっきり伸びをしたらすぐまた次の仕事があるわけで、いつまでも解放感に浸ってはいられないハズなのだが、上司と南国と山口とあたしの4人だけで、なんだか毎日呑んでいる。

そしてそれは、何回目かの打ち上げの席だった。
居酒屋の座敷で呑んだくれていると、どこかでケータイが鳴った。
それはどうやらあたしのらしかったが全く出る気がなく、でも、ケータイを入れたバッグを山口の背後に置いていたため、いつまでも後ろでブルっているのが気になって仕方ない山口が、出ろとウルサイ。

「酔って電話に出てどんな用が足せるっつうの」
「つうか、よく誰からの電話なのか気にならないね」
「うん、全く」

が、そう話している間にいったん切れたケータイがまたジージー鳴り出した。

「出なよー」
「あ、じゃあ電源切るから、取って」
「あ?」
「バッグの上のほうにケータイ見えるでしょ。取って」
「ああ」

そうして山口があたしのバッグを覗いた。
で。
うひゃうひゃと笑い始めた。

「なに」
「ありえねー!うひゃひゃひゃ」

笑い転げる山口を見て、上司と南国が食いついた。

「なんだ?何を見つけた?山口」
「夏目のバッグになんか面白いモンでも入ってたか?」

上司のその言葉を聞いて改めて自分のバッグの中身を思い返してみたが、ケータイ以外は、財布と化粧ポーチくらいしか入っていないハズだ。
山口が笑い転げている間にまたケータイのジージーは止み、でも何度もバッグを覗いては笑っている山口が気になって言ってみた。

「だからなに」
「ねえねえ夏目さん、ちょっとバッグの中身、出していい?」
「おう」

すると山口は、「腹いてー」とか言いながらバッグに手を・・・・いや、指を突っ込み、親指と人差し指だけである物を摘み上げた。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
な、な、何のことはない、キーホルダーである。
酔っていたからではなく、素で、山口がこれのどこに笑っているのか判らなくて、暫く黙った。
が、これを見た上司も南国も、ウルサイくらい笑っている。

「え。なに。キティだから笑ってんの?」

素で訊いた。
すると、てんでバラバラの方を見て笑い転げていた3人が一斉に真顔であたしを見た。
そして、見事に声を合わせて言った。






「 き っ た ね ぇ か ら 笑 っ て ん の っ 」









前出のエスパドリーユより汚い物が不得手な方は
静かにブラウザを閉じてください。











(before → after)








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








野 良 猫 か 。





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 次回は4畳半の続きっ。


我が家において、「鍋を焦がす」「皿を割る」「好きなもんは全部食う」というのは夏目父の専売特許だったのに、生まれて初めてあたしが、ヤカンの空焚きをしちまった。
しかも、ヤカンを火にかけてちょっと目を離したらすっかり忘れちゃって・・・・とかいう、あるあるぅー!な空焚きではなく、水の入っていない空のヤカンを火にかけ、それが変色する様子を2分間眺めていたという、ツッコミどころ満載な空焚きをした。










火に近いほうは煤のような焦げつきで、上部は、常にコンロ付近に出しっぱなしにしているせいでついた油汚れが焦げ始めたって感じか・・・・。
んー、フタも取っ手も綺麗なのになあ。






ほとんど料理をしないからキッチン用品には全く執着がないのだけれど、これだけは惜しい。
なぜならこれは、親友の結婚披露宴で貰ったカタログギフトのものだから。
しかも、離婚率が異様に高いあたしの友人知人の中で、彼女は、数少ない「続いてる人」だから。




この友人が結婚。出産。家事。育児・・・・)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
こうして書くと「だから何」という気にならないでもないが、あたしの中では思い出深いモノだったわけで、だから、磨いてみようかと思い立った。
だって、ほれ。
片付け掃除ブログ界ではさ、写真を載せるのも憚るくらい汚いモンを洗って磨いてピカー!っとするのはお約束だもの。
あたしも世のステキな奥様たちみたいにメラミンスポンジとか使っちゃって、



