BOOK INFOMATION
4畳半の部屋で雨漏りした痕跡(カビ付き)を見つけたところまでは良かったのだが・・・・って、これが全然ちっともひとっつも良くない。
何しろあたしは、雨漏りしてダメになった壁をどうやって直すのかを知らないし、そもそも、DIYどころか、住まいに関することは何にも知らない。
なーんにも知らないまま呑気に歳だけはくっちまったのだ。
たとえば、料理上手な女友達はお店で美味しいものに出合うと、それを家で再現すべく、レシピを考えながら食べることがあるらしいが、料理が出来ないあたしは自分で作ることを想定しながら食事をしたことは一度もない。
後になってその料理のことを話すと、微細に記憶しているのはもちろん女友達で、あたしはといえば、「すげー美味かった」というアホみたいな記憶しかなかったりする。
その代わりあたしは、行ったことがあるないに係わらず、
我が街中心部にあるフリー雀荘の店名と電話番号をソラで言える。
(「あたしね、漢検一級持ってんだー」と同じレベルの自慢をしているつもりです)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
各 店 の レ ー ト も 知 っ て い る 。
(付け加える意味なし)
(「あたしね、漢検一級持ってんだー」と同じレベルの自慢をしているつもりです)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
各 店 の レ ー ト も 知 っ て い る 。
(付け加える意味なし)
つ、つまり。
興味のあることや必要な情報は自然にインプットされるが、自分にとって無用な情報はハナから気にも留めないのが普通だ。と思う。
たとえばその女友達は、自分が勤めてる場所から一番近い雀荘がどこかなんて考えたこともないだろうし、「キミの会社から一番近い雀荘はマナーを知らないくせに態度がデカい若者が多くてイラっとするけどソイツらは判りやすい打ち方をするから勝率はいいよ。ただね、点5」と教えたところで、彼女の頭には、「麻雀好きのアホな友達がなんか言ってた。目がマジで怖かった」という記憶しか残らないだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
すげー関係ない話を長々書いている気がしてきたが続ける。
つまり、これまであたしにとって住まいに関する大抵のことは料理と同じで、興味もないし知る必要もなかったし、知らないからといってそれで困ることもあまりなかった。
だから。
住まいに関することでこれほど頭ん中が感嘆符と疑問符で埋め尽くされる日がくるなんて思ってもみなかったのだ。
マンションの壁の構造が全く理解できない。
その道のプロじゃなくとも、たとえば家を建てたりリフォームした経験でもあればこんなことで手が止まったりはしないのかもしれないが、あたしにとっては全てが未知の領域だった。
たとえば。
自然に剥がれてしまった壁紙をさらにひっぱると、こんな風になった。

(コンセントカバーは後にしっかり外すことになる)
知っている人なら「これに何の不思議が?」っつうカンジかもしれないが、あたしの頭の中はビックリしまくりだ。
特にここ。
だって、なんなのこれ。


去年の春くらいまであたしは、壁紙のすぐ下には石膏ボードやベニヤ板があると思っていたのだが、壁紙を選ぶ段になって初めて、壁紙のすぐ下には「裏紙」なるものあることを知った。
つまり、ひとつ賢くなってからこの作業に挑んでいる。(夏目基準)
だから、白く残ってるのが裏紙で、茶色っぽいところが石膏ボードなんだろうと思った。
そこまでは判る。
合ってるか合ってないかは置いといて、納得がいく。
でも、そうなると、そのどっちでもない色をしたここは何。

が、開始からわずか数分で手を止めてちゃ、一向に終わりはこない。
だから、疑問は疑問のままにしてとりあえず先に進むことにしたのだが、視線を上に移すと、更なる疑問が湧いてきた。
マンションの天井にコンクリートの梁があるのは不思議じゃないのだが、我が家の4畳半の部屋には一部、斜めっている壁がある。
壁が斜めっていること自体は、マンションの外形が既にそうだから不思議ではない。
あたしが不思議なのは、
斜めの壁は、何で留まってるのか?ということ。


釘なのかしら。
それとも、糊とかボンドとかごはん粒とかの粘着系?(ひとつ余計)
いや、でもさ。
斜めってる壁と垂直の壁とが繋がってる部分、湿気のせいか斜めってる壁が浮いちゃってるわけだけど、

