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BOOK INFOMATION

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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)




我が家で1ヶ月以上前から繰り返し交わされてきた会話が二つある。
ひとつめは、

「これで全部?」
「他にもある、と思う」

で、ふたつめは、

「これ何?」
「知らね」

である。
それぞれ、質問ひとつに答えもひとつ。
続きはない。
一見すると完結しているように見えるが、繰り返し交わされているということはつまり、どちらも解決していないまま1ヶ月ちょっとが過ぎたということである。

ひとつめの会話については、互いが省略している言葉を書けばすぐに意味は通じる。

「これで(今年度の領収書は)全部(出した)?」
「(いや、)他にもある、と思う(けど探してない)」

夏目父は超小企業の経営者なのだが、誰から見ても会社経営には向いていない性格なので、金が絡むこと全般と申請や届け出は創業時からあたしがやっている。
幸か不幸か超小企業なのであたしが日々やっている仕事量は大したものではない。
が、領収書に絡んだことでは決算時、毎年大いに揉めている。
何故なら会話の通り、夏目父が領収書を逐一あたしにくれないからで、くれない理由は、




仕事には関係ないモンを買ったとき、あわよくば会社の経費で落としちまえと思って領収書を貰ったものの、それを見せたら鬼娘が速攻で却下することが判っているから。





で、ある。
もちろん、「却下されんのが判ってんなら自腹きる覚悟決めろよ!」とは思うし、一般企業のように「領収書がなければ清算できません」と切り捨てるのは簡単だが、厄介なことに過去の経験から、夏目父が「仕事には関係ないモン」と思っているものの中に、「仕事に関係あるモン」が入っている確率が高いということも判ってしまっている。
納付する各種税額に影響が無いともいえないので、バッサリ切り捨てるわけにもいかない。
なので毎年GWちょい前くらいから、「締め切りますよー」「後から出しても清算しませんよー」「無駄に多く税金払うことになるかもしれないんですよー」「それで我が家が窮したら、納豆が買えなくなるかもしれないんですよー」とやんわり言うのだが、夏目父はそれを聞いたところで慌てるような経営者でもないし、あたしはあたしで、「お前が出さないっつうんなら、あたしが引き出しン中、全部ひっくり返してやる!」なんつうこともしない。
つまり。




毎年この時期は、物凄く意味のない根比べをしている。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
こうして書いてみると、どんだけ精神衛生上よろしくないことをしているか改めて気づかされるし、決算時にそんなことになるくらいならいちいち催促すればいいということくらいはあたしでも判るが、毎日毎日家に帰ってまで、仕事や金の話をしたくないのだから仕方ない。
とにかく、夏目父が「これで全部」と言ってくれるまでは決算確定が出来ないので、それとなく催促しつつ、「せめて6月第1週には会計事務所に確定データ送りたいなー。夏目父、いつくれるのかなー。少しだといいなー。現金残で賄える額だといいんだけどなー。もしも足りなくなったところで預金残は動かせないから役員借入れ立てないといけないのかなー」と、頭の中が決算一色になり、他にどれだけ優先順位の高いものがあろうとそれらは先延ばしになってしまうという、悪循環な状態が毎年1ヶ月続く。
だから、そんな中であたしが、自動車税を期限前に払ったのは奇跡に近い。(夏目基準)





(当然のことをミラクル視するのがダメ人間の証)




(コンビニ納付ばんざーい)





結局、夏目父が「これで全部」と言ってくれたのは5月末日。
「よっ!待ってました!」とばかりに処理を始められればいいのだが、月末月初は他にもすることがあるため、隠し領収書の処理に着手できたのは6月2日の夜だった。
それにしても今回は、夏目父が隠し持っていた領収書の量がヒドイ。





(収拾がつかず、とりあえず月別昇順でクリアファイルに入れてみた、の図)





靴とか靴とか鞄とか服とか服とか靴とかの領収書(ゴルァ!)は躊躇することなく捨て、「なんでこういう判りやすいモンまで隠し持ってるかなあ」と首をかしげたりもしつつ、





(社用車に関係する領収書に、どんなやましいことがあるんだぃ?)





