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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)

呑んで帰ろうかとも思ったけど、悪酔いしてしまいそうな予感がしたので、渋々、重い足取りで帰宅した。



鍵を開けた。
玄関の扉を開く瞬間は無意識に息を止めていた。
が。





(ゴミ袋を放置した場所)




な、な、ない・・・・・・・・!


多分、ゴミ袋はだいぶ前にどこか別の場所に移されたのだろう。
恐る恐る息を吸ってみたが、生ゴミの臭いはしなかった。

ほっ・・・・。
まずは一安心。
客人に生ゴミの臭いをお見舞いするハメにならなくて、まずは良かった。










じ ゃ あ ど こ だ ! ?











この時点で、生ゴミ入りのゴミ袋があたしの部屋にある確率は50%になった。
ベランダか、あたしの部屋。
生ゴミはどちらかにあるハズだ。



会社では上司に、「悪い話から報告しろ」と言われている。
完璧だと思っていた企画書がNGくらったり、万全で臨んだコンペで思いっきり滑ったり、失注したり、クレームが出たり。
そういう報告からしろ、と言われている。
「そうすれば、一番早いタイミングでそのフォローに入れるから」と上司は言う。
もちろんそれが最大の理由ではあるだろうけど、「悪い話から報告する理由」の8番目くらいには、「一旦大喜びした後でドン底に落とされるのは精神的にキツイから」というのもあるんじゃねーの?と、常日頃から思っていたのだが。

・・・・・・・・撤回する。
口に出したことはないから撤回する必要はないけれど、でも撤回する。
そんな幼稚なことを考えてしまっていたことを悔いた。
上司に謝りたい。
土下座して謝りたい。

なぜなら。
あたしは、玄関の真正面にある自分の部屋ではなく、玄関から一番遠い場所にあるベランダに向かったから。
「夏目父が、あたしのお願いを聞いてくれて、ゴミ袋をベランダに出しておいてくれた」という、「いいほうの話」を自分の目で確認したかったから。
ほんの小さなスペースだけど、3日もかけてようやく片付いた場所に生ゴミが置いてあるなんていう「悪いほうの話」を真っ先に確認する勇気はなかったのだ。

ベランダに向かいながら、「上司すげー。すげー勇気あるよなー」などと、今自分が置かれている状況とは全く関係ないコトを考えていた。




真っ暗なリビングに行くと猫が寄ってきたが、相手をする余裕はない。
ジャー!っとカーテンを開け、バシ!っと鍵を開け、ガラ!っと戸を開けると、サンダルを履き、寒くて暗いベランダを捜索した。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








ね ー し 。












(悪臭漂う汚部屋の完成予想図)





さいあくだーさいあくだー。
せっかく片付けたのにー。
せっかくじゅうたんが見えたのにー。
なんか、変な汁とか漏れてたらどーするんだよー。
ちくしょー。
今晩からとーちゃんの部屋で寝てやるからなー。
スッポンポンで寝てやるからなー。
ケツ、ボリボリ掻きながら、寝言ガンガン言ってやるから覚悟しろー。
片付けなんかやめたやめたー。
ゴミも絶対捨てないからなー。
毎日とーちゃんの部屋に生ゴミ置いてやるぞー。
生ゴミだけだと思うなよー。
油断するなー。
猫のトイレの砂とか、トーフヨーとかドリアンとかシュール・ストレミング(世界一臭い缶詰)とか、寝れないくらいくっさいモンばっかり置いてやるからなー。
・・・・って、それじゃあたしまで寝れないじゃないかー。
ばかーばかー、あたしのばかー。




心の中で悪態をつきながら、足元にまとわりつく猫をかわして、部屋に向かう。
「悪いほうの話」を、自分の目で確かめるために。



玄関を開けた時と同じように、息をつめて自分の部屋のドアを開けて照明のスイッチに手を伸ばす。
す。
す。
すいっち、おーん!(息を止めつつ)














(このアングル、久しぶりに載せた気が・・・・)






パっと見は、朝と変化なし。
でも知ってるんだ。
ゴミ袋の置き場所はココからは見えないんだ。
衣装ケースの陰だもん。


恐る恐る部屋に入り、問題の場所に近づいた。

















(ひろーい!(夏目基準))













ほぇ?













一体どこに置きやがったんだ?オッサン。








ここまで読んで、「お父さん、捨ててくれたんじゃ?」と思う方もいるでしょうが、娘のあたしには判る。

とーちゃんは捨ててない。絶対に捨てに行ってない。

ウチのオッサンはそーゆー、「いい方のサプライズ」は絶対やらない。
「悪い方のサプライズ」しかやらないんだ。




自分の部屋に生ゴミがなかったことに安堵する暇もなく、家じゅうのありとあらゆるところを探した。
で。
見つけました。


















(見間違いではありません。ここはお風呂です)








なんかね。
とーちゃんったら、風呂につかった後でゴミ袋を置いたみたいでね。


お風呂の程よい温度と湿気とで
熟成と発酵が進んでいる臭いがしました★




こんな意味不明なコトをやらかした張本人は、その日の夜から出張で不在。
今頃は、中洲あたりで飲んだくれてることと思います。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
とーちゃん。




帰ってきたら、「ごめんなさい」って100回言え!




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