BOOK INFOMATION

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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



今年80歳になる夏目父方の伯母が携帯電話を持つようになったのは3年ほど前。
公衆電話が減り、出先で電話をかけるのが難儀になったので、外出好きな伯母のためにその娘が買ってあげたのが最初だった。
持ってすぐの頃は電話を受けることにすらだいぶ手間取っていたのだが、1年くらいでそれがスムーズに出来るようになり、やがて、ケータイのカメラで庭の草木や飼い猫や孫やひ孫や伯父を撮るようになった。
それでも暫くは、目の前にいる人に自分が撮った画像を見せるだけに留まっていたのだが、カメラを使うようになってからの伯母はそれまでとは比べ物にならないくらい携帯電話に興味が湧いたようで、電話で話していて、ケータイの操作について質問されることも増えた。
そして、「この間、猫の可愛い寝姿撮ったから、今度こっちに来たときに見せるね」というような話をすることが増えたある日、あたしはかなりの覚悟をもって伯母に、「メール、できるようになってみる?」と提案した。
去年、 伯母78歳の春のことである。

夏目父で散々そんな経験をしてきたからか、「どうせ覚えられないんだもの教えるだけ無駄」とか「同じこと何回も訊かれるからうんざり」とかいうことを思わないわけでもない。
そもそも、ケータイに限ったことではなく、年寄りが電子機器の使い方を覚えるのは容易なことではないし、あたしは人にモノを教えるのが致命的に下手くそだ。
ただ、あたしが夏目父や伯母に教えてあげられることなんて電子機器の操作方法くらいしかないわけで、そのくらい出来なくてどうするとも思うし、「年寄りだから」という理由でチャレンジする気にもならない人も多い事に彼らは果敢に挑もうとしているわけで、その意欲を、「メンドクセ」というだけの理由で萎えさせる気には到底なれない。
加えて、夏目父に限っていえば。
もしあたしが教えなかったら、



「覚えたいんだけど、娘が教えてくれないんだよねー。イジワルだから」



と平気で吹聴しやがるので(実話)、どんだけ時間がかかっても、本人が「もういい」と言うまで教えたほうがマシだと思っている。

そんなわけであたしは去年の春から伯母に、テキストのみのメール作成から送信までと、画像付きメールの送り方を教え始めた。
遠くで暮らしている伯母と会うのは年に1、2回だから、教えるのは専ら自宅の電話。
つまり、伯母が実際どんな操作をしているのかも液晶画面がどんなことになっているかも見られない。
しかも、状況を実況するのが78歳の伯母だから要領を得ない。
が、幸い、何度も同じことを訊かれることへの耐性は夏目父と暮らす中で備わっていたし、何よりもあたしは、78歳の伯母が「メールの仕方を覚えたい」と思ったことに感動し続けていたから、伯母が使っている機種の取説をWebで見ながら、ゆっくりじっくり手順を教え続けた。



「あれ?これ、前も訊いたっけ?」
「うん。でも何回訊いてもいいよ」
「やっぱり歳なんだねえ。何回教えてもらっても憶えられないもの」
「訊いたかもしれない、ってことは覚えてたじゃない」
「でもねえ・・・・」
「何回も続けてれば覚えるよ」
「そうかしら」
「覚えられなかったら訊けばいい」
「迷惑かけてごめんねえ」
「いや、全然」
「あんただって、こんな年寄りの相手するよりは・・・・あっ!」(わざとらしく)
「あ゛?」



「ごめんごめん。相手いないんだもんね、ごめんごめん」
(もちろん棒読みで)



・・・・という会話をしたことが何度もあるのは憶えてないらしいが、それでも、たくさん訊いてたくさん間違えて、妹や娘に「無理なんだって」と言われても諦めずに続けた結果、今では遠方に住んでいる孫たちや全国に散らばっている姪や甥に写メを送れるようになっている。
勿論パーフェクトではない。
誤字脱字は普通にあるし、本文も添付画像もないメールが送られてきたことも1度や2度ではない。
11度ある。 ←数えた
が、そんな小さいことはどうでもいいのだ。
空メールが送られてきてから暫くして届くメールは決まって微笑ましく、必ずどこかに進歩の跡が垣間見れるのだから。