なんとなく斜めってる壁の向こうには、空間がありそうな気がするんだよねえ。

それとそれと!
斜めってる壁の壁紙もベリベリーっって剥がしてみたんだけどさ、

雨漏ってダメになった箇所だけ板を張り替えるのってアリなのかしら。

それとも上から下まで壁一面張り替えないとダメ?
あ、つうか、またビックリ。
こ の 、 ボ ー ル 紙 み た い な 色 の と こ は 何 。


という具合に、壁紙を少し剥がしてみただけで、次から次へと疑問が湧いてくるのである。
ちなみに。
ケータイのカメラで撮ったこれらの画像のタイムスタンプによると、あたしが雨漏りに気づき壁紙をベリベリやって驚いたり不思議がっていたのは、2008年9月3日深夜のことらしい。
さて。
2008年9月3日に次々と湧いたこの疑問を手っ取り早く解決する術があたしにはある。
翌日普通に会社に行って自分の席に座ったら、クルっと後ろを振り向いて、元内装屋の同僚・柳沢に声をかけりゃあいいだけの話である。
が、あたしはそれをしなかった。
なぜならもちろん、
柳沢とプライベートな話をするのがとにかくメンドウだからである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
我ながら「なんつう理由だ」とは思うのだが、あたしにとって柳沢は、喋ることそのものもメンドウなら、共通の話題を持ってしまった後の会社生活までメンドウになりそうな相手なんである。
というわけで。
背後に柳沢の気配を感じながらもあたしは、「DIYリフォームの本を買って足りない知識をネットで補うのが一番ラクかなあ」と思い直した。
あ、でも待てよ。
あたしには、頼れる友がいるじゃないか。
柳沢よりずっとラクに訊ける友が。

(サヨリの刺身にテンションが上がる女。アラフォー・独身・彼氏ナシ)
居酒屋で刺身をつまみながら、大工な友人にざっくり現状を説明をする。
「なるほどね。なんとなくイメージは湧いたけど」
「うん」
「それはさ、俺が家に行って、下地作りまでやるってのはダメなの?」
「ダメなの」(即答)
「なんで」
「自分でやってみたいから」
「だって、壁紙貼るのをやりたいんでしょ?」
「最初はそうだったけど、今はいつまでかかってもいいから全部ひとりでやりたい。地味にコツコツと」
「しかしまあ、とことんアレだね」
「ん?」
「独り身街道まっしぐらだね」
「・・・・・・・・・・おかげさまで」
「まあいいや。一応ざっと説明するけどさ」
「おお」
「酒入ってんだから、今説明したこと忘れる可能性大でしょ」
「う、うん」
「だから後でメールも送るよ」
「ありがたいわー」
「あ、でもさ」
「うん」
「俺もいい加減呑んでっから、メール送るの忘れるかもしれん」
「じゃあ、「メールくれ」っていうメールをあたしが送るよ」
「わかった」
・・・・というヘタレな会話の後、一通り手順を説明してくれた大工な友人はグラスの焼酎を呑み干して続けた。
「壁紙剥がすのも結構メンドウだったろ?土日にやったの?」
「ううん。平日の夜」
「ああ、金曜か」
「なんで金曜よ」
「え。昨日やったんじゃないの?」 ※この日は土曜
「違うよ」
「じゃあ一昨日?」
「だから何でそうなるの」
「はぁ?」
「なに」
「お前、壁紙剥がし始めて疑問が湧いたから俺に連絡してきたんだろ?」
「酔ってんの?呑むぞって連絡してきたの、そっちじゃん」
「あ、そっか。え?」
「だからなに」
「つーかお前!」
「はい」
「壁紙剥がしたのいつ!」
「忘れたよ。つーかなんで?剥がしたらすぐに次のを貼んないとダメなの?」
「いやそうじゃなくて!」
「じゃあなに」
「その切実な疑問を、だ」
「うん」
「 何 ヶ 月 放 置 し た ん だ よ 、 お 前 」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
か れ こ れ 5 ヶ 月 に な り ま す が 何 か 。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
か れ こ れ 5 ヶ 月 に な り ま す が 何 か 。
そう。
大工な友人とのこの会話はつい最近、2009年1月下旬に交わされたものである。
それまでの間、4畳半の壁はこのままの状態。

(これで何の問題が)
大工の友人は、「あれ?って思ったらすぐに連絡くれりゃあいいじゃない」と言った。
念のために書いておくと、「俺を頼ってくれ」とか、「キミのピンチには俺が駆け付けるよ!」とかいう色っぽい話では全くない。
大工な友人は、あたしがこんな状態を5ヶ月も放置したことが信じられないという。
20余年の付き合いなのに今更何言ってんだ。
・・・・と思わないこともなかったが、大工な友人はあたしが自分の汚部屋を十数年も放置していたことは知らないし、「5ヶ月なんて短いほうだよ!」と力説するようなことでもない。
「確かに。壁紙剥がした時はまだ暑かったもんなあ」とあたしが呟くと、大工な友人は安堵したように「だろー」と言った。
だねー。
そんなやり取りがあった翌日、大工な友人からメールがきた。
タイトルは「また5ヶ月後?」。
それだけで中に何が書かれているか判ってしまったが、でも開封した。
本文は案の定、
「 「メールくれ」っていうメール、いつくれんの? 」
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柳 沢 と は 違 う 方 向 で メ ン ド ク セ 。
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柳 沢 と は 違 う 方 向 で メ ン ド ク セ 。
兎にも角にも。
こうして、4畳半の壁再生プロジェクトは動き出した。
アドバイザーに不足はない。
これまで通り、敵はあたし自身。
と、4畳半の寒さのみ。
つうわけで再始動初日は完全防備をして壁に挑んだのだった。
(続く)
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