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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



2年連続で期限付き大掃除に成功して、とんでもない罰ゲームを見事に回避した青ポットさんへの惜しみない拍手(と、それを遥かに上回る舌打ち)が鳴り止まぬ片付けブログ界で時々目にするのが、「自分が部屋をせっせと片付け始めたら、それまで散らかし放題だった旦那さんや子供や恋人も片付けるようになった」というような、ステキ家族バナシだ。
そんな、ホームドラマみたいな展開になるなんて、なんとも羨ましい話だが、残念ながらあたしが一緒に暮らしているのは、自分は片付けどころか家事全般とは無縁だと信じて疑わない親と、生涯無職を貫いている自堕落番長だけ。




(お前の寝床はここじゃねえって、何べん言ったら判るんだぃ?)



夏目父に家事をやって欲しいと思ったこともないし、あてにもしちゃいない。
むしろ、夏目父にやってもらうくらいなら、とっとと自分でやるか、家事を一切をやらずにゴミ屋敷で暮らすほうが全然ラク。
何故なら、夏目父が気まぐれに思いつきでやる家事の9割9分は中途半端で終わるからだ。





夕べあたしが自分の部屋で、ここ1週間くらいで届いたダイレクトメールを眺めていた時のこと。






「電話料金はネットでも確認できるし、それどころか開いて見ないことのほうが断然多いんだからとっとと送付停止依頼すりゃあいいんだろうなあ」とか、わりと人並みなことを考えながら、でも何もせずにただ眺めてだけいると、夏目父がやってきて言った。



「 ね え 、 俺 の 『 レ イ ト ン 教 授 』 は ? 」








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



レイトン教授?
ああ。

あたしが稼いだ金であたしが買ってきた、あたしのレイトン教授ならあるけど、お前が稼いだ金でお前が買ってきた、お前のレイトン教授はねえよ。

・・・・なんてことを夏目父に言ったところで諦めるわけはないから、黙ってカセットを渡した。
「ありがと」と言った夏目父はしかし立ち去りもせず、あたしの目の前にあるDMの束をじっと見つめている。

「ん?」
「そういうDMってどうするの?」
「ビリビリしてポイ・・・・」
「あ、そうだ!」
「あ゛?」
「今日ね、部屋でずっとコロコロしてたアレを片付けたんだよ」
「アレって何だっけ?」 ←素で判らない
あれ?何だっけ?」 ←こいつも素
「コロコロしてたアレ?」
「そう。あの、水につけるやつ」 ←お前は小さい子か
「ああ」
「アレ、片付けといたから」
「・・・・ふうん」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



あ り 得 ん 。



娘が訝しがっていることも知らず、夏目父は続ける。

「アレ、俺のだからね」
「・・・・わかってるよ」

つーか、「俺の物は俺の物。お前のゲームも俺の物」って、どんだけジャイアン気質なんだよ。



ちなみに。
夏目父が言っている「部屋でずっとコロコロしてたアレ」とは、1年以上前に姪がゲーセンでとってきた圧縮タオルのこと。



姪はリラックマのタオルを狙ってチャレンジし、要らないキャラの物まで取れてしまうとそれをせっせと夏目父にくれていた。
で、夏目父はそれを自分の部屋のサイドテーブルに並べていたのだが、小さくて適度な重さがあってチョンと突付くとパタンと倒れるモノが手の届くところにあるもんだから、自堕落番長がしょっちゅう毛深い手でチョイチョイやっちゃって、10日も放置しておくと、テーブルの上には1個も無くなってたりしていた。






夏目父がそれらを、「使わないけど孫がくれたものだから」という理由でとっておいてるのか、それとも、「なんとなく」なのかは判らないが、少なくとも、自堕落番長の遊び道具として置いているわけではないらしい。
それが証拠に、テーブルの上からそれらが無くなると夏目父は、「あそこに置いておくからダメなんだよね。つーかあれ、どうやって使うの?」と、頻繁に訊いてきた。



2週間に1回は訊いてきた。




1年以上前からだから、




これまで50回くらいは訊かれた。



何度も同じことを答えるのはメンドウだけど、この手のことでイラついてては心穏やかになんて暮らせない。
だからあたしは訊かれるたびにただ一言、「水に浸すの」とだけ答えてきた。
相手が幼稚園児なら足りない答えだろうが、相手は夏目父だ。
親ほどの歳だ。つうか、親だ。
つまり大人だ。






中には取説が入ってるし判るだろう、と思っていた。
が、甘かった。





浴槽にお湯をはろうと、風呂場に行った。






給湯器を新しくしてからというもの、「お湯はり」ボタンを押すのが楽しくて仕方ない。






イマドキの家なら当たり前なんだろうけど、「風呂に行って蛇口をひねってお湯を出し、いっぱいになる時間を見計らってまた風呂にいき蛇口を閉める」という暮らしが普通だったあたしにとっては、ボタンひとつでお湯がはれるなんて夢のよう。
ガス屋さんが、「お湯はり機能がない機種のほうがもちろんお値段は安いですけど、うっかりして浴槽から溢れるお湯のことを考えたら、長い目で見れば絶対お得だと思うんですよ」って言ってくれて良かったなあ。
なんてことを思いながら「お湯はり」ボタンをピッ!っと押した直後、風呂場にバケツが置いてあることに気がついた。
で。
何の気なしに中を覗き、呆れた。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






(ビニール破裂)





ビ ニ ー ル を 剥 が す こ と く ら い 気 づ け 。





風呂に入るには邪魔なバケツを脱衣所に移動した。
でもきっと、夏目父はもう、二度と再びこのバケツの中身をどうこうしないような気がする。
だって、いつまで経ってもタオルが広がるわけねーし。
歯を磨きに洗面所に入るたび、なんとなくバケツの中を覗いて、「まだだなあ」とか「何日かかるのかなあ」とか「水が足りないのかなあ」くらいは思うだろうけど、だからといってアレコレやってみたりしないだろう。
夏目父はそういう人だ。



続きをあたしがやるべきかどうか考えながら自分の部屋に戻り、バスタオルを腕にかけて部屋を出ると、トイレから出てきた夏目父と出くわした。
言いたいことは山ほどあるが、とりあえず、ヒントだけ与えてやろうか。
「ビニールをとってから水に浸すんだよ」ってことは言っておこうか。
・・・・と思った矢先、夏目父の手が伸びてきた。
そして、あたしの腕にあるバスタオルをとると、「お先!」と言って脱衣所に入っていった。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





風 呂 ま で 横 取 り す る な 、 ジ ャ イ ア ン 。





っていうか。





ヒ ン ト は 絶 対 教 え て や ん ね 。





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 ↑2007年度大掃除終了宣言した方のコメント欄がやたら笑える・・・・。