伯母は言う。
「79歳にもなってこんな楽しい経験ができるとは思わなかったよ」と。

伯母は言う。
「出来ないと思ってたことが出来る嬉しさを味わったのは物凄く久しぶりだよ」と。

伯母は言う。
「自分で(マニュアルを見て)覚えることも大切だけど、判らなかったら訊くことも大切なんだね」と。



判らなかったら訊くことも大切なんだね、とな。



つうわけで、ホームセンターのルーキーくん。
約束の日から5日経ったのに、ブツが届かないどころか連絡すらないことは大して気にしちゃいないから安心しろ。
怒鳴り込むつもりもまだないぞ。
でもね。



男いねーわ友達少ねーわだから、GWは超ヒマなわけ。



だから、GW前に連絡さえあれば不問に付すが、もしGWに揃わなかったら、





泣 く よ 、 あ た し 。
(寂しくて)





・・・・と、ここでちょっと真面目な話をすると。
L字のとデカいのを頼んだのに、形も枚数も合ってないもんが納品された時点であたしは、「新人クン、メモを失くしたんだな」と思った。
まあそれならそれで、周囲の先輩なりに話をして指示を仰げばいいだけなのだが、年齢や勤務年数に関係なく、判らないことを訊いたり確認したりしない人はいるわけで、それをしない人の気持ちは全く理解できないけれど驚きはしない。
ただ。
ネームプレートにデカデカと「研修中」と書くのなら、客に「研修中なのね」と思わせるだけじゃなく、店側も研修生の仕事内容を逐一チェックして欲しい。
というか、チェックすべきだろう。
新人が入ってくれば一時的に先輩達の仕事は増えるもので、仕事の全体像が見えていないうちは新人クンも、「何がわからないかがわからない」状態だろうし、10年前から上司に「新人教育に不向きな性格」と言われ続けているあたしでさえも、新人クンの手が止まったり目が泳いだりしてたら声かけるぞ。



渋々だけど。



社会人歴が長い身としては新人クンの仕事っぷりよりも、新人クンの仕事をフォローできない先輩らの仕事っぷりのほうがよほど解せない。

ちなみに前述の伯母にはいつも、「「わかんない」と思ったら、何時でもいいから電話してみて。寝てる時や電話に出られない時は無理して出たりしないから、こっちのことは気にしないでかけてみて」と言っていたのだが、それでも伯母は随分気も遣っていたし遠慮もしていた。
身内でもそうなのだから、他人なら尚更だ。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ということわざがあるが、訊けない雰囲気を醸し出すのだって充分恥ずかしい。

なんてことを延々考えていても石膏ボードは届きそうにないので、新人クンがメモを失くしたという前提で、再度裁断してもらうサイズを計り直し、明日またホームセンターに出向くことに決めた。
どーか明日こそはちゃんと入手できますよーに。(祈)



で、話は変わるが先日、トイレから出てきた夏目父が、「トイレットペーパー最後だった」と呟いた。



珍 し い 。



前にも書いたが夏目父は、トイレットペーパーを使い切ったら補充するとかいうこととは無縁の世界で生きているので、使い切ったことをあたしに報せてくれたことなどない。
報せるだけなのだから哀川翔ンち的に半殺しなのは変わりないのだが、夏目父が補充するなんてことはハナから期待しちゃいないわけで、ただ、使い切ったことすら意識してないっぽいこれまでを思えば、「なくなったよ」と報せてくれるのはかなり有難い。

「はい、補充しときます」
「ところで、トイレットペーパーの芯って何ゴミ?」
「紙ゴミです」
「紙ゴミ?そんなのがあるんだ」
「・・・・ええ」
「ギュっと潰すの?」
「ううん。開いて出すの」




昨年10月下旬以来、ずっとこうしてきた)



が、それを聞いた夏目父が驚いて放った言葉であたしは、夏目父の300倍くらい驚くことになった。



「えっ?いちいちハサミで切るの???メンドクサいねー」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





なんですと?






(これをハサミで・・・・?)




(ハサミで?)




