BOOK INFOMATION
昨日の夜のこと。
出張中の同僚・吉田から電話が入った。
出張から戻ってきたが会社には戻らないから、近くのドトールに来てくれと言う。
「渡したい物がある」と。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
前もって言っておくと。
「会社の人には内緒で☆」というような色っぽい話では、ない。
仕事を終えてドトールに行くと、あたしを見つけた吉田が手招きしていた。
コーヒーを買わずに吉田の前に座ると、拍子抜けしたような顏で吉田が話し出した。
「なんだ。今日呑みかよ」
「うん。呑み」
「会社のヤツとだろ」
「工藤さんと一条と。一緒に行く?」
「行かね。俺、工藤と一条と一緒に呑みたいわけじゃないもん」
「サシが良かったんだね」
「まあね」
(念のためもう一度。色 っ ぽ い 展 開 に は な り ま せ ん )
「で、何をくれるの?」
「あ。そうそう」
そう言って、吉田がカバンの中から取り出したのは。
女友達や会社の後輩に勧められ、『お部屋をキレイにするブログ』のカナさんも「コレを見ると夏目さんと想いを共有できそうな気がします」と言ってくれた、『 働きマン 』。
既にマンガ喫茶で読んだけど、仕事欲が減退した時や、仕事が原因で精神的にキテる時にこれを読めば、「さーて、あたしも仕事がんばるかー」という気になれそう、と思っていたもの。
「買ってみようかなー」と思ったけど、「でもなー。こうやってモノが増えるんだよなー」と思ったのでマン喫へ行き、しかし、マン喫で読んだ後も「買おうかなー。でもなー」と思っていたもの。
そんなあたしの葛藤(・・・・という程大げさなモノでもないが)を全く知らないハズの吉田が、何故かあたしに『働きマン 』をくれるらしい。
「ところでどーしてあたしに?」と思っていたら、吉田は「ホワイトデー」と言い、「で、なんで『働きマン 』をチョイスしたわけ?」と思っていたら、吉田は「好きそうだなあと思って」と言う。
(シツコイですが。色 っ ぽ い 展 開 に は な り ま せ ん )
「本の整理を始めたところなのにぃー」とは思わなかった。
「買わないためにマン喫で読んだのにぃー」とも思わなかった。
というか。
語弊があるのを承知で書くと。
「片付けているから」「モノを増やさないようにしてるから」なんていう理由で、親しい友人や家族の想いを「迷惑」と思ってしまうくらいなら、そうしなければ部屋が片付かないというのであれば、あたしは一生汚部屋住まいでいい。
目の前に置かれた3冊のコミックを見つめ、「吉田ってば、あたしに「老けたな」って言ったクセに、出張中もホワイトデーのこと気になってたんだなぁ。「アイツには何がいいのかなあ?」って考えて買ってくれたんだなあ」と、ニヤけてしまうのを我慢していたら、吉田が語りだした。
「読んだことあった?」
「うん。ちょっとだけ」 ←ほんとはマン喫でガッツリ読んだ
「そっか。読んだくせに気づかねーのか」
「何を?」
このあたりから、風向きが怪しくなった。
吉田は語る。
「その主人公の女、仕事してる時は確かに、女を忘れてるんだけどさ」
・・・・・・・・・・あ・・・・あぁ・・・・。
もういいよ、吉田。
お前の言いたいことは判った。
「でも、彼氏と別れて泣いたりさ、そういう部分はまだあるわけよ」
・・・・う、うん。つーか吉田。もう判ったから。
「お前はさ、そういうの、ナイだろ。もうすっかりナイだろ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
黙りやがんねーかな、この男。
しかし吉田は続ける。
「ま、この主人公とお前じゃ、歳も違うけどさ。でもお前、28歳くらいの時でも、もうそんなだったよな?」
・・・・「そんな」って「どんな」だよ・・・・。
「男と別れてもどーってことなさそうで。男と別れたことより麻雀で負けたことのほうが精神的ダメージがデカくて」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「つーかお前は昔から、部屋で寝転がって新聞読みながらケツ掻いてそうだったもんな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ここでようやくあたしは口を開いた。
「 掻 い て ま す が 何 か 」

(「しかもこんな汚部屋でな」とは言えなかった)

(「しかもこんな汚部屋でな」とは言えなかった)
吉田は、「やっぱりな」という顔をしたものの動じることもなく、目の前にあったコーヒーを飲み干すと立ち上がり、「あ。あともう1つあったんだ」と言ってKIOSKの袋をテーブルに乗せた。

「え!これ、くれるの!?いいの?いいの?すげー!チー鱈がいっぱいだー!嬉しいー!」と、我を忘れて興奮しまくるあたしを残し、吉田は立ち去・・・・ればいいものを、最後にまたひとこと言いやがった。
「じゃあな。呑み過ぎんなよ、オッサン」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もちろん夕べは悪酔いした。
吉田のせいで悪酔いした。
つうか、吉田。
説 教 す る な ら 呼 び 出 す な 。

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