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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)

  恋文


秘密主義というわけでは決してないのだが、積極的に友人に連絡をしない不届き者なので、友人に会う時はいつも「久しぶり」になってしまう。
限られた時間では、お互いの近況を話すのが精一杯で、会わない間に「話したい」「伝えたい」と思っていたことを伝えそびれてばかりいる。
去年の夏の終わりに、彼女と長く電話で話したというのに、実家のことや片付けのこともたくさん話したはずなのに、その時もあたしは、伝えたいことを伝えられなかった。



友人の中で最も付き合いの長い彼女は、あたしが年賀状に書いた「話したいことがある」という言葉を気にかけてくれ、年明けに2回メールをくれた。
あたしが返信したのは、最初のメールを受信してから10日も経ってからだったが(我ながら酷い)、そうして久しぶりに会ってみると、彼女はあたしが返信しないことを責めるわけでもなく、「ちゃんと届いてたならいいの」とアッサリ言う。
有り難い人だ。






照明を全て、フランク・ロイド・ライトで統一しているような洒落た店でも、あたしはいつも通り生ビールを頼み、お酒が飲めない彼女はノンアルコールカクテルを頼んだ。

(ドラマ 『 結婚できない男 』 を見るまでは、存在すら知らなかった)

「・・・・で」
「ん?」
「話したいことってなあに?」

ニコニコしながら答えを待つ彼女にあたしは、「結婚するんじゃないからね」と、言わなくても判ることを敢えて言い、自分の本を差し出した。



ブログをやっていることや本を出すことになったいきさつをあたしが話す間、彼女はパラパラと本をめくっては開いたページを見て笑っていたのだが、あたしをよく知っている人に手っ取り早く状況を理解して貰うには、単行本用に書き下ろした文章を読んでもらうに限るわけで、だからあたしは「ゆっくりどうぞ」と言って、彼女がそこを読み終わるのを待つことにした。






読み終えた彼女は、「こういう場所じゃなく、ひとりっきりで読んでたら泣いてたよ」と言って顔を上げたのだが、その目は十分過ぎるほどに潤んでいて、それを見たあたしは危うく泣きそうになった。



その後、店を変えて明け方近くまで、お互いの仕事や家族や家やヒメカツオブシムシや恋愛について語り合った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

み、み、見栄張っちゃった。



コイバナをしたのは彼女だけだったぜ。



そして一昨日のこと。
思いがけず彼女から手紙が届いた。






封をきってみるとそこには、便箋2枚に渡って、本の感想と彼女の想いが書き綴られていた。






一瞬、「メールじゃノーリアクションだから手紙にしたのか」と、情緒のないことを考えたのは内緒だ。

彼女が数年に1度くれる手紙はいつでも可愛くて強くて優しいのだが、今回のは格別で、こんなあたしを否定せず、かといって過剰な賛辞が並んでいるわけでもなく、でも確実に愛情が詰まっていて、これまで貰ったどんな恋文よりも胸に響いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ま、ま、また見栄張っちゃった。



恋文なんて貰ったことなかったよ、あたし。
(本当)



じーんとしつつも、最後まで読んでしまうのがもったいなくて、同じ箇所を何度も読み返していたのだが、文章の流れは締めに向かっていた。
読み終えるのがもったいなくて、一度に何行も読んでしまわないよう、焦点の合っている文字以外は見ないようにしていたのだが、それでもとうとう最後の一行になってしまった。



が。
そこを読んだあたしは、椅子からズリ落ちそうになった。
何故ならその手紙は、文末にキラキラした目の絵がくっついた、こんな言葉で締められていたのだから。










「あのね、今度、生ガチャピン子に会わせて頂けないかしら・・・・?」
(文中、唯一の敬語がコレ)










(確かに彼女の興味をそそりそうなルックスではある)









え ? ガ チ ャ ピ ン 子 宛 の 恋 文 だ っ た の ?
(違う。と思いたい)





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