(あらまあ)




(か、簡単)



どうして最初にクルクルやって開いてしまったのでそ?(知らね)



夏目父の口から出た「ハサミ」という言葉に驚いて暫し絶句していると、異変に気づいた夏目父が不思議そうに訊いてきた。

「あれ?ハサミで切るんじゃな・・・・」



「 も ち ろ ん ハ サ ミ で 切 る ん だ よ 」
(堂々と)



「俺が教えるまで手でクルクルやってたんだってよー。アホでしょう、うちの娘」と近しい人に吹聴されるから、まさか半年も気づかなかったなんて言えない。
絶対にっ。





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 あたしもちょうどいまそれが最後にさしかかってます、カナさん。


3月初旬から歯列矯正を始めた。
歯科医に勧められ始めてはみたもののこれが案外大変で、いや普通は、引っ張られている歯の痛みや、器具が当たって口内炎が出来たりことが大変らしいのだが、痛みに鈍いあたしに限ってそれはなく、じゃあ何が大変なのかというと、毎週歯医者に通うこと自体がなんだか大変。
治療は毎週土曜日、2時間半程度で済むというのに、そのたった2時間半ぽっちのために生活リズム全体が崩れ始めてきている。

一番の問題は、土曜日に歯医者に行く予定があると他の予定が一切入れられないこと。
なんでそんなことになるのかは巧く説明できないのだが、歯医者に行くまでは「○時から歯医者だ」と思って他のことが手につかず、歯医者に行って帰ってくれば今度は大仕事を終えた気分になり、結局ほかのことを何もせずに土曜日が終わってしまう。
歯医者に対する恐怖心は皆無に等しいので、どうやら、「毎週決まった時間に用事ができた」というただそれだけのことで生活リズムが小さく崩れているらしい。
長いこと同じ家に住み同じ会社に勤め、子供も産まず結婚もせずに暮らしていると、生活リズムの変化に順応する能力が衰えるのかもしれん。
つうか。



土曜日に雀荘に行けないのが、なんかすげえ辛ぇ。
(行っても辛いじゃん、つうツッコミ不可)



そんなギクシャクした日々が1ヶ月以上続いた先週土曜日、破壊しただけの4畳半の壁の続きをやりたい欲がようやく湧いてきたので、結構な決意で歯医者に行く前にホームセンターへ行き、石膏ボードやら諸々を買うことに成功した。
が。



思いがけないところで躓いた。



諸悪の根源は、あたしが意を決したのが4月に入ってからだった、ということにある気がする。



ホームセンターの売り場には大して種類があるわけでもないから、厚さと、裁断して貰うサイズさえ間違わなければ、石膏ボードを買うこと自体は簡単だ。
ちなみに、あたしが買った石膏ボードは2枚で、1枚は910mm×1820mmという元サイズから幅を数センチ切り落として貰ったものと、もう1枚は、天井近い斜めっている箇所用にL字型のもの。
一応サイズを測りメモった紙を持って行ったし、しかも、L字型のは図解付き。
あたしが描いた図は当然へなちょこだったが、それでも、間違えるほうが難しいんじゃね?というような簡単な形である。






そのメモを手に持ってあたしは、売り場付近にいた店員に声をかけた。

「石膏ボードの裁断をお願いしたいんですがー」
あ、はいっっっっっ!

この元気なお返事で判るように、あたしが声をかけた店員は新人クン。
胸につけたネームプレートには赤く太いフォントで、



研 修 中



と書いてある。
とはいえ、新人なら、判らないことがあれば先輩に訊くんだろうし、何よりあたしのオーダーはとても簡単なもの。
石膏ボードをちょちょいと切って配達してくれりゃあいいだけである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
えーっと。
あたしは今、「石膏ボードの裁断をお願いしたい」って言ったよな。
向こうは元気よく「はいっ!」って言ったよな。



じゃあ今のこの沈黙は何待ち?



ああ、そうか。
新人クンはあたしが、何ミリのボードでどういう裁断をするのかを言うのを待ってるんだね。
つうわけで、微妙な間を挟んだ後あたしがメモを差し出しながら石膏ボードの裁断を頼むと、新人クンはそれをじっと見ながら、「お持ち帰りですか?」と訊いてきた。

「配達をお願いします」
「あっ、配達ですね」
「はい。今日中の配達って可能なんでしょうか?」
「あっ、今日中ですね」
「ええ」
「あっ、そうですね」

物凄くどうでもいい話だが。
あたしはどうもこの、「~ですね」という言葉の結び方をされると不安になるタチで、実際この時も、「配達ですね?」「今日中ですね?」と訊き返されているのかと思っていちいち返事をしていたのだがそういう意図ではなかったらしく、最後の「そうですね」にいたってはその後の流れを鑑みるとどうやら、「今日中の配達は可能です」という意味だったらしい。
新人クンの意図することが通じないのが世界であたしだけだとしても、やっぱりあたしは、「今日中の配達ご希望ですね?はい、可能です」とハッキリ言い切ってくれる人に接客して貰いたい。



