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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)

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さて。
元旦の早朝、調子が悪くなったファンヒーターの掃除をすべく、掃除用具として必要・・・・だと思ったティッシュペーパーを大量に発掘したまではいいが、睡魔が襲ってきて父親の部屋で寝た三十路女が目を覚ましたのは、元旦の昼過ぎ、13時頃のことだった。(長い)
初っ端から余談だが。
毎年一緒に年越しをしている叔父(夏目父の弟・40代半ば・バツイチ独身)は、寝ているあたしに「お雑煮できたよ」と声をかけに来た時、三十路の姪のとんでもない寝言を聞いたらしい。








「 4 円 足 り ね ぇ ・ ・ ・ ・ 」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
最近、頻繁に末娘と同じ部屋で寝るハメになっている夏目父によると、あたしの寝言の9割は食に関することで、残りの1割はお金に関することらしい。
そして。
後者の寝言のほとんどが「○円、足りねえ」系らしく、「○」は1から9まで。
つまり。
夢の中のあたしはいつも、一桁のお金に苦しんでいるらしい。
・・・・しっかり稼げよ、夢の中のあたし。




この、へなちょこな寝言を聞いて大笑いした叔父の声であたしは目を覚まし、ボーっとしたままリビングへ行くと、テーブルには、叔父が作ってくれたお雑煮と一緒にアルコールが準備されていた。



起 き 抜 け の ビ ー ル っ て う め え ☆



というわけで、元日の午後も3人でテレビを見ながら酒を呑み続け、途中、何故だか「泣ける映画談議」が白熱し、各自がイチオシの「泣ける映画」のDVDを観て3人で号泣したりして(アホ一族)、ふと気づけばまた夜が更けていた。



  
(左から、夏目・夏目父・夏目叔父 選)



深夜の、睡魔が襲ってくる前の酔っ払い女は、フットワークが軽い。
夏目父と叔父がソファーで寝入ったのを見計らってりビングを出たあたしは、意を決して自分の部屋に向かった。
「今宵こそファンヒーターを掃除するんじゃ。一年の計は元旦にあるんじゃ」とかなんとか、小さい声で呟きながら。
時計の針が0時を回り、もはや元旦ではないことには全く気づかずに。



~ 警 告 ~


以下は埃画像満載なので苦手な方は見ないが吉です。



「まずは順当に、背面から行くか」



酔ってるくせに面白くも何ともない手順で作業を進めることにし、ファンヒーターを後ろ向きにした。
そして。
シラフならウンザリしそうな光景を目の当たりにしたというのに、酔っているあたしのテンションは何故か一気に臨界点に達した。





















ひゃっほーーーーーい!







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
今冷静になって考えれば、どーしてこんなものがあたしの交感神経を刺激するのか?ちっともさっぱり判らないけれど、この時は、ファンヒーターの背面にみっしりとついた埃を見て、アドレナリンがぶわーーーーっと噴き出したのだった。



用意したティッシュペーパーもそっちのけで、姫退治に欠かせないアイテムを、埃にピタリと貼り、そぉーっと剥がしてみた。
そして。
叫んだ。(マジでマジで)




(蜂の巣ちっく☆)








「 捕 っ た ど ぉ ー ー ー ー ー ー ー ! 」
(元気よく。しかし小声で)








 
(以降、いちいち叫びます。深夜なので小声で叫びます)



この要領で背面のカバー部分についた埃を取り除き、綺麗になったカバーをドライバーを使って外した。









ぐふふふふふ。



よし。
いよいよ、アレの出番だ!




(最終的には7個使った)



このあたりで既に、自分のテンションの高さに疲れ始めていたような気もするが、深夜に寒い部屋で小声で叫んだりほくそえんだりするのが思いのほか楽しくて(アホ)、止める気にはなれなかった。

ポケットティッシュを1枚取り出し、羽の1枚をひと拭きしてみた。









うふふふふふ。



・・・・・・・・・・今じゃ何が楽しいのかサッパリ判らないが、この時のあたしはなんかこの、サッ!っと拭くと、埃がモサッ!っと取れることがものすごく楽しく感じられていて、封筒からポケットティッシュを出していた時と同様、「サッ!」「モサッ!」と呟きながら、リズミカルに、しかしかなり適当に拭き進めていった。






「サッ!」





「モサッ!」











「お灸?」





訊いたところで応えてくれる人はいやしないのだが、このあたりになるともう、「深夜に寒い部屋で汚いファンヒーターを掃除しながらしょーもないことを呟いている自分」が面白くなっていた。
だから。



「サッ!」





「モサッ!」











「やっぱお灸?」



延々呟き続けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
さ、さ、寒い汚部屋にいるとサムイ人間になるんだね☆



サムイ人にはなってしまったけど、肝心の掃除はいたって順調!(夏目泥酔時基準)
・・・・だと思っていたのだが、ふと絨毯に目をやると。








どうやら、「サッ!」っとやる時に勢いをつけ過ぎているせいで、辺りに埃の塊をバラまいていた模様。(アホ)
そして。
だんだん、「サッ!」っと拭くやり方は、露わになっている部分では楽しいけど、覗き込まないと見えない部分や隙間には通用しないことに気づいてきた。
「サッ!」だけでは綺麗にならない。
分解掃除でもしない限り無理だ。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




ぶ ・ ん ・ か ・ い ?




