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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



3月初旬から歯列矯正を始めた。
歯科医に勧められ始めてはみたもののこれが案外大変で、いや普通は、引っ張られている歯の痛みや、器具が当たって口内炎が出来たりことが大変らしいのだが、痛みに鈍いあたしに限ってそれはなく、じゃあ何が大変なのかというと、毎週歯医者に通うこと自体がなんだか大変。
治療は毎週土曜日、2時間半程度で済むというのに、そのたった2時間半ぽっちのために生活リズム全体が崩れ始めてきている。

一番の問題は、土曜日に歯医者に行く予定があると他の予定が一切入れられないこと。
なんでそんなことになるのかは巧く説明できないのだが、歯医者に行くまでは「○時から歯医者だ」と思って他のことが手につかず、歯医者に行って帰ってくれば今度は大仕事を終えた気分になり、結局ほかのことを何もせずに土曜日が終わってしまう。
歯医者に対する恐怖心は皆無に等しいので、どうやら、「毎週決まった時間に用事ができた」というただそれだけのことで生活リズムが小さく崩れているらしい。
長いこと同じ家に住み同じ会社に勤め、子供も産まず結婚もせずに暮らしていると、生活リズムの変化に順応する能力が衰えるのかもしれん。
つうか。



土曜日に雀荘に行けないのが、なんかすげえ辛ぇ。
(行っても辛いじゃん、つうツッコミ不可)



そんなギクシャクした日々が1ヶ月以上続いた先週土曜日、破壊しただけの4畳半の壁の続きをやりたい欲がようやく湧いてきたので、結構な決意で歯医者に行く前にホームセンターへ行き、石膏ボードやら諸々を買うことに成功した。
が。



思いがけないところで躓いた。



諸悪の根源は、あたしが意を決したのが4月に入ってからだった、ということにある気がする。



ホームセンターの売り場には大して種類があるわけでもないから、厚さと、裁断して貰うサイズさえ間違わなければ、石膏ボードを買うこと自体は簡単だ。
ちなみに、あたしが買った石膏ボードは2枚で、1枚は910mm×1820mmという元サイズから幅を数センチ切り落として貰ったものと、もう1枚は、天井近い斜めっている箇所用にL字型のもの。
一応サイズを測りメモった紙を持って行ったし、しかも、L字型のは図解付き。
あたしが描いた図は当然へなちょこだったが、それでも、間違えるほうが難しいんじゃね?というような簡単な形である。






そのメモを手に持ってあたしは、売り場付近にいた店員に声をかけた。

「石膏ボードの裁断をお願いしたいんですがー」
あ、はいっっっっっ!

この元気なお返事で判るように、あたしが声をかけた店員は新人クン。
胸につけたネームプレートには赤く太いフォントで、



研 修 中



と書いてある。
とはいえ、新人なら、判らないことがあれば先輩に訊くんだろうし、何よりあたしのオーダーはとても簡単なもの。
石膏ボードをちょちょいと切って配達してくれりゃあいいだけである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
えーっと。
あたしは今、「石膏ボードの裁断をお願いしたい」って言ったよな。
向こうは元気よく「はいっ!」って言ったよな。



じゃあ今のこの沈黙は何待ち?



ああ、そうか。
新人クンはあたしが、何ミリのボードでどういう裁断をするのかを言うのを待ってるんだね。
つうわけで、微妙な間を挟んだ後あたしがメモを差し出しながら石膏ボードの裁断を頼むと、新人クンはそれをじっと見ながら、「お持ち帰りですか?」と訊いてきた。

「配達をお願いします」
「あっ、配達ですね」
「はい。今日中の配達って可能なんでしょうか?」
「あっ、今日中ですね」
「ええ」
「あっ、そうですね」

物凄くどうでもいい話だが。
あたしはどうもこの、「~ですね」という言葉の結び方をされると不安になるタチで、実際この時も、「配達ですね?」「今日中ですね?」と訊き返されているのかと思っていちいち返事をしていたのだがそういう意図ではなかったらしく、最後の「そうですね」にいたってはその後の流れを鑑みるとどうやら、「今日中の配達は可能です」という意味だったらしい。
新人クンの意図することが通じないのが世界であたしだけだとしても、やっぱりあたしは、「今日中の配達ご希望ですね?はい、可能です」とハッキリ言い切ってくれる人に接客して貰いたい。



その後、配達先の住所などを所定の用紙に書き込んで、石膏ボード代330円(安っ!)を含む代金を支払った。
が、そういえば裁断サイズはあのメモだけで判るのだろうか?と不安になり、あたしが描いたへなちょこメモを手にしている新人クンに訊いてみた。

「そのメモで判りますか?」

すると新人クンは、それまでの受け答えと同じように、「あっ、判りますね」と言った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ま、ま、まあ、判ると言うんだもの、あたしがそれ以上念を押すまでもないのだろう。



ホームセンターを出て歯医者へ行き、睡魔と闘い、睡魔に負け、歯医者の先生に起こされるもすぐまた寝る、といういつも通りの展開で2時間半が過ぎ、眠くて眠くて仕方がない状態で帰宅した。
が。
約束の時間より早く配達されたらしいブツを玄関の前で見つけた途端、睡魔がぶっ飛んだ。









L字型になってねーし。



つうか。



910mm×1820mm(デカいほう)のがねーし。



やっぱり判ってなかったのかなあ。
それとも単なる配達先間違い?
と思いながらホームセンターに電話し、こっちの都合で正しいブツは翌土曜日(つまり今日)の同時間に届けてもらうことにした。
で、つい数時間前。
睡魔と闘い睡魔に負け、歯医者の先生と歯科助手のおねえちゃんに起こされるもまた寝て・・・・と、先週より更に眠くて眠くて仕方がない状態で帰宅した。
で。
また、ぶっ飛んだ。



先週配達されたものを返さないといけないから、「配達前に電話いれますね」と言っていたのに電話ナシ。
なのに玄関にブツが置かれていた。
先週間違った1枚を引き取らなかったわけだから、うちに配達された石膏ボードが計3枚になってしまったのは理解できるが、









L字のもなけりゃ、デカいのもなし。





つうか。




先週間違えて配送したのを更に2枚追加してどうするよ、新人クン。






(3枚重ねて立てかけてみるとピッタリ揃い、脱力した)



つうわけで。
たった330円の物を納品するだけで既に2回も間違っている新人クンだが、今のところあたしには、店舗の新人教育がどーのと苦言を呈するつもりもなければ、怒鳴り込む気もない。

ちなみに、次回納品は明日夕刻。
L字型の石膏ボードと、ほぼフルサイズの石膏ボードを持ってきてくれたらヨシとしよう。
でも。





3 度 目 は ね え か ら 覚 悟 し ろ よ 、 新 人 。
(思いっきり野太い声で)