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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



「もうダメかねえ」とあたしが訊くと、夏目父はこちらを見ずに「ダメでしょうねえ」と言った。
「絶対ダメかねえ」とあたしが訊くと、それでも夏目父はこちらを見ずに「絶対ダメでしょうねえ」と言った。
夏目父は「変な虫がつきそうだから」という根拠のない理由で日々草を嫌っていたのだが、口調だけは残念そうだった。


・・・・そうか、やっぱりもうダメなのか。






異常なまでに虫嫌い、なのに植物を育てるのが好きな夏目父がそう言うのだから間違いないのだろう。
仕方ない。抜くか。




(この場所を見るたび浮かぶ言葉、それは「リバウンド」)



この手のことを相も変わらず布団の上でやり始める自分に呆れつつも、






さほどびゃーっとすることなく抜くことができた。






寂しくなった鉢を見たら何かを植えてみたくなったので、「今日は草でも買いに行こうか」と思ったのが、土曜日の朝。
具体的には、朝6時55分。
日の出の時間だった。






綺麗な朝日をケータイで撮り気分が軽くなったのもつかの間、同僚・吉田からのメールを受信した。
メールのタイトルは「今日」。
本文はいつも通り、色気も素っ気もないものだった。



「 タイヤ交換しろ。あとオイル交換も 」



部屋のメンテナンスが出来ないあたしは車のメンテ全般も出来なくて、もう何年も、タイヤ交換のタイミングを職場の誰かに教えて貰っている。
それが今年は吉田だった。
そういえばここ暫く、喫煙室で吉田に会うたび、「タイヤ交換した?」って訊かれてたっけ。
しかし、あたしが「してない」と言ったところで、訊いてきた相手が誰であろうとも「俺がやってやるよ」というオイシイ展開にはならない。
「やれ」と言われるだけである。
でも、あたしは毎年、誰に何度言われてもやりゃーしねえ。
やらない理由は、まあ、メンドクセ以外にないのだが、そうしてズルズルと普通タイヤで走り続け、ある日ドカンと雪が降って呆然とするのが常だった。
でもこの日はちょっと違った。
念のため書いておくと。
メールをくれたのが吉田だということは、この後のあたしの行動には何ら関係ない。
全くちっとも関係ない。



朝日を見て気分が軽くなっていたあたしは早速厚着をして出かけ、タイヤを交換した。
そして、いつも行っているガススタが開くのを待ってオイルを交換して貰いに出かけた。






作業が終わるのを待っていると、なんとなく顔見知りになっているガススタの店員に話し掛けられた。

「車の調子、悪いんですか?」
「え?なんか変なところでもありました?」
「いやいや。オイル交換だっていうから」
「ああ、なんか交換時期なんですよね?」
「そうですけど、いつもはオイルがドス黒くなってから交換するじゃないですか」
「そうでしたっけ?」
「そうっスよ。このタイミングでやったこと、ないと思いますよ」
「そうでしたっけ?」
「それすらも把握してない、と・・・・」
「・・・・え、ええ」

店員に軽くやられてガススタを出て雀荘に行った。

例年、12月に雀荘でフリーで打つと、かなりの確率で負けている。
しかも大負けする。
何かと物入りな月だからか卓が殺気立ってたりして、打つ前から気持ちですっかり負けている。
なのに土曜日は。



少 し し か 負 け な か っ た 。



翌日曜日は、親が印刷したハガキに短い文章を書くだけでは物足りなくなった姪と2人で、年賀状のための買い物をしに出かけた。






どんな年賀状にするかを2人で3時間も考え、






結局、スタンプを押して粉をふりかけ熱をあてると、インクの跡がぷっくり膨らむ年賀状を作ることにした。



「子供って、なんつうメンドクせえモンが好きなんだろう」と思いながら家に戻り、早速製作開始。
まずは、姪の描いたネズミの絵をゴムに写してゴム印を作るところから始まった。
姪画伯は、あたしの常識にはない不思議な生き物を描きながらも、とても楽しそうで、ゴム印が出来上がると真剣な表情でスタンプを押し、1枚出来上がるごとに「綺麗だね」とか「カワイイね」とか言う。



