BOOK INFOMATION
今年のメインイベントで完全燃焼した後だからか、
「年賀状さえ書けば今年も終わりだな・・・・」くらい腑抜けているのだが、ふと、メインイベントでSuper Vocalist が言っていた「ゆっくり走り続ける」という言葉を思い出して我に返り、日に30回くらい気合いを入れ直すことでようやく人並みに生活が出来ている。
長く社会人をやっていると、毎日同じ景色だけを見ているような気になり、自分の人生がやけに単調でつまらないものに思えてくることがたびたびある。
波乱万丈を望んでいないどころか、むしろ、平凡を渇望しているというのに、単調な日々は何故か時々焦燥感を生み、終いには腹の奥のほうでドス黒い感情を育てたりもする。
自分の大切な人には優しくしたいのに、小さなことで大きくイラついたりして。
そんな自分を戒めてくれるのは、あたしの場合、本を読むことだったりライブに行くことだったりして、いい本を読んだりいい映画を観たりライブを思い切り楽しんだ後は、いつもより少しだけ優しくなれる気がしている。

さて。
次に着手すべきダンボールがどれなのかは一目瞭然だが、その側面には、こんな呪いの言葉が書かれていた。

(バンダナとヒモを発見)

(×=ヒモ、○=ブラのストラップ)

窓から少し離れた場所にあったからか、土埃ではなくただの埃がてんこもりなダンボールを引き出すと、側面にはまた、中に何が入っているのかが書かれていた。
つうかまあ、大昔に自分で書いたんだろうけど。

(せめてこのくらいで、字の下手度がストップしてくれたらよかったのに)
小学校?しかも5年?
前の前の前の前の前の家に住んでた頃のじゃないか。
じゃあこのダンボールのまた奥に6年のがあったりして?
つうか、中学校のはどうした。
あたしの記憶によれば、3年間ちゃんと通ったハズだぞ。
・・・・と、頭ン中をクエスチョンマークでいっぱいにしながら開梱してみた。

パっと見、小学校時代のものは見当たらない。

(ソプラノリコーダーって中学では使わないんだっけ?)

(アルトリコーダーって中学?高校?)
ひとつひとつ出していったところで、小・中・高の卒業証書や、中学2年の途中から高校卒業まで酷使してヨレヨレになった学生カバンはあったものの、小学校時代のものはやっぱり見当たらない。

(そういえば、自分のこのカバンが大好きだった)

(でも、勉強する気が全くなさそうな薄さ)
唯一それらしいのは、やけに昭和なケースに入ったソロバンくらい。

(ケースから出してみる気は微塵もない)
そしてその下からは、高校時代のノートが2冊と、幼稚園の頃、親に買って貰いそれはもう夢中になって読んでいた絵本がわんさか出てきた。
一番好きだったのは、 『 だるまちゃんとてんぐちゃん』 。
あまりに有名な本なので説明の必要もないだろうが、敢えて書くと。
友達の「てんぐちゃん」が持っているうちわや帽子や下駄を欲しがる「だるまちゃん」が、お父さんの「だるまどん」にそれをねだるたび、「だるまどん」は物凄くたくさんの種類の物を用意してくれるのだけれど、「だるまちゃん」はいまいちピンとこない。
で、結局は、自分で工夫して、「てんぐちゃん」の持っているものによく似たうちわや帽子や下駄を手に入れていくという話。
小さい頃は多分、「だるまどん」が用意してくれる物の豊富さに興奮していたのだろうけど、ある程度の歳になってから読み返すと、「てんぐちゃん」のリアクションが目に付くようになった。
「だるまちゃん」はたとえば、「てんぐちゃん」の履いている高下駄を真似て、妹が使っていたままごとのまな板を下駄代わりにするのだが、それを見た「てんぐちゃん」はもちろん「何それ、しょぼ!」なんて言わない。
「いちいち俺の真似すんじゃねえよ」とも言わない。
もちろん、「真似したな?はい、500円」とも言わない。
いつでも、「いいものをみつけたねー」とか「すてきだね」と褒めて、「だるまちゃん」と一緒に喜んでいるのだ。
どんだけ心が広いんだよ、てんぐちゃん!!!!
子供向けの絵本だから当り前といえばそれまでだが、青かった頃のあたしは、若さゆえの苛立ちがあるたびにこれを読んで、「てんぐちゃん、すげえ・・・・」とタメイキをついたものだった。
苛立ちの種類は変わっても、狭くなった自分の心を広げる方法は、昔から変わってないらしい。
結局、小学校時代の教科書やノートは見つからず、絵本と卒業証書以外は全部捨てることにした。

古いダンボール2つを開けてみたところで、とっておきたいと思えるのはこれだけ。

20年近く前、今の家に越してきた頃のあたしが「取っておこう」と思った物の多くを捨ててしまったことになるけれど、今回充分懐かしんだからもういいや。
つうか。
ダンボールには「小学校」「教科書とノート」って書いてあったのに、結局入ってなかったなあ・・・・。
なんてことを考えながら絵本をひとつひとつ読んでみた。
するとようやく、小学生時代のものが現れた。
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