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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



帰宅して部屋の照明をつけ、カバンも置かずファンヒーターもテレビもつけず窓に寄り、ブラインドを上げた。






(サッシの黒い汚れはカビだね。っていうか、すげーダラダラだね)





会 い た か っ た よ 、 結 露 た ん !





それにしても。
水滴取りをマメにやれば、1日で1リットルくらいは水が取れそうな気がするなあ。
まあ仮に、1日に1リットルの水が取れたとしよう。
問題は、湿度やカビじゃなくて、その水をどう使うかだよな。



この前は部屋にあるドラセナに遣ったんだけど、1リットルは多すぎるんだよね。かといって、浴槽に溜めるには全然足りないし。って、溜めたところで意味ないよね。だってウチの風呂、追い炊きできないもんね。電気ポットくらいが丁度いいんだろうけど、この水を沸かしてコーヒーを飲むにはかなりハードな浄水機能付きじゃないとダメだ。いやいやいや、風呂場やリビングで使えたところで意味ないんだよ。あたしの部屋で使えないと」



着替えもせず、水滴ワイパーを片手に突如リビングへ現れたと思ったら、「ただいま」も言わずにいきなりオカシな話をまくし立てる娘を見て、夏目父が疑問を口にした。



「まさか、水道代を節約したいとか言い出すんじゃないよね?」
「言わない」
「じゃあ何でその水を再利用しようとしてるわけ」
タンクに溜まった水をいちいち捨てに来るのがメンドウだから
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「水滴を取るのは楽しいんだけどなー」
「へー」
「いっぱい取れると嬉しいの」
「ほう。ところで、結露って、ほっとくとどうなるの?」 ←無知な親
「サッシの溝を伝って外に流れ出るんじゃないのかな」 ←想像だけで答える娘
「じゃあほっといたっていいじゃん」
「そうなんだけど、このワイパー使うの、楽しいんだもん」
「ワイパー使うのは楽しいけど、水を捨てるのがメンドウ、と」
「うん、そう」



という親子の会話があったのは昨夜遅くのことだった。
しかし、頭の弱い大人ふたりがどれだけ熱心に話し合ったところで、あたしの部屋で水を処理する現実的な方法を思いつくハズもなかった。



そして今朝、事件は起きた。



不思議な物音で目を覚ました。
いや、物音じゃなかったかもしれない。
何かの気配を感じたからのような気もする。

はじめは、「部屋のドアをきちんと閉めないで寝たんだな」と思った。
あたしが部屋のドアを開けっ放しで寝ると、いつもは夏目父と寝ている自堕落番長があたしの部屋に入ってくることがよくあるのだ。
それだと思った。

うっすら目を開けると、やはり、テレビの脇に自堕落番長の、毛深くて茶色い背中が見えた。
が。
その向こうに、人の脚が見えた。



その脚はもちろん一緒に暮らしているヤツのものに決まっているのだが、ソイツに声をかける前にまずあたしは、枕元にある目覚し時計に目をやった。
朝の5時40分。まだあたりは真っ暗な時間だ。
「こんなに早くに何の用だ?」・・・・と思った次の瞬間あたしは、キレながらガバ!っと起き上がって言った。





「 お う こ ら 」
(註:娘が親に言った言葉です)



あたしの声に驚いた夏目父と自堕落番長は、揃って、30センチくらい跳び上がった。
その驚きっぷりは、悪戯を見咎められた子供のよう・・・・にカワイイものでは全くなかったが、その後、自堕落番長とその相方が揃って肩をすくめ、恐る恐るこっちを向く様はちょっと面白かった。
でも、笑ってる場合じゃない。
だって夏目父の右手には、水滴ワイパーが握られていたのだから。



「おうこら」
「ちょっとやってみたかっただけだよねー」
「あ?」
「だって、「面白い面白い」って言うんだもんねー」



・・・・って、おうこら、夏目父。





番 長 じ ゃ な く 、 あ た し の 顔 見 て 喋 れ や 。





もちろんあたしはツッコミまくりたかったが、寝起きだわ呆れてるわで、なかなか言葉が出てこない。
すると、こっちの隙を見逃さなかった夏目父はそそくさと番長を抱きかかえ、「怒られちゃったねー」と、また番長に話し掛けながら部屋を出ていった。



・・・・って、おうこら、夏目父。











水 を 捨 て ろ 。





つーか。





あ た し よ り い っ ぱ い 取 る ん じ ゃ ね ー よ 。





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 久しぶりに2日連続で更新したよ、番長!