そ う で も ね ぇ ・ ・ ・ ・ い や 、 何 で も ね え 。



でも、姪が言う「楽しいね」という言葉にはあたしも素直に頷けた。
エンボスパウダーをふりかけたりする作業も楽しいのだが、「うわ!右側が薄かった!」とか「これは完璧!」とか言いながら、2人でワイワイ年賀状を作るのが楽しかった。
が。



5 枚 で 飽 き た 。



「画伯。もう飽きました」
「はやっ!」
「うん。でも飽きた。マジで」
「まだ夏目ちゃんの分もあるんだよ」
「え。あたしのはいいよ」
「どうして?」
「(その不思議な生き物のゴム印を押されちゃたまらんし)あたしはいつも、年末年始の休みに入ってから書いてるからいいの」
「お休みっていつから?」
「29日から」
「おそっ!っていうか、夏目ちゃん」
「なんですか?画伯」
「こないだのニュースで、年賀状は25日までに出すと元旦に届くって言ってたよ」
「・・・・知ってるよ」



「 じゃあどうして29日に書くの? 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





画伯の伯母さんは、ギリギリにならないと動かないヤツだからだよ。



なんてことを言ったら、画伯はまた厳しい質問をしてくるに決まってる。
だからあたしは、「ゴム印、貸してあげる」という画伯の有り難い申し出を丁重にお断りして、例年より10日以上早く自分の年賀状を書き終えた。

あたしも画伯くらいの歳の頃はちゃんと書いてただろうに、大人になってから、こんなに早くに年賀状を書き終えたことなんてなかった気がするなあ。
画伯のおかげで、年末はゆっくり過ごせそうだよ。
ありがとね。
でも、毎年画伯に急かされたらキレるからね、あたし。(何で!)



それにしても。
あたしは相手が画伯でなくとも、質問をされるのが苦手だ。
「25日までに出さなきゃ元旦に着かないって判ってるのに、どうして29日書くの?」みたいな至極当たり前の疑問はもちろんのこと、自分自身のことについて訊かれるのがとても苦手。
片付けに関することでもそうで、「なぜ汚部屋にしてしまったのか?」「なぜ片付けようと思ったのか?」「どういう基準で物を捨てていったのか?」というのは、ノールールで片付け続けていたあたしにとって、微分積分の100倍くらい難しい質問だ。

あたしの行動のひとつひとつには深い考えもなく、大した意味も理由もない。
それをやったのは「なんとなく」、それをやらなかったのは「メンドクせぇから」。
プライベートな部分ではこれ以外の理由は無い気がするし、あたしの場合、もっともらしい理由を語ってみたところで、言ったそばから「所詮、後付けの理由じゃね?」と思ってしまい、こっ恥ずかしくなる。
だから。
質問に素で答えるとこの前みたいに「メンドクサイから」を連発するハメになる。



なのに、そんなあたしの部屋にまた、





取 材 の 人 が 来 る 。



もはや、部屋の状態はどうでもいい。
今あたしが切実に願っているのは。





どうかインタビューがありませんよーに。(祈)





ということと、万が一あったとしても、





前回ほど「メンドクセ」を連発しませんよーに。



ということだけ。
部屋の掃除は間に合わないだろうし、また、布団を畳むだけで終わるだろう。
でも、ここだけは片付けとくか・・・・。









や っ ぱ や め る か ・ ・ ・ ・ 。
(何でだよ)



#詳細は暫しお待ちを。
#撮っても使えない可能性大ですけどね。






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 今週金曜日に行われる掃除片付界の大忘年会にはステキな副題がついているようですが。
 ・・・・流れねえって、姫だけは。