このヤカンをピカー!っとしてやろうじゃないのー。のー。






思い出深いという以外にも、このヤカンが惜しい理由はある。
まず、取っ手が熱くならない。
それから、容量が2.4リットルなのにアルミ製だから軽くて、本体とフタの境に段差がないのとで、とにかく洗いやすい。
それと、表面のアルマイト加工が影響しているのか、とにかく汚れが落ちやすい。
ヤカンをピカー!っとしようなんてことは、年に1度か2年に1度くらいしか思わないが(少な!)、どれだけドロドロになっていようが、普通のスポンジと普通の食器洗剤で洗えば経年を感じさせないくらい綺麗になる。
口が広いから、手ぇ突っ込んで内側を洗うのもラクチンだ。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ラクチンとか言ってるわりに汚れてね?と自分で自分にツッコミつつ、その汚れは置いといてまずは、ステ奥御用達のメラミンスポンジを買う必要があるか否かを検討すべく、食器を洗う普通のスポンジで擦ってみることにした。
そうそう、内側の汚れは置いといて、ね。




(おや?)



・・・・こここここれは、みみみみみ見なかったことにして、外側を普通のスポンジで擦ってみ・・・・る前に底をちょろっと撫でてみた。
するとすぐに。



ピ カ ー ! っ と な っ た 。






(穴です)



・・・・って。



こういうピカー!を目指してたわけじゃねえんだけど。



一瞬、アルミ溶接しようかとも思ったのだが、穴を見てうな垂れているあたしの傍にいつの間にか立っていた夏目父の言葉をきいて、溶接は諦めた。



「やったー!ようやく穴が開いた!
あのさ、すごく綺麗なヤカン見つけたんだよー」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ、萎える。
すげー萎える。
夏目父の購買欲は、必ずあたしを萎えさせる。

そもそも、夏目父はヤカン使わないじゃないか。
あたしがコーヒー淹れる時に使うだけだもの、お前好みのヤカンである必要がどこにある。

夏目父のテンションの高さに萎えつつ、ヤカンを捨てるのならついでに、ボロくなった調理器具を全部捨てちゃおうと思い立ち、元の色がまるで判らないほど黒くなった18センチのフライパンも、場末の大衆食堂が似合う28センチのフライパンも、






買って早々フタが壊れたのに使い続けていた片手鍋も、






フタは無事だが取っ手がヤバい片手鍋も、






我が家に、少なくとも15年前からあった調理器具をどーんと捨てた。






「え、全部捨てるの?」と夏目父。
「うん」とだけ言う娘。

タイミングがタイミングだっただけにヤケを起こしている風に見えてもおかしくなかったが、あたしとしては全然そういうんじゃなくて。
場末の大衆食堂にありそうな鍋やフライパンはみんな前から買い替えたいと思っていたけれど、月に1、2回しかフライパンも鍋も使わないあたしに(本当)、欲しい鍋などあるハズもなく。
つまり、コーヒーミル同様、選ぶのがメンドウだから買い替えることを考えただけですげー億劫なわけで。
だから、先に「チーム・場末」を捨ててしまえば、否が応にも買うことになるんじゃないかと思ったのだ。
ちなみに。
これらを捨ててうちのキッチンに残っている鍋は、小さいホーローのミルクパンと圧力鍋のみで、フライパンはゼロになる。
でも、どーんと捨てた。



さて。
チーム・場末を捨てた日から夏目父は、ヤカンヤカンとうるさくなった。
「綺麗なヤカンなんだよ」と言っているうちはまだ良かった。
が、そのうち、「ヤカンって一生モンだよね」と言いだしたあたりから、徹底抗戦することにした。

「一生って、あたしの?それともそちらさまの?」
「俺のに決まってる」
「つっても、ヤカン使わないじゃないの」
「使ってるよ」
「・・・・見たことねえんだけど」
「そうかもしれないけど、毎日使ってるよ」
「お湯沸かして何してんの?」
お湯は沸かしてないけど使ってる!
「あ゛?」



「ベランダの花に水やる時にヤカン使ってるっ!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ジ ョ ー ロ 、 使 え や 。



「つうか、一生モンとか言ってるんだからお高いのがいいんでしょ」
「高いのかなあ、やまだこーみんでざいんだと」
「は?」
「ん?やまだこーみんのステンレスのヤカンって高いのかなあ?」
「調べてみましょか」
「よろしくどーぞ」






(確かに綺麗)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ジ ョ ー ロ 、 使 え や 。





というわけで。
夏目父の、ヤカンより熱い、暑苦しい購買欲は未だ冷めていないようだが、薄情な娘は毎日シカトし続けている。
ちなみに。
「チーム・場末」を捨てたのは、1ヶ月半前の5月5日。



我が家には未だにヤカンもフライパンも鍋もない。



だから、ヤカンでベランダの草花に水をやっていた夏目父は今、



小せぇミルクパンを手に、台所とベランダを何往復もしている。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





ジ ョ ー ロ 、 使 え や 。





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 こ、こ、更新頻度を上げねばっ!ねばっ!


