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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)

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座談会は、みかこさんのHPとあたしのブログにそれぞれが載せた写真と、座談会のために新たに撮影したあたしの汚部屋写真を見ながらアレコレ語る、という具合で始まった。

編集者さんとライターさんがプリントアウトしてきた写真を回し見ながら写真に纏わるエピソードを語ったり、編集者さんやライターさんからの質問に答えたりと、筋道だっているわけでも、無理やり総意の結論を出すわけでもなく、ただつらつらと汚部屋での生活や片付けられないことについて語り続けるという、堅苦しくない構成だった。


みかこさんは以前、「片付けられない女は世の中のゴミ」とまで言われた経験があるし、あたしは今まで誰とも、片付けられないことについて語り合った経験がない。
そういった事情から、ふたりとも最初は静かめに控えめに語っていた気がする。
しかしその雰囲気は、取材する側のAさんが「自分も片付けられない女だ」ということをカミングアウトしてくれたのを機に一変した。
というか。
あたし達のタガが外れた。





みかこさんのHPの、「台所を掃除してみました」に載っている鍋と皿の写真を見て、不思議そうな声でAさん訊く。
「この鍋の中身は何ですか?」
するとみかこさんは、かわいい声でハッキリとキッパリと答える。

豚の角煮を作ったお鍋と、角煮を食べたお皿なんです

角煮?茶色くねーじゃん。つーか真っ白じゃん!なんていうツッコミは一切ない。
それどころかむしろ、Aさんは感心したような口調で言う。
「この状態のお鍋を洗うのがスゴイですよねー。私なら絶対捨てますよ」
その意見にあたしも同調すると、みかこさんはまたアッサリと言う。

私もこれまでに沢山捨ててるの




想像してみて欲しい。
片付けられなかった時のことをサッパリキッパリ話す女の子・みかこさんと、その話に驚くわけでもなく、ガールズトークよろしく、「あるあるー!」「わかるわかるー!」と盛り上がるあたしとAさん。
そして、あたし達3人の話にドン引きしまくり、時間が経つにつれて「もしや自分がマイノリティなのでは・・・・?」という不安に駆られていく、取材する側のもう一人、Bさん。
こんなに面白いシチュエーションというのはなかなかない。



みかこさんが、魚焼きグリルが、洗って使うものだとは知らなかった話をすれば、Aさんは「だから私は家で魚を焼きません」と言い、それに同調したあたしは「魚が食べたくなったら外食よ、外食」と言う。

Aさんとあたしが、「いっそのこと引っ越したい」と言えば、みかこさんは静かに首を横に振り、「引っ越しても変わんないよ・・・・」と寂しげに呟く。
経験者は語る。である。


話はどんどんエスカレートする。
Aさんの究極の理想形は、「ホテル暮らし」だそうだ。
これにはあたしもみかこさんも即座に賛成した。
必要最低限の物の中で暮らしメンテナンスは人がやってくれるという環境であれば部屋をキレイに保てるだろう。というコトなのだが、「掃除や洗濯を誰かにやって貰う」という部分を無駄に掘り下げ始めたため、「あたし達の前世は、召使いがいるようなお金持ちなのかも!セレブなのかも!」と、みかこさんが目を輝かせて語れば、Aさんも「マリーアントワネットとか!」と続く。
あたしに至っては、「わかった!召使いを雇ってくれるような金持ちと結婚すりゃあいいってことだよね!」と、彼氏もいねーくせに言い出す始末。






話したことをひとつひとつを書き出したらキリがないが、とにかく、Aさんとみかこさんの掛け合いが何とも面白くて、あたしはひぃーひぃー言いながら、時には目に涙をためながら笑い続けることになった。






みかこさんも既にレポートで書いていらっしゃるけれど、「片付けられない女」とひと括りにしてみたところで、片付けられない理由や部屋が散らかる原因は人それぞれだ。


みかこさんは、常に片付け続けていたのに片付け方が判らなくて片付けられなくて、悩んで泣いて苦しんでいた。
HPを作ったことを機に片付けられ、今は試行錯誤しつつも、キレイな部屋を維持する努力をしている。
Aさんは、自分の部屋に嫌気がさしているものの、「やるからにはキッチリと!」と思う完璧主義な性格だから、中途半端で終わってしまいそうなタイミングでは手をつけられない。


あたしは・・・・と言えば。


汚部屋での生活は不便だし心の底から安らげないし、不潔だとも、不経済だとも思っている。
一応、こんなあたしでも思ってはいる。
ただ、あたしが人並みの部屋で生活できていたのは、親がせっせと手をかけてくれていた小学校低学年くらいまでのことだから、汚部屋で生活することにすっかり慣れてしまってもいる。
不便なことも、安らげないことも、視界がスッキリしていないことも、「いつものこと」になってしまっている。
多少のストレスは感じているだろうけど、それにも慣れてしまっているから危機感はないし、「片付けられないこと」=「あたしの悩み」では全くない。