その後、配達先の住所などを所定の用紙に書き込んで、石膏ボード代330円(安っ!)を含む代金を支払った。
が、そういえば裁断サイズはあのメモだけで判るのだろうか?と不安になり、あたしが描いたへなちょこメモを手にしている新人クンに訊いてみた。

「そのメモで判りますか?」

すると新人クンは、それまでの受け答えと同じように、「あっ、判りますね」と言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ま、ま、まあ、判ると言うんだもの、あたしがそれ以上念を押すまでもないのだろう。



ホームセンターを出て歯医者へ行き、睡魔と闘い、睡魔に負け、歯医者の先生に起こされるもすぐまた寝る、といういつも通りの展開で2時間半が過ぎ、眠くて眠くて仕方がない状態で帰宅した。
が。
約束の時間より早く配達されたらしいブツを玄関の前で見つけた途端、睡魔がぶっ飛んだ。









L字型になってねーし。



つうか。



910mm×1820mm(デカいほう)のがねーし。



やっぱり判ってなかったのかなあ。
それとも単なる配達先間違い?
と思いながらホームセンターに電話し、こっちの都合で正しいブツは翌土曜日(つまり今日)の同時間に届けてもらうことにした。
で、つい数時間前。
睡魔と闘い睡魔に負け、歯医者の先生と歯科助手のおねえちゃんに起こされるもまた寝て・・・・と、先週より更に眠くて眠くて仕方がない状態で帰宅した。
で。
また、ぶっ飛んだ。



先週配達されたものを返さないといけないから、「配達前に電話いれますね」と言っていたのに電話ナシ。
なのに玄関にブツが置かれていた。
先週間違った1枚を引き取らなかったわけだから、うちに配達された石膏ボードが計3枚になってしまったのは理解できるが、









L字のもなけりゃ、デカいのもなし。





つうか。




先週間違えて配送したのを更に2枚追加してどうするよ、新人クン。






(3枚重ねて立てかけてみるとピッタリ揃い、脱力した)



つうわけで。
たった330円の物を納品するだけで既に2回も間違っている新人クンだが、今のところあたしには、店舗の新人教育がどーのと苦言を呈するつもりもなければ、怒鳴り込む気もない。

ちなみに、次回納品は明日夕刻。
L字型の石膏ボードと、ほぼフルサイズの石膏ボードを持ってきてくれたらヨシとしよう。
でも。





3 度 目 は ね え か ら 覚 悟 し ろ よ 、 新 人 。
(思いっきり野太い声で)


始まりは2007年、部屋を片付けている時に見つけた種だった。
今になって思い出したのだがこの種は、モスバーガーに行ったら「今日はモスの日です」とか言われて貰った栽培セットに入ってたもので、オフィシャルサイトによるとどうやらあたしはそれを、平成18年3月12日に入手したらしい。
2008年に芽が出たのは、2007年に咲いた花から種がこぼれていたからで、つまりあたしは2年連続その花を見ているけれど、種から育てようと意識したことがない。






さて。
寒さに負けず青々としたまま年を越した日々草だったが、2月初旬には水を吸わなくなり、2月下旬にはとうとう葉が萎れてきた。






一年草だと知ってはいるものの、ひょっとするとひょっとするかもしれないと期待もしていたので、萎れてきた時は少しがっかりした。
が、今回は種が採れていた。




(結婚線はありません)



つうわけで、ただの枯草となってしまった日々草を引っこ抜いて、








初めてちゃんと種から育ててみることにした。
といっても、あたしが種を蒔くのは多分、10代後半に枝豆を育てた時以来で、どんな風にすればいいのかがイマイチぴんとこない。
ただ、少なくとも我が家の日々草はどんだけ放置しても2年連続芽が出て花が咲いているわけで、だから今年も思いっきり手を抜いて育ててみることにした。

早速、枯れた日々草を引っこ抜いた。
するともちろん、鉢にある土がそのまんま抜けたのだが、根の張りっぷりがすさまじくて、一瞬、「鉢ごと捨てちまおうか」という考えが頭を過ぎる。




(見方によっては、苦手な人がいそうなグロさ)



