BOOK INFOMATION

単行本 『 片付けられない女魂 』 は、Amazonマーケットプレイスで購入できます。
片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



昨日の朝のこと。
同僚の吉田が、あたしの顔を見るなり言った。



「ねえ。お前んちって広い?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、な、なんなんだ?
「広い」っつったらどうなんだ?
「狭い」っつったらどう出るんだ?
つーか、その質問の意図は何だ?真意はどこっ?
・・・・と瞬時に考えてみたものの、話の先が読めないので、あっさり答えた。



「フツー」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ど、ど、どうだ?
どう出る?吉田。
・・・・え?あ、あれ?
もしかして吉田ってば!





あ た し と 結 婚 し て マ ス オ さ ん す る 気 じ ゃ ね ?





・・・・なんてことはもちろん考えなかったけど、むしろ、そんな可能性が皆無だからこそ、吉田の真意が全く読めない。
この話はどこに辿り着くのだろう?
ウチの何が知りたいんだ?吉田!
・・・・と軽く動揺しているのを隠しつつ静かに吉田の反応を待っていると、話は、あたしが最も恐れていた方向に進み始めたのだった。



「お前んちって、誰が家事やってんの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「親父さん?それともお前?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺」
「ふうん。家政婦雇ってるわけじゃないのか」
「うん」
「じゃあさ」
「うん」



「 やっぱ、家の掃除はお前がやってるわけね? 」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








よ、吉田。








昼 メ シ 奢 る か ら 今 す ぐ 黙 れ 。



しかし吉田は黙らない。
あたしが「黙れ!」と念じているのに、全然ちっとも黙らない。



「住居用洗剤って、何使ってるの?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。










とは言えず、あたしが口篭もっていると吉田は続けた。



「こだわりナシ?」
「うん」
「あ、じゃあさ」
「う、うん」
「今日の夜、洗剤持ってくるから、家に持って帰って使って」
「・・・・あ゛?」



その後吉田が話したことを要約すると。
吉田の担当するクライアントが、事務所を移転するのを機に、それまで社員が当番制でやっていた事務所の掃除を、業者に委託することにしたらしい。
で。
買い置きしていた洗剤が要らなくなるので、吉田に再三再四、「引き取らないか?」と言ってきているそう。



「あったら使うだろ?」
「う、うん」



というわけで。
あたしは吉田から住居用洗剤を貰うということで話がまとまり、吉田はクライアントのところへ出かけていった。
あたしは、家での暮らしぶりを根掘り葉掘り訊かれなかったことに激しく安堵しながら、仕事に戻った。
そして夜になり、外にいる吉田からケータイに電話がきた。



「お前、今日何時に帰んの?」
「11時頃」
「わかった。じゃあ待ってるから」
「呑み?」
「いや。俺、仕事終わったから、家に戻って車とってきてから会社に行くわ」



またもや話が見えない。
ところがあたしは、仕事以外のことになると途端にどうでもよくなって、「呑みじゃないのかよ。つーか何で車?」と思っても訊くのがメンドくさくなる生き物なので、「ふうん」とだけ言って電話を切った。



23時。
仕事を終えて会社を出ると、ビルの前に吉田の車が停まっていた。
・・・・くぅぅぅぅ・・・・。
仕事帰り、男が車で迎えに来てくれるのなんて、何年ぶりだよ。
泥酔した男友達から連絡を受けて車で迎えに行くことはしょっちゅうあるけど、迎えに来て貰ったことなんて最近全然なかったなあ。
なーんかいいね。



これが吉田じゃなかったらすごくいいね。



心の中でそんなことを思いながら乗り込むと、吉田は黙って車を走らせ、暫くすると「メシは?」と訊いてきた。
「メシの誘いだったのか」と思った。
でも違った。



「まだ。5時ぐらいに、部長がくれたおにぎり食べただけ」
「・・・・食ったんだな?」
「食ってない。おにぎり2個しか食ってない」
「・・・・食ってんじゃん」
「食ってない。今、すげー腹減ってる」 ←つくづく言葉遣いの悪い女
「・・・・食ったのに?」 ←シツコイ
「食ってない」 ←コイツもシツコイ



結局吉田は、おにぎり2個ぽっちを「晩ご飯」と認定し、どこに立ち寄るわけでもなく、あたしを家まで送り届けやがった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



吉田、あたしのアッシーになりたかったのかしら☆
(「アッシー」を知らない人はお父さんかお母さんに訊いてね)



ところが、だ。
マンションの駐車場で停まった車からあたしが、「ありがと」とだけ言って降りようとすると、何故だか吉田まで降りてきた。
あたしは慌てた。



「な、なに?」
「は?」
「なんで吉田が降りるわけ?」
「玄関まで、洗剤運んでやっから」



ああ・・・・、なーんだ。
洗剤を持ってきてくれたのか。
そのための車か。
なるほどなるほどー。






ほうほう。
マイペットね。
4畳半のヤニ掃除にいんじゃねーの?






あらまあ、3本も。
真ん中のは比較的新しそうだけど、両端のは古そうだね。
でもいいの。
何せあたし、推定10年前のシャンプーとコンディショナーを平気で使ってるんだもの。
でもさ、吉田。



この量はどうなんだ?












(デカい詰め替えボトルには「業務用」の文字)







(4.5リットルって何リットル?答え:4.5リットル)





吉田がこれらを車から降ろした時、まずはその量に驚いた。
でもそれよりも、あたしはその後、吉田の口から発せられた言葉で、腰を抜かさんばかりに驚くことになる。



吉田は、大量の洗剤が入った紙袋を持ってウチのマンションの階段を上がりながらこう言ったのだった。



「大量だけど使い切るでしょ?」
「・・・・10年分くらいあるんじゃね?」
「お前なら2~3年で使い切るっしょ」
「え?」






「 だ っ て お 前 、 掃 除 好 き そ う だ も の 」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






吉 田 っ て 、 人 を 見 る 目 が な さ す ぎ 。






人気ブログランキング
 週末はヤニ掃除でもするか・・・・。