日常生活での優先順位は、「仕事が一番、呑み会二番、三四がなくて五に片付け。・・・・いや、やっぱり五番は麻雀で、片付けは六番」と、かなり偏っているし、そもそも、結婚の予定もなく彼氏もいなく、がむしゃらに仕事をするしか能が無い三十路の独身女は、家にいる時間が極端に短いわけで、失業でもしない限りこの順位に変動はないだろう。

まあさすがにあんまりだと思ったからブログを立ち上げて片付け始めてはみたものの、片付けの優先順位が上がったわけではなく、しかも、生まれてこのかたまともに片付けたことがないもんだから、要領が悪すぎてちっともさっぱり捗らない。



こんな風に、突き詰めていくとだいぶタイプの違う「片付けられない女3人」だったけれど、やはり共通していることは沢山あった。



・買ったものを使いこなせない、もしくは、買ったことに満足して使わないこと。
・自分の部屋の行く末に、無謀とも言えるほど壮大な野望があること。



そして。



「 自 分 の 部 屋 が 汚 い 」 と い う 自 覚 が あ る こ と 。




この自覚があるうちはまだ、「このままじゃいけない!」と思い、考え、行動できる可能性が残っている気がする。
というか、これがなくなったら多分終わりだ。
「あたしの部屋ね、すごく居心地がいいの。たまに雪崩が起きるけどね」とか、「紅茶の葉っぱが真っ黒いペースト状になった時の臭いを嗅ぐと妙に落ち着くのよぉ」とか、「魚焼きグリルを洗う・・・・?は?意味わかんねーし」とか言い出したらお終いだろう。



それともうひとつ。
座談会の終盤で、更なる共通点が見つかった。

きっかけはやはりみかこさんだったろうか。
朝、ガバっと起きて布団から出る時に、グシャっと乱れた掛布団をサっと直すかどうか?という話になった。
片付けられない女3人はもちろん「直さない派」で、誰からともなく「ところであれ、どうして直すんだろうね?」などと言い出し、語るにつれ、「直さなくても平気じゃん。つーか、サっとでも直す時間が無駄じゃん」と、間違ったゴールに向かって突き進んでいた、その時。
明らかに戸惑っている様子のBさんが3人の視界に入った。



「Bさん、布団直す?サっとやる?」
「や、やりますよ・・・・」



座談会が始まった頃、あたし達が相手のリアクションを探りながら話していた時のように、何故かBさんは恐る恐る答えた。
すると、ソッコーで「直さない派」からツッコミが入る。



何のために!?
「えーっとぉ・・・・、寝る時にさっと布団に入れるように・・・・」



「あぁ・・・・」
2人から、納得なのか何なのか判らない声が出る中、あたしはBさんに言った。


「あのね。だいじょうぶなんだよ。グシャっとなってても、寝る時にはズルズルーっと布団を引っ張ってね、後は・・・・」
「ああ、足で?」
「そう。グシャっとなってるところ足で直せばいいの


他の2人も続く。


「そうそう!足でササっとね」
「そうだよねー。足でやるよねー。それでいいよねー」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
も、も、もうお判りだろうか。
最後に見つけた、片付けられない女3人の共通点は。









手 ぇ 動 か さ ね ー く せ に 、 足 は 使 う こ と 。









そんなわけで。
「面白そうじゃね?」という軽いノリで参加した座談会は、思っていたよりずっとずっと楽しくて、しかも有意義だった。
普段は考えずに済まそうとしている様々なことを考えるきっかけになったし、みかこさんの話を生で聞いたことにより、「あたしもがんばれば片付けられるかもしれない」という思いが今までよりほんの少し強くなった。

それともうひとつ収穫があった。
1年くらい前からただぼんやりと、使う予定もないし探しもせずにただぼんやりと、「どこに行ったんだろうなあ?再発行したほうが早いかなあ。でも、再発行の手続き、メンドクセーなあ」と思っていたモノを、Aさんが見つけてくれたのだ。



ブツは、座談会用に撮ったこの画像に写っていた。




(汚部屋左手奥にある、姉が使っていた学習机)



この画像をプリントアウトした紙の余白にAさんが、ブツについて書き込んでいたのだ。








← パ ス ポ ー ト で す よ ね ?





















Aさん。
あたしのパスポートを見つけて下さってありがとうございます。
これであたしはいつでも海外旅行に行けます。
これさえあれば、「片付けられない女たち座談会」の世界大会にも参加できますので、機会がありましたらまた是非、お声がけください。

それからBさん。
座談会ではあんなことを言っちゃいましたが、この記事を書いているうちにふと気づきました。



手で出来ることを、わざわざ足でやる必要は全くない。



ということにたった今気づきました。
あたしが自信満々に、まるで生活の知恵でも伝授するかのように話してしまったので、Bさんがあれから毎日、足を使って布団を直しているんじゃないか?と危惧しております。
手でいいんですよね、手で。



そして、みかこさん。
本当にお世話になりました。
楽しかったです。面白かったです。
次は、「片付けられない女たち座談会・世界大会」でお会いしましょう。




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