が、土を買ってくるのもメンドウなので、根気よく根を取り除こうとしたのだが、






すぐに飽きたので、根っこがわんさか残ったままでヨシとする。






土がどーんと減ったので、夏目父が南側のベランダで何かを育てるために買った腐葉土をちょびっと拝借し、根っこ混じりの土と混ぜてみた。







溢れんばかりだけど、そこは気にせずに。



で、この、小さい鉢いっぱいの土に、




(結婚線がないことを気にしなかった結果がアラフォー独身か)





1 3 個 も の 種 を ば ら 蒔 い て み る 。






(蒔いただけ。埋めてはいない)





つ、つうわけで、種まき終了。





誰が何と言おうが終了。



種まきに限ったことではなく、何事にも正解や正攻法はあるんだろうが、今はまだ、「芽が出て伸びて葉が出て花が咲いたら儲けモン」くらい軽い気持ちなので、正攻法はもっと欲が出てからでいいんじゃないかと思っている。
が、なんとなく、ちゃんと芽が出てちゃんと花が咲くんじゃないかと高を括ってもいる。



4畳半の部屋にある小さなベランダに植木鉢を置き、ついでに、枯れ葉を掃き集めた。




(片付け始めてから初めての掃き掃除)



・・・・が、どーしても疑問が湧いてしまう。




(2007年の日々草)




(2008年の日々草)





今 年 の 日 々 草 は 何 色 だ ?





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 ピンク!に39,007円。


仕事が忙しくなると、あたしの上司はきまって風邪をひくのだが、同僚の南国は寝坊する夢ばかり見るらしい。
同僚の柳沢は明治のストロベリーチョコが食べたくなると言うし、吉田はボーリングをしたくなるそうだ。
で、あたしはというと。
上司の風邪をもらうもんか!という気概からか、体力をつけようと、やたらたくさん食うようになる。
ストレスで過食に走るような繊細さは持ち合わせていないので、「こんな時に風邪でもひいたら大変じゃ。よぉーぅし!食って体力つけるぞぉー!」と確信して食いまくっているのだが、これまでたびたび書いているようにあたしは、そうじゃなくても普段から食事量が成人男子の1.5倍くらいだし(本当)、ここ15年くらいは風邪をひいたことがない。
つまり、冷静に考えればたくさん食う必要は全くないのだが、ここ数週間の我が家の米消費量を鑑みると、どうやら仕事が忙しくなった時にあたしがたくさん食べるのは、親を真似ているだけのことらしい。



超小企業といえども年度初めは忙しいようで、なんちゃって社長である夏目父とはここ暫く、会話らしい会話をしていない。
これが夫婦なら、「もう10日もまともに話をしてないのよ!」なんつう不満が噴出するのかもしれないが、いい歳した娘が、同居している実の親と1週間や2週間や3週間、大して話をしなくても何ら支障はないし、会話はなくても互いの様子はわかるから、「たらふくメシが食えているということは元気なんだろう」とかいうことは把握できている。
が。
あたしが何も言わなければ、すかさず好き放題やりやがるのが夏目父である。



今朝のこと。
起きてすぐあたしがリビングへ行くと、夏目父は、「おはよーーーっ!」と無駄に元気な挨拶をしたそのままの勢いで「今日もよろしくっ!」と言い、まるで逃げるかのように仕事に出かけていった。
あたしが、「またやりやがったな」とツッコむ隙を見せることなく、脱兎のごとく家を出た。
ちなみに。
夏目父が能天気に「よろしく!」と言ったのは4月1日の夜が最初で、それから今日まで朝と晩、必ず言っている。
つまり、この8日間で15回、そう言っている。
この「よろしく!」は、「俺がシンクに置いたモンを洗ってちょーだいね。あ、お前が出勤途中に捨ててるヤツもあるからね」っつう意味なのだが。
食器や箸を洗うのはもちろん全然構わない。
それはいい。
朝炊いたはずの4合のごはんが、夜になるとすっからかんになっているのも、痩せの大食いを親にもつ娘の宿命と思って文句は言わないことにしたし。
が、これだけは許せんのだよ、オッサン。
いいかぃ?
シツコイと思うだろうが、何度でも言うからな?
耳の穴かっぽじってよぉーく聞けよ。




8 日 間 で 3 0 パ ッ ク も 納 豆 食 う な 。






(1パック78円もする高級納豆(夏目基準)を1食で2パック食われた、の図)