3晩かかって全データの入力やら照合やらが終わった。



そう、たった3晩の話なのだ。
でも、決算処理終了直後、その嬉しさを誰かに伝えたくて書いたコメントへの返信にあったカリノさんの言葉をもじると、「完全三夜漬けだったけれど、重圧だけは1ヶ月以上前から続いている」状態だったから、それを終えたときの開放感は尋常じゃあない。
どんくらい尋常じゃないかというと、翌日呑みに行った店で、待ち合わせていた友人が来る前に、ひとりで3人前のモツ鍋を平らげちゃったくらいハイテンション。(実話)





(店員に「お連れ様がいらっしゃってからにしますか?」と2回も言われたのに注文。そして完食)





土日は部屋に篭って、時間も何も気にせずに長編小説を再読しまくり、

(敢えて報われない系をチョイス)

1ヶ月半ぶりにようやく、心ここに在らずな状態から抜け出した。



さて、あたしの頭ん中が決算一色だった間、夏目父はどうしていたのかというと。
決算とか領収書とか金とかとは別の世界、つまり、いつもと概ね変わらない毎日を過ごしていた。





(「2日で11パック。絶好調だなオレ」って、おうこら)





ただし。
毎年そうしているように、春先からはベランダに出ることが増えてきた。
移植ゴテで植木鉢の土を掘り返したり、肥料らしきものを遣ったりしているようで、そのうち、「クレマチスに蕾がついた」とか言うようになった。
やがて、「ホームセンターに行きたいなあ」と呟くことが増えたので、「勝手にお行きなさい」と言いたくなるのを我慢して連れて行くと、肥料を買ったり、小さい鉢植えを買ったり。
で、暫くすると、「あの時買った花をデカい鉢に植え替えたら収拾がつかないくらい増えちゃってさー」と嬉しそうに語る。





(収拾がつかない花・その1)


(収拾がつかない花・その2)





そうこうしているうちに、少なくとも10年前からこの時期に必ず咲いている2種類のクレマチスの蕾が開き始め、花を見ては「去年よりデカい」と大喜び。





(手のひらサイズ)


(同じく)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



ん な こ と や る 前 に 領 収 書 出 せ や 、 ゴ ル ァ 。





と、言いたい気持ちも無いではないが、あたしが領収書を待っているあいだ夏目父が草花を愛でるのに熱中するのは毎年のことなので、ここまではまあなんとか目を瞑ることができた。
だが、今年はこの後がかなり厄介だった。

話は随分前、去年の春まで遡る。
夏目父が会社近くを歩いていると、民家の庭先に生い茂っている草花が目に入った。
その時点ではまだ花は咲いていなかったがやたらデカい蕾がボッコボッコついている。
改めてよく見てみるとそれは庭のいたるところに生えていて、繁殖力の強さから「雑草か?」とも思ったらしいが、花壇は綺麗に手入れされているからこの雑草だけを放置してるとも考え難い。
いずれにせよ、蕾が開くのはもうすぐだろう。
夏目父は、どんな花が咲くのかを心待ちにしていた。

花は、夏のあいだずっと咲き続けた。
そして、どんどん増え続けた。
民家の庭を飛び出て、道端や向かいの空き地に芽を出し花をつけた。
夏目父は、「待ってました!」とばかりに道端のそれがつけた種を1粒だけ採り、いや、盗り、今年になって然るべきタイミングでベランダの鉢に蒔いたのだった。
で、その花が咲いたのと同時期に、最初に書いた会話が始まったのである。




「 こ れ 、 何 (っていう花) ? 」





「 知 ら ね 」
(花の名前をご存知の方、コメント欄にて教えて下さると嬉しいです)
( 『 ニゲラ 』という花だそうです!あやむ。さん、Akeさん、ありがとうございましたー)







(直径4~5センチ。うちのは水色だが、「白いのもあった気がする!」とは種泥棒談)






(花びらが落ちると、ツッコミどころ満載の姿になる。
「この膨らみに種が出来てた気がする!」とは、種泥棒談)





そりゃあもう、「知らね」と言うのが億劫になるくらい何度も訊かれた。
質問している風でなくただの独り言に聞こえることもあったが、「種をとってきて蒔いて望みどおりの花が咲いたけど、ところでこれ何て花?」と思い続けているあたりが可笑しくもあり、こっちの気分次第でイラっとすることもあって、つまり、夏目父が「これ、何?」と言うのを聞いたときの自分の感情は、その時の精神状態を表しているのかもしれないと気づき、だから感情のままでなく、いつも同じトーンで「知らね」と答え続けた。
というのも。
一社会人として客観的に見ようが、家族として贔屓目に見ようが、経営者には全く向いていない夏目父が会社を続けるということには、あたしみたいなサラリーマンにはないジレンマやストレスが大いにあるハズで、だからせめて家では、そういうストレスを感じることなく好き勝手に暮らすべきだと思うから。




「あ、今日冷凍室にあったハーゲンダッツ、2個食べた」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



好 き 勝 手 し 過 ぎ な ん じ ゃ 、 ボ ケ !
(やっぱり鬼娘)




兎にも角にも。
例年通り、自分の会社の決算なんてものは気にも留めず、会社の金がいくらあろうと無かろうと意に介さず、好きなモンを食べ好きなことをし続けているうちに夏目父の会社の平成20年度決算が確定した。




お つ か れ ー 、 あ た し ! ! !



ああそうだ、夏目父。




DSのゲームソフト代は経費で落とせねえって、何回も言わせんな。






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