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BOOK INFOMATION

単行本 『 片付けられない女魂 』 は、Amazonマーケットプレイスで購入できます。
片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



(腕力自慢話の時間ですが、予定を変更してお送りします)



1ヶ月に1回くらい、平日の夜にあたしが夏目父よりも早く帰宅することがある。
で、あたしがリビングにいると夏目父は、帰宅してリビングのドアを開けた途端、驚いてピョンと飛び上がる。
先に帰ったあたしが自分の部屋にいたとしても、後から帰宅した夏目父がいるリビングのドアを開けると、ピョンと飛び上がる。
時には「ギャッ!」と声をあげたりもする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
もう14年も2人で暮らしているのだから、家に帰ってあたしがいることにいちいち驚かないで欲しいのだが、夏目父曰く、「驚くなって言われても、自分が帰った時に誰もいないのが当たり前になってるから、自然に体が反応しちゃうんだよ」だそう。
そうですかそうですか。(棒読みで)

それにしても。
リアクションって個性が出るなあと思う。
少なくともあたしは、家で何かに驚いてピョンと飛び上がった記憶などないし、ましてや「ギャッ!」なんて、大人になってからは一度もない。
そもそも、心底驚くこと自体が年々減ってきているから、自分がどんな驚き方をするのかを、すっかり忘れてしまった。
きゃっ♪だっけ?(絶対違う)
ギョギョッ!だっけ?(それはさかなクン)
オヨヨか?(それは三枝。しかも昭和)



・・・・なんつうしょーもないことを深く考え込んでいたわけでは勿論ないが、夕べ遅くのこと、久しぶりに、思いっきり驚く出来事があった。

23時ちょい前に帰宅し、玄関から真っ直ぐにリビングに行った。
あたしが「ただいま」と言うと、夏目父は何やらピリピリした様子。

「遅ーい!」
「へ?」
「お客さんきてるのに帰りが遅い!」
「は?」
「お友達。最初は玄関で待ってて貰ったんだけど、いつ帰ってくるのかわかんないし申し訳ないから、部屋に入ってもらってるよ!」
「どの部屋に誰を」
「アナタの部屋に。お友達の名前は知りません」
「名前知らないのに家に入れるって何」
「だって俺、会ったことあるもん」
「それ、男?女?」
「まあ、部屋に行ってみりゃわかるよ」
「つうか布団敷きっぱなしなんですけど」
「うん」
「うん、じゃねえよ」
「いいから早くー。俺が帰ってきた時間からずっと待ってるんだから!」
「・・・・それ何時」
「7時半くらいかな」



聞き間違いかと思った。
何故なら、重ねて書くがあたしが帰宅したのは午後11時ちょい前だからである。
いくら顔見知りの友達だからって、フツー、家にあげたことのない他人を3時間半も、ひとりであたしの部屋に置いとくか?
夏目父がオカシイ人だということは嫌というほど知っているけれども、基本的に人と関わるのは好きだから、そんな常識外れな招き入れ方をするとは思ってもみなかった。
つうか。
いくらあたしが仕事だからってさ、電話するとかメールするとか、来客を報せる方法はあるだろーが。
それもせず、かといって客人の相手もせず、何でお前はリビングでのほほーんとテレビなど見てるんだ?
・・・などなど、我が親に小一時間説教したい衝動に駆られたが、それはいつでもできると思い直し、あたしは急いで自分の部屋へと向かった。
後ろから夏目父がついてきたが、それは大して気にしなかった。



その向こうにいるのが誰か判らない状態でドアを開けるのは、結構怖いものである。
だから、自分の部屋なのに恐る恐るドアを開けた。
で、ますますワケが判らなくなった。
なぜなら。



部屋には誰も居なかったからである。



「どういうこと?」と、真後ろに立っている夏目父に訊いた。
すると夏目父は、あたしが着ている上着を引っ張りながら、おすぎかピー子のような口調(どっちでも同じだ)で叫んだ。



