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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)




今あたしが生活している8畳の部屋は、11年前まではお姉ちゃんの部屋だった。
世の中の嫁に行った人の多くがそうであるように、うちのお姉ちゃんは嫁に行く時、実家である我が家に沢山の物を残していったのだが、お姉ちゃんはあたしと違ってとてもちゃんとした人だったから、その全ての処遇を、妹であるあたしにきっちり言い残していた。





「 全 部 捨 て と い て 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・う、うん。
と返事をして、でもあたしはそのほとんどを11年も放置したわけだ。




ふふふっ。
(自分で面白く思えたらしい)




さて。
魔境に棲む魔物を退治して、いよいよその奥にある変な形の押し入れの片付けに入る。






開きっぱなしになっている側にあるのは、あたしの物だ。
問題は、閉じている側に何が入っているのか?だ。
お姉ちゃんが「捨てて」と言ったんだから、要らない物が入っているんだろう。
でも。
お姉ちゃんは、ベッドや掃除機やテレビやビデオデッキも置いていったから、ひょっとするとひょっとするかもしれないぞ?
そんな少しの期待と、ここ2ヶ月くらい抱いていたある不安を抱きながら、押し入れの戸を外してみた。




(ご開帳ー)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
押し入れの左側が開かれたのは11年ぶりだけど、それ以前はお姉ちゃんの部屋だったから、あたしがここを見るのは初めてだ。
初めて押し入れの全貌を見てあたしが思ったのは、「使えねー形の押し入れだなあ」と、「お姉ちゃんのもの、少なっ」と、そして、「やっぱりな・・・・」。
不安が現実になった瞬間だった。



「またかよー。メンドくせーなぁ・・・・」と、やる気が萎みそうになったその時、心躍る物が目に入った。






わ!
チビ液晶テレビ!
これ、覚えてる覚えてるー。
お姉ちゃんが入院した時、あたしが買ってあげたやつだー。
っていうか。
お姉ちゃんが「小さいテレビ買ってきて」って言うから買って持っていったら、その日たまたまお見舞いに来てた叔母さんに、「テレビを買ってあげるなんて優しい妹ねー」って言われちゃって、「お姉ちゃん、金くれ」って言えなくなったやつだ。
そうかそうかー。
お姉ちゃんったらこれ、置いていったのかー。
どこに置こうかなー。
あっ!あっ!ああああっ!
トイレに置きたい!!!!! ←ウルサイ
・・・・って。











中身ねーし。





き、気を取り直して視線を動かすと今度は、見たことがないものが目に入った。






なんだー。
ウチにもカセットコンロがあったのかー。
なんでこんなところにあるのかはわかんないけど、4畳半から出てきたガスはコレのだったのかー。









すげー錆くせーし。





こんな錆くさいカセットコンロじゃ、鍋も不味くなる。
捨てよう捨てよう。



ん?
この、薄い紙に包まれたこぶし大の物体は何だ?






ウワーっと虫が飛び出てきた時のために、ケータイのカメラを起動し、しっかり構えて包みを開けてみる・・・・が。









誰?



一瞬カエルかと思ったけど違った。
っていうか。









なんだかわかんねーし。



他にもこういう置き物系の物体がわんさか出てくる。
しかも、どれもこれもが中途半端な可愛さ。




(リボンと鈴つけたって、蛇は蛇)



こうも次々と使えないものばかり出てくると、もはや秘境探検は楽しいことではなくなってしまい、心の中でお姉ちゃん・・・・にではなく、11年間押し入れの中で息を潜めていた物達にツッコミを入れないとやってられなかった。
こうして、押し入れ上段の物は全部ゴミ袋へ入れ、下段に期待をして視線を落とすと・・・・。



(虫画像出まーす)















ぉ・・・・。虫だ・・・・。







(体長約1センチの昆虫)






キミの名前は何てぇんだい?