今年80歳になる夏目父方の伯母が携帯電話を持つようになったのは3年ほど前。
公衆電話が減り、出先で電話をかけるのが難儀になったので、外出好きな伯母のためにその娘が買ってあげたのが最初だった。
持ってすぐの頃は電話を受けることにすらだいぶ手間取っていたのだが、1年くらいでそれがスムーズに出来るようになり、やがて、ケータイのカメラで庭の草木や飼い猫や孫やひ孫や伯父を撮るようになった。
それでも暫くは、目の前にいる人に自分が撮った画像を見せるだけに留まっていたのだが、カメラを使うようになってからの伯母はそれまでとは比べ物にならないくらい携帯電話に興味が湧いたようで、電話で話していて、ケータイの操作について質問されることも増えた。
そして、「この間、猫の可愛い寝姿撮ったから、今度こっちに来たときに見せるね」というような話をすることが増えたある日、あたしはかなりの覚悟をもって伯母に、「メール、できるようになってみる?」と提案した。
去年、 伯母78歳の春のことである。

夏目父で散々そんな経験をしてきたからか、「どうせ覚えられないんだもの教えるだけ無駄」とか「同じこと何回も訊かれるからうんざり」とかいうことを思わないわけでもない。
そもそも、ケータイに限ったことではなく、年寄りが電子機器の使い方を覚えるのは容易なことではないし、あたしは人にモノを教えるのが致命的に下手くそだ。
ただ、あたしが夏目父や伯母に教えてあげられることなんて電子機器の操作方法くらいしかないわけで、そのくらい出来なくてどうするとも思うし、「年寄りだから」という理由でチャレンジする気にもならない人も多い事に彼らは果敢に挑もうとしているわけで、その意欲を、「メンドクセ」というだけの理由で萎えさせる気には到底なれない。
加えて、夏目父に限っていえば。
もしあたしが教えなかったら、



「覚えたいんだけど、娘が教えてくれないんだよねー。イジワルだから」



と平気で吹聴しやがるので(実話)、どんだけ時間がかかっても、本人が「もういい」と言うまで教えたほうがマシだと思っている。

そんなわけであたしは去年の春から伯母に、テキストのみのメール作成から送信までと、画像付きメールの送り方を教え始めた。
遠くで暮らしている伯母と会うのは年に1、2回だから、教えるのは専ら自宅の電話。
つまり、伯母が実際どんな操作をしているのかも液晶画面がどんなことになっているかも見られない。
しかも、状況を実況するのが78歳の伯母だから要領を得ない。
が、幸い、何度も同じことを訊かれることへの耐性は夏目父と暮らす中で備わっていたし、何よりもあたしは、78歳の伯母が「メールの仕方を覚えたい」と思ったことに感動し続けていたから、伯母が使っている機種の取説をWebで見ながら、ゆっくりじっくり手順を教え続けた。



「あれ?これ、前も訊いたっけ?」
「うん。でも何回訊いてもいいよ」
「やっぱり歳なんだねえ。何回教えてもらっても憶えられないもの」
「訊いたかもしれない、ってことは覚えてたじゃない」
「でもねえ・・・・」
「何回も続けてれば覚えるよ」
「そうかしら」
「覚えられなかったら訊けばいい」
「迷惑かけてごめんねえ」
「いや、全然」
「あんただって、こんな年寄りの相手するよりは・・・・あっ!」(わざとらしく)
「あ゛?」



「ごめんごめん。相手いないんだもんね、ごめんごめん」
(もちろん棒読みで)



