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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



春になったらライブに行く気満々の夏目父は、最近予習に忙しい。

「♪やっときぃたーんだよ あーいたかーあったでそー♪・・・・って、ねえねえ、ここんとこ、「会いたかったでそー」って聴こえるよね?「でそー」って。ね?」

・・・・耳だけで予習しろや、と文句のひとつも言いたくなるが、まあ例年これだから出来ないんでそー。そうなんでそー。

( 14曲目 『 トラベリンメンのテーマ 』 )

そういえば、2月の3連休あたりから、夏目父はウザ元気だった。
普段からだいぶオカシイ人だが、ウザ元気になった夏目父はいつもの30倍くらいメンドウで、思えば、角煮を作ったあたりがそのピークだったんじゃないかと思う。
確かにあたしは料理が出来ないけれど共同作業はもっと出来ない。
なのに、手ぇ出すどころかあたしを助手扱いにしやがる始末で、あげく、豚バラブロックの煮汁を捨てようとしたあたしに向かって、「ばか!」と言いやがった。




(良い子のみんなー。バカって言うヤツがバカなんですよぉー)



「・・・・・・・・煮汁は250ccしか使わないんだよ」
「角煮には250ccしか使わないってことでそ。他の料理に使えばいいでそ」
「・・・・・・・・他の料理って何」
「な・に・か、でそ」
「・・・・・・・・その「何か」は誰が作るの」
「だ・れ・か、でそ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「でそ」「でそ」ってウゼー。超うぜー。イラっとするー。殺意芽生えるー。



でも、どれだけイラっとしようとも、それを夏目父に表明したところで何ともならないわけで、だからあたしは黙って、煮汁を他の鍋に移した。
それを使って何を作るのか?何が作れるのか?すら判らないまま。
で、鍋ごと冷蔵庫に入れてみたのだが、冷蔵庫に変なモノ(夏目基準)が入っているというのがどーも気になって仕方ない。
そもそも、ああいう煮汁って日持ちするの?塩や醤油の味がついてりゃなんとなく想像もつくけど、豚とネギと生姜の汁なわけでしょ?そんなの、あっつう間にダメになるんじゃないの?
うー、鍋の蓋を開けて酸っぱい臭いがしてきたら嫌だなあ。
その鍋を洗うのも嫌だし。
いいや、あの鍋だって古いモンだし全然ちっとも惜しくねえや。
よぉーぅし、もし大変なことになってたら鍋ごと捨てよう・・・・って、ダメだ。
中身が入ったまま鍋を捨てちゃ、ゴミ捨てルール上問題アリだ。
うぅぅぅ........、分別メンドク・・・・(以下、自主規制。一文字だけだけど自主規制)。

最悪の事態しか考えつかないため、気持ちをスッキリさせるべく、夏目父が居ない隙にそぉーっと鍋を覗いてみた。
で、ビビった。




(これを見てビビるのはあたしだけか)



ひぃぃぃー!透明だったスープが茶色になってる!
それに、なんだこの白いのは!
脂?それとも・・・・!?



(鍋の中で起きた最悪の事態を脳内シミュレーション中)





(シミュレーション終了)






ひ ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ ー !
(うるせ)



つーか、なんでスープがこんなに茶色いんだよ!
たった1日しか放置してないのに、鍋の中で何があったんだ!



(再び、鍋の中で起きた最悪の事態を脳内シミュレーション中)





(シミュレーション終了)






ひ ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ ぃー !
(うるせえっての)



・・・・とそこに、夏目父登場。
そして、慌てて鍋を元に戻そうとするあたしを見て、言った。



「醤油とか入れといたから」
「!!!」 ←茶色は醤油か!と安心する、料理が出来ない女
「ああ、固まってる脂はとってね」
「!!!」 ←脂だったのか!と安心する、料理が出来ない女
「ちなみにそれ、ラーメンスープ」
「!!!!!!!!」




(3玉88円。ブレてるのは空腹で撮ったせいか?)





(麺を茹でるくらいはあたしも出来る)






(正しい使い方。間違った使い方はコチラから)






(固まった脂を取ってもまだこのくらい)






(ぎゅるるるるるー! ←炭水化物に反応したらしい)






(ネギを切るのもなんとか出来るが、幅3ミリ以下は無理)





いっただっきまーす!






(角煮を乗せて出来上がり。美しい盛り付けとか彩りを考えるのは出来ない)



「あ、美味い!」
「美味しいねえ」
「すごいよ、とーちゃん!」
「でそ?」
「(イラっとしつつも)こんな風に、角煮の煮汁でもう一品みたいなのって、「デキる主婦」って感じだよね」
「美味いし安いしね」
「この技をマスターすればあたしも、ステ奥になれるかも!」
「なにそれ」
「すてきな奥様」
「え゛!結婚すんの!?」
「いや、しねーけど。つーか、できねーけど」
「なんだ。まあ、奥様になれなくちゃ、そのステ奥とやらにもなれないよね」
「うん」
「っていうか、ラーメンライスを食ってるようじゃステ奥は無理」
「え?」




(ごはんはおかわり自由なので、3膳食べた)



「オッサン街道まっしぐらでそ」
「(イラっとしつつも)餃子無し、ビール無しだよ?」
「・・・・その発想がもはや女子じゃないでそ」
「(イライラっとしつつも)器は女子だよ!」




(ごちそうさまでしたー)



「器は関係ありません」
「そうですか」
「そうでそ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



誤解しようも無いと思うが念のため書いておくと。
スープを作ったのは夏目父で、あたしはそのスープの脂をとって温めて、買ってきた麺を茹でてネギを刻んだだけ。
あたしが美味しいと言ったら夏目父は満足げな表情をしていたから、「俺が作ったスープ」と思っていたに違いない。
が。
2人でラーメンを食べた翌々日、事態は急変した。



その朝リビングにいった時は、「なんかすげー具合わりぃー」と、娘の口調を真似る余裕があったのだが、時間と共に顔色が悪くなり、夜になると夏目父は「寒い」と震えだした。
熱を計ってみるとなるほど39度近くあり、さてどうしたものかと思っていると、とうとう、上から下から大変なことになった。

「んー、胃腸にくる風邪かねえ」とあたしが言った。
すると夏目父は、顎まで布団をかけたまま、「違う」と言う。
「じゃあ何だろう」と訊いた。
すると夏目父は、添い寝しにやってきた自堕落番長の鼻先に向かって、まるで内緒話でもするかのように囁いた。







「娘が作ったラーメンにや・・・・ら・・・・れ・・・・た・・・・!」








・・・・・・・・・・・・・・・・。








「おうこら」
「・・・・・・・・・・」 ←狸寝入り
「オカシなこと言うと」
「・・・・・・・・・・」 ←同
「あたし、トイレに篭城す・・・・」







「 風 邪 で そ ! 」







そうでそ、そうでそ。じゃあお大事にー。(鬼娘)






#もうすっかり元気になりましたのでご心配なくー。



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