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片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



思いつきやノリで買ったっきり使わないでいた物のほとんどを処分して以降、めっきり、服や雑貨を買わなくなったため、以前のように「気づいたら物が増えてる」ということがなくなった。
ただ、大量に捨てたそれらは、朝から晩まで嫌なことや辛いことをぐっと腹の底に押し込めて働いてようやく稼いだ金で買ったものだったからあたしは、使いこなせなかった大量の物を捨てるという行為で、自分のバカさ加減を思い知ることになった。
つまり、今あたしが安易に物を買わないのは、二度と再びバカな自分を目の当たりにしたくないから、に他ならない。

でも、だからって未だにヤカンも鍋もフライパンも買っていないのはどうかと思うし、いくら使い勝手のいい物だからって、まともに使えないくらいボロになってるものを使い続けるのもどうかと思う。
物を大切に!とか節約とかエコとか言ったところで、古くなるモンは古くなるのである。
が。
毎日せっせと使っている物に限って、ボロになっても気がつかないものだ。



さて。
前回同様、気持ちよく晴れたある朝のこと。






資源ごみの回収日だったため、新聞やダンボールや雑紙をまとめてマンション1階の集積所に持っていった。




(この程度の量なら、4階から1階まで、1回に運べると最近気づいた)



汗だくで4階まで戻り、「ちょっとそこまで」な用事のときにいつも履いている靴を脱ぎ、それがなんだかヨレヨレなのに気がついた。




(年齢的にもアウトじゃあるまいか)



娘の行く末を案じた親の制止を振り切り、休みになれば早朝から海に行っていた20代前半に買ったエスパドリーユは、改めて見てみるとすげー汚くて、当時は物凄く気に入って買った記憶があるのだけれど、今も気に入っているかというとそうでもない。
「ちょっとそこまで」の時にだけ履いていたけど、そんな靴ばっかあっても仕方ない。
夏の休日はもう、Sassariさえあればいいさ。




(本当に安易に物を買わなくなった人が、色違いで3足とか買わねえと思う)

(履き易さと歩き易さが、デザインに勝る)



こうしてひとつのボロに気づいてしまったせいか、その日は、普段何気なく使っていた物をしげしげ眺めるようになり、伝線はしてないけどもしもの時(×色っぽいシチュエーション、◎その他のシチュエーション)にどうなのよ?なストッキングや下着をじゃんじゃん捨て、卵を入れた納豆をとくのに丁度いい大きさだけど随分前から欠けてしまっている40年物の小どんぶりを捨てた。








(5個組の4個目。残りの1個よ、あと20年くらいがんばってくれ)



そんなちまちました片付けでも、エアコンのない部屋で動いていればうっすら汗はかくもので、休日のまだ午前中だったけれど風呂に入ることにした。
で、風呂場で、毎日毎日使っているボロを見つけた。






(雑巾ではありません)





風呂場じゃちゃんと写らないので、部屋に持ってきてみた。






(重ねて書きますが雑巾ではありません。ボディタオルです)



そういえば随分前から、身体を洗っている最中に爪がひっかかるわ爪がひっかかるわ爪がひっかかるわで、朝から軽くイラっとしていたんだった。(カルシウム摂れ)
このボディタオルはもちろん捨てた。
で、新しいのを買ってこなくちゃなあと考えていると急に、だいぶ前にどこかでボディタオルを見たような気がしてきた。
なんかね、ピンクのヤツ。






(懐かし画像。「呆れる程コスメバカ」より)






(ブログって便利)






(洗面台の下から再発掘)






(幸い、荒々しい洗い方をしても肌を傷めない柔らか素材)



あぶねーあぶねー。
在庫を使い切らないうちに新しいのを買ってしまうところだった。
発掘したはいいが、仕舞ってしまったが最後、二度と再び陽の目を見ないなんてことにならなくて本当に良かった。



新品ばかりに囲まれて暮らしたいわけでは全然ない。
でも、それしか無いならともかく、他に使える新品があるというのにずっとボロを使っていては、いつまで経っても物が減らない。
日常的に使っているとうっかりボロさを見過ごしてしまうけど(あたしだけか)、貰いもののタオルなんてのは、じゃんじゃん使ってしまおう。
・・・・なんてことを思ったり、雀荘に行ったり雀荘に行ったり悔しがったりしているうちに休日が終了した。



ところで、今あたしのいる部署は空前の打ち上げブームである。
これまでどんだけ辛かったのか、いや全然辛くも大変でもなかったのだが、やたら手のかかる仕事をひとつ終えたというだけで連日、「打ち上げ」という名の呑み会が開催されている。
ひとつの仕事が終わって思いっきり伸びをしたらすぐまた次の仕事があるわけで、いつまでも解放感に浸ってはいられないハズなのだが、上司と南国と山口とあたしの4人だけで、なんだか毎日呑んでいる。

そしてそれは、何回目かの打ち上げの席だった。
居酒屋の座敷で呑んだくれていると、どこかでケータイが鳴った。
それはどうやらあたしのらしかったが全く出る気がなく、でも、ケータイを入れたバッグを山口の背後に置いていたため、いつまでも後ろでブルっているのが気になって仕方ない山口が、出ろとウルサイ。

「酔って電話に出てどんな用が足せるっつうの」
「つうか、よく誰からの電話なのか気にならないね」
「うん、全く」

が、そう話している間にいったん切れたケータイがまたジージー鳴り出した。

「出なよー」
「あ、じゃあ電源切るから、取って」
「あ?」
「バッグの上のほうにケータイ見えるでしょ。取って」
「ああ」

そうして山口があたしのバッグを覗いた。
で。
うひゃうひゃと笑い始めた。

「なに」
「ありえねー!うひゃひゃひゃ」

笑い転げる山口を見て、上司と南国が食いついた。

「なんだ?何を見つけた?山口」
「夏目のバッグになんか面白いモンでも入ってたか?」

上司のその言葉を聞いて改めて自分のバッグの中身を思い返してみたが、ケータイ以外は、財布と化粧ポーチくらいしか入っていないハズだ。
山口が笑い転げている間にまたケータイのジージーは止み、でも何度もバッグを覗いては笑っている山口が気になって言ってみた。

「だからなに」
「ねえねえ夏目さん、ちょっとバッグの中身、出していい?」
「おう」

すると山口は、「腹いてー」とか言いながらバッグに手を・・・・いや、指を突っ込み、親指と人差し指だけである物を摘み上げた。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
な、な、何のことはない、キーホルダーである。
酔っていたからではなく、素で、山口がこれのどこに笑っているのか判らなくて、暫く黙った。
が、これを見た上司も南国も、ウルサイくらい笑っている。

「え。なに。キティだから笑ってんの?」

素で訊いた。
すると、てんでバラバラの方を見て笑い転げていた3人が一斉に真顔であたしを見た。
そして、見事に声を合わせて言った。






「 き っ た ね ぇ か ら 笑 っ て ん の っ 」









前出のエスパドリーユより汚い物が不得手な方は
静かにブラウザを閉じてください。











(before → after)








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








野 良 猫 か 。





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 次回は4畳半の続きっ。