・・・・という会話をしたことが何度もあるのは憶えてないらしいが、それでも、たくさん訊いてたくさん間違えて、妹や娘に「無理なんだって」と言われても諦めずに続けた結果、今では遠方に住んでいる孫たちや全国に散らばっている姪や甥に写メを送れるようになっている。
勿論パーフェクトではない。
誤字脱字は普通にあるし、本文も添付画像もないメールが送られてきたことも1度や2度ではない。
11度ある。 ←数えた
が、そんな小さいことはどうでもいいのだ。
空メールが送られてきてから暫くして届くメールは決まって微笑ましく、必ずどこかに進歩の跡が垣間見れるのだから。



伯母は言う。
「79歳にもなってこんな楽しい経験ができるとは思わなかったよ」と。

伯母は言う。
「出来ないと思ってたことが出来る嬉しさを味わったのは物凄く久しぶりだよ」と。

伯母は言う。
「自分で(マニュアルを見て)覚えることも大切だけど、判らなかったら訊くことも大切なんだね」と。



判らなかったら訊くことも大切なんだね、とな。



つうわけで、ホームセンターのルーキーくん。
約束の日から5日経ったのに、ブツが届かないどころか連絡すらないことは大して気にしちゃいないから安心しろ。
怒鳴り込むつもりもまだないぞ。
でもね。



男いねーわ友達少ねーわだから、GWは超ヒマなわけ。



だから、GW前に連絡さえあれば不問に付すが、もしGWに揃わなかったら、





泣 く よ 、 あ た し 。
(寂しくて)





・・・・と、ここでちょっと真面目な話をすると。
L字のとデカいのを頼んだのに、形も枚数も合ってないもんが納品された時点であたしは、「新人クン、メモを失くしたんだな」と思った。
まあそれならそれで、周囲の先輩なりに話をして指示を仰げばいいだけなのだが、年齢や勤務年数に関係なく、判らないことを訊いたり確認したりしない人はいるわけで、それをしない人の気持ちは全く理解できないけれど驚きはしない。
ただ。
ネームプレートにデカデカと「研修中」と書くのなら、客に「研修中なのね」と思わせるだけじゃなく、店側も研修生の仕事内容を逐一チェックして欲しい。
というか、チェックすべきだろう。
新人が入ってくれば一時的に先輩達の仕事は増えるもので、仕事の全体像が見えていないうちは新人クンも、「何がわからないかがわからない」状態だろうし、10年前から上司に「新人教育に不向きな性格」と言われ続けているあたしでさえも、新人クンの手が止まったり目が泳いだりしてたら声かけるぞ。



渋々だけど。



社会人歴が長い身としては新人クンの仕事っぷりよりも、新人クンの仕事をフォローできない先輩らの仕事っぷりのほうがよほど解せない。

ちなみに前述の伯母にはいつも、「「わかんない」と思ったら、何時でもいいから電話してみて。寝てる時や電話に出られない時は無理して出たりしないから、こっちのことは気にしないでかけてみて」と言っていたのだが、それでも伯母は随分気も遣っていたし遠慮もしていた。
身内でもそうなのだから、他人なら尚更だ。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがあるが、訊けない雰囲気を醸し出すのだって充分恥ずかしい。

なんてことを延々考えていても石膏ボードは届きそうにないので、新人クンがメモを失くしたという前提で、再度裁断してもらうサイズを計り直し、明日またホームセンターに出向くことに決めた。
どーか明日こそはちゃんと入手できますよーに。(祈)



で、話は変わるが先日、トイレから出てきた夏目父が、「トイレットペーパー最後だった」と呟いた。



珍 し い 。



前にも書いたが夏目父は、トイレットペーパーを使い切ったら補充するとかいうこととは無縁の世界で生きているので、使い切ったことをあたしに報せてくれたことなどない。
報せるだけなのだから哀川翔ンち的に半殺しなのは変わりないのだが、夏目父が補充するなんてことはハナから期待しちゃいないわけで、ただ、使い切ったことすら意識してないっぽいこれまでを思えば、「なくなったよ」と報せてくれるのはかなり有難い。

「はい、補充しときます」
「ところで、トイレットペーパーの芯って何ゴミ?」
「紙ゴミです」
「紙ゴミ?そんなのがあるんだ」
「・・・・ええ」
「ギュっと潰すの?」
「ううん。開いて出すの」




昨年10月下旬以来、ずっとこうしてきた)



が、それを聞いた夏目父が驚いて放った言葉であたしは、夏目父の300倍くらい驚くことになった。



「えっ?いちいちハサミで切るの???メンドクサいねー」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





なんですと?