あ る だ け 食 う の は 、 マ ジ で や め れ 。





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 Pサマのブログを見て今日が水曜日だと気づく社会人。あ、地味ブログも更新しとります。


この季節になるといつも、随分昔に別れた男のことを思い出してしまう。
その男と交わした会話まで鮮明に思い出してしまう。



あたしが長く家を留守にすることになったんだか何だか理由はすっかり忘れたが、1ヶ月ばかり男に自堕落番長(ウチの猫)を預けたことがある。
根っからの猫好きだった男は喜んで、毎日あたしに電話で自堕落番長の様子を教えてくれていたのだが、ある日のこと、あたしが電話に出ると男は少し浮かない声で話し出した。

「あのさ、トラ(仮名)って2本足で歩くことある?」
「エサか草かボールで釣ればやるよ」
「ああそうか。でも何かで釣らなきゃやらないよねえ・・・・?」
「うん。どして?」
「昨日までは、たまたまだと思ってたんだけど」
「うん」
「今日で3回目だからさあ」
「うん」
「あのね、今日俺が風呂につかってたらトラ(仮名)がきて、最初は洗い場に座ってたんだけど、そのうち立ち上がってバスタブのふちに前足かけたんだよ。でもまあ、それはいつもやるでしょう?」
「そうだね」
「で、バスタブにはったお湯を飲もうとしたから、トラ(仮名)の顔の前に手を出して飲ませないようにしたのさ」
「うん」
「そしたらトラ(仮名)も諦めたらしく、風呂場から出てったんだけど」
「うん」
「バスタブからドアのとこまで後ろ足だけで歩いたんだよ」
「へ?」
「いやいやいや、ほんの短い距離だよ?犬みたいに後ろ足だけでずっといたわけじゃない。でも、バスタブのふちにひっかけてた前足をはずしてすぐ4本足で歩いたんじゃなく、2本足のままゆっくりドアのほうを振り返って」
「うんうん」
「ドアのとこまでテテテテって。5、6歩・・・・いや、7、8歩くらいかなあ」
「へー!!!!!!」
「見たことないよねえ、そんなトラ(仮名)」
「ないないないー」
「だよねえ」
「うん!」
「まっ、俺も見たことないけど
「・・・・・・・・・・へ?」
「さて、ここで問題です」
「はい?」



「 今 日 は 何 月 何 日 で し ょ ー か 」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
(気がついた)





微妙な嘘ついてんじゃねーよ。



そう。
コイツはエイプリルフールにかなり微妙な嘘をつく男だった。
「最近2本足で歩くようになって、とうとうトイレでも立って用を足すようになった」とかいう嘘ならこっちもすぐに気づくだろうし、自堕落番長の話じゃなかったとしても、たとえばこの人みたいに宇宙規模に壮大なのをブっぱなしてくれれば思いっきりツッコむなり放置プレイするなりできるのだが(無論後者を選択する俺)、この男のつく嘘はいつもギリギリで、だからあたしは翌年も騙された。

翌年の4月1日、男は帰省中だった。
男の実家はたくさんの白鳥が渡来することで名の知れた土地にあり、そしてそれは、ひと冬をそこで過ごした渡り鳥が北に旅立つ時期でもあった。
何の用があったのかは全く憶えちゃいないのだが、「声が聞きたかったの」みたいな理由以外であたしが電話をすると、男は明らかに周囲を憚るような声で出た。
タイミングが悪かったのかと思い「後にしようか?」と言ったのだが、男は「大丈夫」とは言いながら、でも相変わらず声を潜めたままだった。

「後でもいいんだよ」
「いや、ほんと大丈夫。ガラス屋さんきてるけど母親が対応してるから」
「ガラス屋さん?どした?」
「あれ。ニュース見なかったの?」
「へ?」
「なんだ。それで電話してきたんじゃないのか」
「なになに!?」
「今朝、うちの2階の部屋の窓に白鳥の群れがぶつかったんだよ」
「へ?」
「NHKのローカルニュースでやってたんだけど見なかった?」
「見てない見てないー」
「ウチ、去年2階を改築して窓がデカくなったでしょう」
「うん」
「それが仇になったのか、昨日の夕方、北に帰る白鳥の群れの、まあほんの何羽だとは思うんだけど、窓にぶつかったっぽいんだよね」
「割れたの?」
「うん。あのデカいガラス、結構高かったんだよー。でも役所の人に聞いたら修理費は自腹だってさ」
「大変だあ」
「・・・・こっちの心配してるけど、お前はそんなんで大丈夫なわけ?」
「え?何が?」



