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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



夕べ酒の席で、好きな季節の話になった。
あたしの上司は、上から数字を求められる年度末から年度初めが大嫌いで、何の因果か山ん中に住むハメになっている南国生まれの同僚は、初秋から初夏までは実家に帰りたくなるらしい。
同僚の吉田は春を「世の中にやる気が溢れててウザい」と言うし、背中合わせの席にいる同僚の柳沢は、バレンタインデーとクリスマスと誕生日なんて無くなればいいのに、だそう。
そういえば、夏目父は、虫が湧き始める初夏が嫌いだし、コスメマニアな女友達は汗で化粧が崩れるから真夏が嫌いだと言っていた。
で、あたしはというと。
暑いのも寒いのも平気だし、年末進行の仕事が詰まり始める今の慌しさにもとっくに慣れた。
桜を見ながら酒を呑むのは好きだけれど春が大好き!というわけでもないし、クリスマスや誕生日は随分前からあたしにとっては平日だ。
つまり。
嫌いな季節もないが、好きな季節も特にない。
というか。
大人になってからは、季節を好き嫌いで括ることなく過ごしてきた。
通勤時間が短くて、空調設備の整ったオフィスで仕事をし、家では部屋に閉じこもって何もせずに過ごしているから、四季を感じる神経が鈍くなったんだろうと思う。
ところが、そんなだったあたしがここ1年ばかり、家でやたら季節を意識している。



1週間ほど前のこと、4畳半の部屋にあるベランダに出てみると、




(斜めったまま育った)



鉢の隅のほうから2本だけ生え、不恰好ながらも約4ヶ月咲き続けた日々草の葉が黄色くなってきた。




(なんか健気。すげえ健気)



過去ログを見ると、去年は12月半ばくらいに全滅したらしいから、今年もそろそろなんだろう。
で、外じゃもう寒いだろうから部屋の中に入れようかなと思い鉢を持ち上げた。
すると。
見慣れないものが目に入った。






視力が悪いのに裸眼でいるせいでまた、「青虫だ!」とテンションが上がったのだが(オカシイ)、指先でツンツンした感触は青虫のそれではなく、調べてみると、どうやらこの中に種が入っているらしい。




(こんなのがわんさか突き出ている)



せっかく種ができたのだから、採らない手はない。
知らない間に房が開いて種が飛び散ってしまわないよう、日々草の鉢を部屋の中に入れることにした。




(枯れたところをチョン切ったら貧相になったドラセナ)



花を愛でる気が全くなかったあたしが、日々草を種から育て花を咲かせまた種を採ることになるなんて思ってもみなかった。
いや、それ以前に。
直径15~6センチの世界に季節を感じる極々普通の生活が結構楽しいということすら知らなかった。





夏が好きだ、冬が好きだと同僚たちが盛り上がっている中、この手のことを真剣に考えるのがメンドウなあたしは、「好きな季節も嫌いな季節もない」と答えた。
すると、上司や同僚たちは、まるであたしがそこに居ないかのように喋り始めた。

吉田 「まあ、夏が好き!っつう元気キャラでもないもんな」
柳沢 「1年365日不機嫌そうだから春夏秋冬全部が嫌いなのかもしれませんよ」
上司 「不機嫌そうじゃなくて実際不機嫌だろうよ。お前が地雷踏みまくるから」
南国 「っつうことは、柳沢に会わないでいられるから休日だけが好きとか?」
柳沢 「ヒドイっすー」
南国 「ところでアイツの趣味って何?」
上司&吉田&柳沢 「麻雀」
南国 「それ以外で。季節感のある趣味はないのか?」
上司 「麻雀以外に趣味はないだろう」
吉田 「夏目、骨の髄までオッサンですからねえ」
南国 「スカート履いてんのにね」
吉田 「女装癖のあるオッサンだから」
柳沢 「つまり変態ってことですね」
上司 「そうなるなあ」
南国 「じゃあ、春が好きなんじゃね?」
柳沢 「どうしてですか?」
南国 「変態なオッサンと言えばトレンチコート着て御開帳だろ。アレって春じゃね?」
柳沢 「なるほど!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





おうこら。調子こいてんじゃねえぞ、柳沢。



吉田 「あっ!思い出した!」
南国 「なになに?」
吉田 「夏目は冬が嫌いだ!
南国 「マジで?」
吉田 「うん。有り金全部賭けてもいい
上司 「何で」
南国 「寒くて御開帳できないからか?」
柳沢 「なるほど!」
吉田 「それも理由のひとつかもしれねえけど」
南国 「他にも理由が?あ!女の子が厚着になるから!?」
柳沢 「じゃあ真夏も好きでしょうねえ、夏目さん」
上司 「そういう意味なら俺も真夏が好きだ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





どさくさに紛れて何カミングアウトしてんだよ、部長。



そろそろ話を止めに入ろうかとも思ったが、どうして吉田の中であたしは冬が嫌いってことになっているのか、あたし自身全く見当がつかないから先が気になった。
何でだ?吉田。



南国 「で、吉田さん。それ以外の理由って何」
柳沢 「ものすっごい女子な理由だったりして!」
上司 「あり得ねえだろ」
南国 「あり得ないっスね」
吉田 「あのね」
南国 「うん」
吉田 「この間、昼休みにスポーツ新聞読みながらアイツ」
上司 「うん」
吉田 「「(プロ)野球がない時期は、ニュースと新聞がつまんねえ」って呟いてたんスよ」
南国 「・・・・・・・・結局オッサンだな」
柳沢 「そうっスね・・・・」
上司 「知ってたけどな・・・・」
吉田 「ええ・・・・」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そんなわけで、あたしは冬が嫌いということになったのだが、今朝になって気づいた。
冬が嫌いなワケないよ。
だって、こんな楽しいモンがあるんだもの。






(今年初。つうか、長らくブラインドを開けていなかった)






(いいねえ、水滴)






(が、不作)




テンションあがるわー。
結露サイコー!
水滴ワイパー、ばんざーい。
あ、そうだ、吉田。



有 り 金 全 部 、 没 収 な 。



それと、他の3人。



放 課 後 、 体 育 館 の 裏 な 。
(どこの!)





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