「ほら居るでしょ!お友達が!」

おすぎです。映画を観ない女はバカになる!バカな女は20分で飽きる (中経の文庫)
(どうしても、口真似しながら読んでしまう)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
真っ暗で誰もいない部屋を見て「ほら居るでしょ!お友達が!」と叫ぶ、 歳に不足がない我が親を想像してみて欲しい。
あたしはいろんな意味で怖くなり、今度は恐る恐る後ろを振り返った。
本格的にオツムが壊れてしまった可能性が高い夏目父は、それを裏付けるかのごとく、まるで何かに憑かれたような目で、部屋の中のある一点を凝視していた。
あたしは、もう一度部屋を見やり明かりをつけると、夏目父の視線が釘付けになっているであろう方向に目をやった。
すると、いた。







(注意:苦手という人が多いであろう系の画像が出ます)








(ブラインドの汚れっぷりを写したわけではありません)






(近づきます)








(体長3センチ程度の蛾です)







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
本人に確かめたわけではないが、確かめるまでもない。
夏目父がおすピーになるまでの経緯は多分こうである。

夏目父が帰宅して玄関のドアを開けたとき、外から蛾が入ってきてしまった。
異常なまでに虫嫌いの夏目父は大慌て。大暴れ。
で、意図的にかどうかは定かじゃないが、というかどっちでもいいが、勇気を出して娘の部屋のドアを開け、「しっ!しっ!」かなんかやったりやらなかったりしてみたら、運良く蛾は娘の部屋の中へ。
バタンとドアを閉めれば隔離終了。
ふぅ・・・・。
あとは娘の帰宅待ち。
うちの娘は虫なんて平気だし。
友達かよっ!っつうくらい平気だし。

・・・・みたいなカンジかと。
後から考えてみれば、確かに要領を得ない話ぶりだったし、玄関に並んだ靴を確認してさえいれば客人がいるのかどうかは一目瞭然だったハズで。
だから、「「友達」ってのを鵜呑みにしたあたしがド阿呆でした」ってことで話は終わるハズだった。
が、この後、思いもよらない夏目父の行動によって、あたしは思いっきり驚くことになる。



さて、夏目父があたしの部屋に招き入れたのが蛾だと判明したのだが、問題はその処遇である。
が、夏目父が相変わらずあたしの上着を力任せに引っ張っているから、部屋に入ろうにも入れない。
なので、「離してください」と言ってみた。
すると夏目父はおすピー度を増してしまい、「離したらどうする気っ!」と、まあ煩くて仕方ない。

「蛾を外に出すだけですが・・・・」
「どこから!」
「・・・・・・・・・・・窓から」
「どうしてティッシュで丸めてポイしないのっ!」
「丸めたティッシュ、どこに捨てりゃあいいわけ」
「・・・・あ」 ←虫の死骸入りティッシュが家の中にあるのもOUT
「だから殺さないで外に出すの」
「どうやって!」
「あ?」
「とまってる蛾をどうやって外に出すの!」
「どうやって?」
「そう!どうやって!」
「どうやってって、そりゃあ手で・・・・」



あたしがそう言ったときだった。
夏目父が、強く引っ張っていたあたしの上着から手を離した。
そして次の瞬間、後頭部に衝撃を感じた。
というか。



2 0 年 く ら い ぶ り に 、 親 に マ ジ で 叩 か れ ま し た 。



しかも。
ペシ、じゃなくバシッ!っと。
バシッ!っつうか、バコーン!と。
バコーン!っつうか、ズバコーン!と。
・・・・って、もういいですかそうですか。

言ってもきかない時にペシっとやる親ではあったけれど、まさかこの歳になって、悪くもないのに叩かれることになろうとは予想だにしなかった。
が、あたしが驚いたのは叩かれたことにではなく、蛾を素手で掴みかねない我が娘の後頭部を脊髄反射的に叩いてしまった己に驚いた夏目父の一言に、である。



「ひゃ・・・・」
「?」
「ひゃ・・・・!」
「??」





「 1 0 0 円 あ げ る か ら 今 の は 無 か っ た こ と に し て !」
(註:アラフォーの娘に言ってます)





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





駄 賃 か 。





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 なにこの、一足も二足も百足も早い大掃除ブーム。