この魅惑的な言葉が頭に浮かんだ途端、「どーせ10年モノのファンヒーターなんだし、もしも分解して壊れたとしても、これだけ使ったんだもの、悔いはねえんじゃね?」という想いが過ぎった。
でも。
すぐに思い直した。
なぜなら。
埃を取る作業が楽しすぎて、途中で止めたくなかったから☆




さて。
「サッ!」っと拭けない部分のホコリはどうやって取ろうか?
大して働かない頭で考えながらふと、ファンヒーター内部を覗き込んだ。
すると。
少しだけ落ちてきていたあたしのテンションは、一気に臨界点を飛び越えた。














いゃっほーーーーーい!







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
こ、このテンションの高さは何だったんだろう、と今なら思う。
アホじゃねえか?とも、今なら思える。
でもこの時は、「手の入らない箇所がホコリだらけ」という部分が、あたしの交感神経をいたく刺激したようだった。


「手が入らない箇所はアレだ!アレしかない!」と、元気よく、しかし小声で呟きながら、意気揚々と掃除道具を作り始めた。




(割り箸の先にポケットティッシュを引きちぎったのを巻いて)



(クルクル巻いて)



(ちょっと水にひたしたら)







「テレテテッテレー!なんちゃって松居ぼ...げふげふげふっ!」



大山のぶ代の声真似をしたら思いっきりムセた。
しかも、自分でもビックリするくらい似てなかった。



さて。
この「なんちゃって松居棒」を、件の箇所に差し込み、棒の先を埃に引っ掛けるようにしてゆっくり引き抜く。( 松居棒の正しい作り方






「クイッ!」





「ビロビロビローン」









「は、花輪クン?」








「クイッ!」




「ビロビロビローン」









「 お 前 、 誰 だ よ 」



・・・・・・・・・三十路の独身女の悲哀を感じてもどうかスルーして欲しい。
とにかく、酔ったあたしは寒い部屋でファンヒーターに詰まったホコリに話し掛けながら、それらを取り除いていった。
ついでに。
「サッ!」では取りきれなかった、ファンの中心軸付近も念入りに掃除。


しかし、終わりは意外と早かった。
というか。
やり終える前に限界がきた。
というのも。
酔いが覚めるに従ってまともに寒さを感じるようになり、やがて手がかじかんでしまったのだった。



シャンプーの時は中途半端で止めても何とも思わなかった。
でも、今回はやり遂げたかった。
ファンヒーターの内部をピッカピカにしたかった。
でも。
手が・・・・。
て、て、手がぁ・・・・・! ←かじかんだだけだけどな



というわけで、不本意ながら作業終了・・・・。
ま、ま、まあ、何もピッカピカにしなくても、ファンヒーターが機能してくれりゃいいわけで。
ピッカピカにしたところで、使い物にならなかったら意味がないわけで。



ファンヒーターの外観からは、深夜のイタイ対話の成果が顕著に見てとれた。




































(中途半端に終了)



いよいよ「運転」ボタンを押してみる。
するとファンヒーターは心なしか今までより静かに動き始めた。
暫く見ていたが、何分経っても「換気」ランプが点く様子はない。
な、直ったー!

・・・・とその時。
ファンヒーターから何かが出てきた。




(取りきらなかった埃が一気に噴き出した)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
何事もなかったように埃を取り去り、作業は終了した。


ファンヒーターが動くようになってよかったー。
埃を取るの、結構楽しかったしねー。
ファンヒーター、暖かいなー。
身体が部屋が暖まったら寝ようっと。
寝ーよぉーっと。









(未だ布団の3/4を占めるポケットティッシュ)








あ ゛ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。





ポケットティッシュ片付けるの、すっかり忘れてた!




というわけで。
力尽きたあたしはこの日(1/2早朝~昼過ぎ)もまた、夏目父の部屋で寝るハメになった。




午後1時。
またもや叔父に起こされたあたしは、「5円玉しかないんだよ・・・・」と寂しそうに言い、それを聞いて大笑いした叔父の声で覚醒した。
前日同様リビングには、食事と共にビールが用意されており、ごくごく自然にまた3人で飲み始めた。


叔父が言う。
「最近は、親子で寝るのが流行ってるわけ?」

夏目父が言う。
「いや。コイツが部屋を片付け始めただけ。片付けてんのに散らかって、自分の布団に寝られないから俺んとこで寝るの」

この会話がきっかけであたしは、ファンヒーターの調子が悪くなったことから始まるコトの顛末を一気に語ったのだが、最後まで話し終えると、夏目父が、珍しいものでも見るかのような目つきで言った。



父 「寒い中、ご苦労さん。って言いそうになっちゃうけどさ」
娘 「うん。寒かった」
父 「ファンヒーターをさ」
娘 「うん」




「日中、リビングに持ってきて掃除すれば良かっただけじゃねーの?」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ゛ああああっ!
(マジで思いつかなかった)




違う違う違う。
あたしがアホなんじゃない。
酔ってたから思いつかなかっただけなんだ。
そうなんだそうなんだそうなんだそうなんだそうな・・・・・。(フェードアウト)





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 あたしは、アホだから片付けられないのかもしれません・・・・。