っていうか。






ひ と り ぼ っ ち か ぃ ?







(ほっこり密封)



どうやらあたしは、面白い物や金めの物が出てこないなら、虫の大群くらい出てきてもらわないと、やる気が萎える身体になってしまったらしい。
虫依存症か?

というか、そうでなくても押し入れの下段は、虫がいる可能性が高い。
だって、エサがあるんだもん。




(実はあたし、海釣りが趣味です)



使った後、ちゃんと洗ったんだか洗ってないんだか微妙なグッズもたんまりと。




(上のコマセを混ぜる用のフタ付きバケツ)



(それを海に撒く用のヒシャク)



(海水を汲み上げるための、ロープ付きビニールバケツ)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
コマセ以外の物は車に積んであるよなぁ・・・・。
どこにしまったのか探しもしないで新しいのを買うの、ほんとにもう止めよう。
開封したら異臭騒ぎになりそうなコマセは捨て、それ以外はしっかり洗って使うことにした。



無性に釣りに行きたくなりつつも、下段にあったあたしの物の片付けは終わった。
あとはお姉ちゃんがしまっておいた物を片付けたら、虫より見たくないものがドーンと姿を現すハズだ。
それを考えただけで下段の片付けを止めたくなったけど、知ってしまったからには早々に始末してしまいたい。
一服したり、コーヒーを飲んだり、押し入れ下段から見つかったこんなものを呑んで、暫しの休憩。




(お姉ちゃんが部屋で呑んでいたものと思われる)



11年以上前に開封されたスーパーニッカは、お酒ではない何かになっていたので、口直しに缶ビールをガブ呑みし、片付け再開。



お酒ではない何かの下には、懐かしい箱があった。






あたしがまだ小さかった頃、夏目父が誰かから貰ってきた布団乾燥機。
これが家にやってきた日のことをあたしは鮮明に覚えている。
お母さんがすごくすごく喜んで、これが我が家に来てからというもの、家族の布団は一年中フカフカだった。

これが壊れたのはいつのことだったろう。
お姉ちゃんが新しい布団乾燥機を買うというのを、お母さんは止めた。
「今まで充分楽させて貰ったからもういいの」と言って止めた。
そこで、お姉ちゃんはお母さんには内緒で修理しようとしたのだけれど、「製造したメーカーがもう潰れている」という理由で、電気屋さんに修理を断られたのだった。




(The・昭和家電)



・・・・とここまではちょっといい話風味だが、後日談がある。
お母さんが「今まで充分楽させて貰ったからもういいの」と言った数日後のこと。
舌の根も乾かねーうちに、お母さんは自分で新しい布団乾燥機を買ってきたのだ。
で、夕食時、家族全員が揃った席でニコニコしながら言った。



「フカフカのお布団で寝たい人は5,000円払ってくださーい」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ああ・・・・。
あの時の衝撃ったらなかったなあ。
そうだそうだ。
あたしが「5,000円なんて持ってない」って言ったら、お母さんは笑顔で言ったんだった。



「 お 年 玉 貯 金 か ら 下 ろ し て お く ね 」



で、ほんとにお金を下ろすんだから、お母さんは最強だった。



そんな大昔の出来事を思い出しつつ、でもこういう品を取っておいてはキリがないので、思い切って捨てることにした。



さて。
11年もの長きに渡り放置されていた押し入れに最後に残ったのは、小型扇風機の入ったダンボールと、




(11年間、団扇ひとつで夏を乗り切ってきたあたしにとっては宝)











(すっごい汚い画像が出ます)
















史 上 最 悪 の カ ビ だ っ た 。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。









(もはや生活必需品)



が。
カビが取れる前にカビ取りハイターがなくなって、この日の作業はこれにて終了。
またもや。



胞子の飛び交う汚部屋で就寝。



身体が丈夫でほんとよかった。
っていうか、前言撤回。



見たこともない虫の巣のほうが100倍マシ。





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