(これをハサミで・・・・?)




(ハサミで?)




(あらまあ)




(か、簡単)



どうして最初にクルクルやって開いてしまったのでそ?(知らね)



夏目父の口から出た「ハサミ」という言葉に驚いて暫し絶句していると、異変に気づいた夏目父が不思議そうに訊いてきた。

「あれ?ハサミで切るんじゃな・・・・」



「 も ち ろ ん ハ サ ミ で 切 る ん だ よ 」
(堂々と)



「俺が教えるまで手でクルクルやってたんだってよー。アホでしょう、うちの娘」と近しい人に吹聴されるから、まさか半年も気づかなかったなんて言えない。
絶対にっ。





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 あたしもちょうどいまそれが最後にさしかかってます、カナさん。


仕事が忙しくなると、あたしの上司はきまって風邪をひくのだが、同僚の南国は寝坊する夢ばかり見るらしい。
同僚の柳沢は明治のストロベリーチョコが食べたくなると言うし、吉田はボーリングをしたくなるそうだ。
で、あたしはというと。
上司の風邪をもらうもんか!という気概からか、体力をつけようと、やたらたくさん食うようになる。
ストレスで過食に走るような繊細さは持ち合わせていないので、「こんな時に風邪でもひいたら大変じゃ。よぉーぅし!食って体力つけるぞぉー!」と確信して食いまくっているのだが、これまでたびたび書いているようにあたしは、そうじゃなくても普段から食事量が成人男子の1.5倍くらいだし(本当)、ここ15年くらいは風邪をひいたことがない。
つまり、冷静に考えればたくさん食う必要は全くないのだが、ここ数週間の我が家の米消費量を鑑みると、どうやら仕事が忙しくなった時にあたしがたくさん食べるのは、親を真似ているだけのことらしい。



超小企業といえども年度初めは忙しいようで、なんちゃって社長である夏目父とはここ暫く、会話らしい会話をしていない。
これが夫婦なら、「もう10日もまともに話をしてないのよ!」なんつう不満が噴出するのかもしれないが、いい歳した娘が、同居している実の親と1週間や2週間や3週間、大して話をしなくても何ら支障はないし、会話はなくても互いの様子はわかるから、「たらふくメシが食えているということは元気なんだろう」とかいうことは把握できている。
が。
あたしが何も言わなければ、すかさず好き放題やりやがるのが夏目父である。



今朝のこと。
起きてすぐあたしがリビングへ行くと、夏目父は、「おはよーーーっ!」と無駄に元気な挨拶をしたそのままの勢いで「今日もよろしくっ!」と言い、まるで逃げるかのように仕事に出かけていった。
あたしが、「またやりやがったな」とツッコむ隙を見せることなく、脱兎のごとく家を出た。
ちなみに。
夏目父が能天気に「よろしく!」と言ったのは4月1日の夜が最初で、それから今日まで朝と晩、必ず言っている。
つまり、この8日間で15回、そう言っている。
この「よろしく!」は、「俺がシンクに置いたモンを洗ってちょーだいね。あ、お前が出勤途中に捨ててるヤツもあるからね」っつう意味なのだが。
食器や箸を洗うのはもちろん全然構わない。
それはいい。
朝炊いたはずの4合のごはんが、夜になるとすっからかんになっているのも、痩せの大食いを親にもつ娘の宿命と思って文句は言わないことにしたし。
が、これだけは許せんのだよ、オッサン。
いいかぃ?
シツコイと思うだろうが、何度でも言うからな?
耳の穴かっぽじってよぉーく聞けよ。




8 日 間 で 3 0 パ ッ ク も 納 豆 食 う な 。






(1パック78円もする高級納豆(夏目基準)を1食で2パック食われた、の図)





あ る だ け 食 う の は 、 マ ジ で や め れ 。





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 Pサマのブログを見て今日が水曜日だと気づく社会人。あ、地味ブログも更新しとります。