「だって、毎年毎年まんまと騙されてんじゃん」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
(気がついた)





毎年毎年、お前が微妙な嘘つくからじゃ、ぼけ。



エイプリルフールに乗っかって「当時はまだあたしも初々しかったのよ」なんつう大嘘を書きたいわけでは全くない。
あたしは当時すでに、10歳以上年上のその男からそれはもうシツコイくらい、「俺よりずっとオヤジくさい」と言われていたし、エイプリルフールに騙されたのは後にも先にもこの2回だけ。
だから、あたしにとって大昔のこの出来事が、エイプリルフールに纏わる数少ない思い出だ。



さて、今朝のこと。
いつも通りの時間に起きて部屋のドアを開けると、既に夏目父は出かけたあとだったようで、玄関マットの上にスリッパが揃えて置いてあった。
「夕べ、早く行くなんて言ってなかったけどなあ」と思いスリッパを眺めていると、まるであたしが起きるのを待っていたかのようなタイミングで、部屋のケータイが鳴った。
夏目父からのメールだった。



タイトル:おはよう。

玄関にあった缶、捨てておきました。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



あ り え ん 。
(きっぱり)




確かに、今日の朝捨てるため、昨夜のうちにビン・缶・ペットボトルを玄関に置いてはいたけれど、




(昨夜撮影。WBCを見ながら親子で呑みまくった氷結)



夏目父は、「親の遺言か?」っつうくらい頑なに、ゴミを捨てに行かない人である。
目の前にゴミ袋があっても、跨いで出かける人である。
どんなに気が向いたところで絶対に捨ててくれるわけがない。
が、すぐに今日がエイプリルフールだと気づき、多分これが夏目父のネタなんだろうと思うに至った。
ところが、だ。
そのメールに返信もせず再び部屋から出て改めて玄関を見てみると、前夜置いたハズの場所から缶がなくなっていたのだった。
ただ、悲しいかな、缶がないからといって即、「ほんとに捨ててくれたんだ!」と思えないのが夏目家なわけで、過去の忌まわしい事件を思い出したあたしは、一目散に風呂場へと向かった。
しかし、意外なことにそこにも缶はなかったのである。

「ホントに捨ててくれたってことか?いや、どーーーー考えてもあり得ねえんだけどなあ」などと、なんだかモヤモヤしながら4畳半の部屋に行き、ベランダに出て朝の一服。
今にも降り出しそうな空を見上げながらタバコを吸っているとようやく、エイプリルフールである今日が夏目父方の祖父、つまり夏目父の父親の命日であることを思い出したのだった。



あたしの祖父は、夏目父がまともに思えるくらい超フリーダムな人で、エイプリルフールに逝ったのがしっくりくるほど面白いことが大好きな人だった。
夏目父も人の子である。
4月1日という判りやすい親の命日を忘れているハズはなく、実際、いつも夏目父は端折ってしまっているというのに今朝の我が家にはお線香の香りが漂っていた。
そうか・・・・。
じいちゃんの命日だから、普段やらないようなことをやってみたくなったんだな・・・・。



少ししんみりしてタバコを吸い終え、4畳半から出ようとした。
するとその時、あたしひとりしか居ないハズなのに、ドアの向こうにかすかな人の気配を感じたのだった。
瞬時に思ったのは、「もしかすると、イレギュラーに早く出かけたらしい夏目父が玄関の鍵をかけ忘れたのかもしれない!」ということだったが、だからといって4畳半に篭っているわけにもいかず、恐る恐るドアを開けて玄関を覗いてみた。
するとそこには、ほんの数分前に探していたブツがあった。









(なんで?)


(さっきはなかったのになんで?)



狐につままれたような気分になり、暫し呆然と缶を眺めているとまた、部屋でケータイが鳴った。
呆然としたままケータイを取りに行き、受信したての夏目父からのメールを開封した。
で、脱力した。





タイトル:ウシシ!

だまされたね!
玄関にスリッパを置いて、ゴミを持って部屋に隠れていたのでした
今日はエイプリルフールですよ~
じいちゃんの命日なのでじいちゃんが喜びそうなことをしてみました






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



じいちゃんよりお前のほうが喜んでんだろ?そうだろ?





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 連載!楽しみっス、P様!