この季節になるといつも、随分昔に別れた男のことを思い出してしまう。
その男と交わした会話まで鮮明に思い出してしまう。



あたしが長く家を留守にすることになったんだか何だか理由はすっかり忘れたが、1ヶ月ばかり男に自堕落番長(ウチの猫)を預けたことがある。
根っからの猫好きだった男は喜んで、毎日あたしに電話で自堕落番長の様子を教えてくれていたのだが、ある日のこと、あたしが電話に出ると男は少し浮かない声で話し出した。

「あのさ、トラ(仮名)って2本足で歩くことある?」
「エサか草かボールで釣ればやるよ」
「ああそうか。でも何かで釣らなきゃやらないよねえ・・・・?」
「うん。どして?」
「昨日までは、たまたまだと思ってたんだけど」
「うん」
「今日で3回目だからさあ」
「うん」
「あのね、今日俺が風呂につかってたらトラ(仮名)がきて、最初は洗い場に座ってたんだけど、そのうち立ち上がってバスタブのふちに前足かけたんだよ。でもまあ、それはいつもやるでしょう?」
「そうだね」
「で、バスタブにはったお湯を飲もうとしたから、トラ(仮名)の顔の前に手を出して飲ませないようにしたのさ」
「うん」
「そしたらトラ(仮名)も諦めたらしく、風呂場から出てったんだけど」
「うん」
「バスタブからドアのとこまで後ろ足だけで歩いたんだよ」
「へ?」
「いやいやいや、ほんの短い距離だよ?犬みたいに後ろ足だけでずっといたわけじゃない。でも、バスタブのふちにひっかけてた前足をはずしてすぐ4本足で歩いたんじゃなく、2本足のままゆっくりドアのほうを振り返って」
「うんうん」
「ドアのとこまでテテテテって。5、6歩・・・・いや、7、8歩くらいかなあ」
「へー!!!!!!」
「見たことないよねえ、そんなトラ(仮名)」
「ないないないー」
「だよねえ」
「うん!」
「まっ、俺も見たことないけど
「・・・・・・・・・・へ?」
「さて、ここで問題です」
「はい?」



「 今 日 は 何 月 何 日 で し ょ ー か 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
(気がついた)





微妙な嘘ついてんじゃねーよ。



そう。
コイツはエイプリルフールにかなり微妙な嘘をつく男だった。
「最近2本足で歩くようになって、とうとうトイレでも立って用を足すようになった」とかいう嘘ならこっちもすぐに気づくだろうし、自堕落番長の話じゃなかったとしても、たとえばこの人みたいに宇宙規模に壮大なのをブっぱなしてくれれば思いっきりツッコむなり放置プレイするなりできるのだが(無論後者を選択する俺)、この男のつく嘘はいつもギリギリで、だからあたしは翌年も騙された。

翌年の4月1日、男は帰省中だった。
男の実家はたくさんの白鳥が渡来することで名の知れた土地にあり、そしてそれは、ひと冬をそこで過ごした渡り鳥が北に旅立つ時期でもあった。
何の用があったのかは全く憶えちゃいないのだが、「声が聞きたかったの」みたいな理由以外であたしが電話をすると、男は明らかに周囲を憚るような声で出た。
タイミングが悪かったのかと思い「後にしようか?」と言ったのだが、男は「大丈夫」とは言いながら、でも相変わらず声を潜めたままだった。

「後でもいいんだよ」
「いや、ほんと大丈夫。ガラス屋さんきてるけど母親が対応してるから」
「ガラス屋さん?どした?」
「あれ。ニュース見なかったの?」
「へ?」
「なんだ。それで電話してきたんじゃないのか」
「なになに!?」
「今朝、うちの2階の部屋の窓に白鳥の群れがぶつかったんだよ」
「へ?」
「NHKのローカルニュースでやってたんだけど見なかった?」
「見てない見てないー」
「ウチ、去年2階を改築して窓がデカくなったでしょう」
「うん」
「それが仇になったのか、昨日の夕方、北に帰る白鳥の群れの、まあほんの何羽だとは思うんだけど、窓にぶつかったっぽいんだよね」
「割れたの?」
「うん。あのデカいガラス、結構高かったんだよー。でも役所の人に聞いたら修理費は自腹だってさ」
「大変だあ」
「・・・・こっちの心配してるけど、お前はそんなんで大丈夫なわけ?」
「え?何が?」



「だって、毎年毎年まんまと騙されてんじゃん」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
(気がついた)





毎年毎年、お前が微妙な嘘つくからじゃ、ぼけ。



エイプリルフールに乗っかって「当時はまだあたしも初々しかったのよ」なんつう大嘘を書きたいわけでは全くない。
あたしは当時すでに、10歳以上年上のその男からそれはもうシツコイくらい、「俺よりずっとオヤジくさい」と言われていたし、エイプリルフールに騙されたのは後にも先にもこの2回だけ。
だから、あたしにとって大昔のこの出来事が、エイプリルフールに纏わる数少ない思い出だ。



さて、今朝のこと。
いつも通りの時間に起きて部屋のドアを開けると、既に夏目父は出かけたあとだったようで、玄関マットの上にスリッパが揃えて置いてあった。
「夕べ、早く行くなんて言ってなかったけどなあ」と思いスリッパを眺めていると、まるであたしが起きるのを待っていたかのようなタイミングで、部屋のケータイが鳴った。
夏目父からのメールだった。



タイトル:おはよう。

玄関にあった缶、捨てておきました。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



あ り え ん 。
(きっぱり)




確かに、今日の朝捨てるため、昨夜のうちにビン・缶・ペットボトルを玄関に置いてはいたけれど、




(昨夜撮影。WBCを見ながら親子で呑みまくった氷結)



夏目父は、「親の遺言か?」っつうくらい頑なに、ゴミを捨てに行かない人である。
目の前にゴミ袋があっても、跨いで出かける人である。
どんなに気が向いたところで絶対に捨ててくれるわけがない。
が、すぐに今日がエイプリルフールだと気づき、多分これが夏目父のネタなんだろうと思うに至った。
ところが、だ。
そのメールに返信もせず再び部屋から出て改めて玄関を見てみると、前夜置いたハズの場所から缶がなくなっていたのだった。
ただ、悲しいかな、缶がないからといって即、「ほんとに捨ててくれたんだ!」と思えないのが夏目家なわけで、過去の忌まわしい事件を思い出したあたしは、一目散に風呂場へと向かった。
しかし、意外なことにそこにも缶はなかったのである。

「ホントに捨ててくれたってことか?いや、どーーーー考えてもあり得ねえんだけどなあ」などと、なんだかモヤモヤしながら4畳半の部屋に行き、ベランダに出て朝の一服。
今にも降り出しそうな空を見上げながらタバコを吸っているとようやく、エイプリルフールである今日が夏目父方の祖父、つまり夏目父の父親の命日であることを思い出したのだった。



あたしの祖父は、夏目父がまともに思えるくらい超フリーダムな人で、エイプリルフールに逝ったのがしっくりくるほど面白いことが大好きな人だった。
夏目父も人の子である。
4月1日という判りやすい親の命日を忘れているハズはなく、実際、いつも夏目父は端折ってしまっているというのに今朝の我が家にはお線香の香りが漂っていた。
そうか・・・・。
じいちゃんの命日だから、普段やらないようなことをやってみたくなったんだな・・・・。



少ししんみりしてタバコを吸い終え、4畳半から出ようとした。
するとその時、あたしひとりしか居ないハズなのに、ドアの向こうにかすかな人の気配を感じたのだった。
瞬時に思ったのは、「もしかすると、イレギュラーに早く出かけたらしい夏目父が玄関の鍵をかけ忘れたのかもしれない!」ということだったが、だからといって4畳半に篭っているわけにもいかず、恐る恐るドアを開けて玄関を覗いてみた。
するとそこには、ほんの数分前に探していたブツがあった。









(なんで?)


(さっきはなかったのになんで?)



狐につままれたような気分になり、暫し呆然と缶を眺めているとまた、部屋でケータイが鳴った。
呆然としたままケータイを取りに行き、受信したての夏目父からのメールを開封した。
で、脱力した。





タイトル:ウシシ!

だまされたね!
玄関にスリッパを置いて、ゴミを持って部屋に隠れていたのでした
今日はエイプリルフールですよ~
じいちゃんの命日なのでじいちゃんが喜びそうなことをしてみました






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



じいちゃんよりお前のほうが喜んでんだろ?そうだろ?





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 連載!楽しみっス、P様!