BOOK INFOMATION
あたしは、会社の同僚の波平(仮名・独身・33歳)のことが大嫌いだ。 ・波平は毎日遅刻する。 ウチの会社では、深夜までの残業や徹夜は日常茶飯事。 でも波平の遅刻は、前日の退社時間とは関係していない。 前日何時に帰ろうが、とにかく毎日遅刻している。 もちろん上司にそれを注意されるのだが、たとえその場で「明日からは遅刻しません!」と逆切れ気味で宣言しても、翌日はやっぱり遅刻するという、意気地なしっぷり炸裂。 ・波平は遅刻してきたにも関わらず、出社するとすぐに伸びをしながら大あくびをする。 「遅刻してすみません」という態度が全く感じられないっっっっっ!のは置いておいて、上司が目の前にいようがお客さんが近くを通ろうがお構いなしでそれをやる。 上司と仕事の話をしている最中でもやる。 叱られてる最中でもやりやがる。 何のアピールだよ、それ。 ・波平は清潔感がない。 顔の作りの問題も大いにあるだろうけど、巷にはオシャレな30代男性が溢れているっていうのに、波平のファッションセンスは世の中のそれからはだいぶズレている。 ワイシャツはいつも白でくしゃくしゃ、ベルトは傷だらけ、ズボンの丈はびみょー、ズボンのケツポケットから覗いている財布もびみょー、ネクタイのセンスは理解ふのー。 そしていつも「お前、3日は風呂に入ってないだろ?」的なニホヒがする・・・。 ・・・・う、うぷっ・・・・。 ・・・と、波平の嫌いなところは挙げだしたらキリがない。 これでたとえば、「でも波平って企画力だけは抜群!」なら我慢もできるが、こんなダメ人間は当然のごとく仕事ができない。 常日頃からそんな波平の存在を疎ましく思っていたあたしは、今週の月曜日に波平のダメなところをもう一つ見つけた。 そして、気が狂いそうなくらいの焦燥感に苛まれた。 オフィスの一角に、2ヶ月前から波平が管理を任されているスペース(通称:『波平小屋』。命名:あたし)がある。 波平は自分の席にいるよりも『波平小屋』で仕事をしていることが多かったが、あたしは波平が管理するようになってからはそこに近寄ったことがなかった。 ちなみに『波平小屋』の入り口はセキュリティシステムによりロックされていて、その中にある資料の性質上、社内でもごく少数の人間しか入室を許可されていない。 朝9時。 始業時間になってももちろん波平は出社していない。 すると、上司がいつもにも増して苛立ち始めた。 9時半からの企画会議に使う資料を、波平が準備していないからだった。 上司が波平のケータイを鳴らしてみたが繋がらない。 必要な資料は『波平小屋』にあると思われた。 そこで、上司に言われたあたしは、ものすごく久しぶりに『波平小屋』に足を踏み入れた。 ・・・・・な、何これ・・・・・! |
き、き、汚ねぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!! |
『波平小屋』からは、とてもそこがオフィスの一角だとは思えないような臭いが漂っていた。 何しろ足の踏み場がない。 求める資料が数メートル先のラックの上に見えるのに、そのラックまでどうやって行けばいいのか皆目見当がつかない。 ラックまでのスペースには無数のダンボールが乱雑に詰まれていて、その周りには、エアパッキンやら発泡スチロールやらがバラ撒かれている。 あげく、床やダンボールの上やラックの上には、大量の空き缶・ペットボトル・コンビニ弁当の空容器が無造作に捨てられていたのだった。 ・・・捨てろよ! せめて食べ物のゴミは捨てろよ! つーか、ここはお前の家じゃないっつーの!会社だっつーの! 確かにお前が管理を任されているけど、お前の部屋じゃねえっつーの! 清掃業者が入れないスペースなんだから、お前が片づけろよ! いや、片づけなくてもいいよ! 片づけなくてもいいから散らかすなよ! 心の中で思いっきり毒づきながら、あたしはゴミの山を掻き分けてようやくラックまで辿り着くと、求める資料を掴んで『波平小屋』から、命辛々脱出した。 波平って・・・・!波平って・・・・! 片づけられない男だったのか! あたしはこの日を境に、自分の部屋を片づける決心をした。 「でもあたしはぁー、食べ物のゴミはマメに捨ててるからぁー、波平よりマシだしぃー」とか思ってる場合じゃない。 |
五十歩百歩。 目くそ鼻くそ。 |
この事実に気づいたあたしは愕然とし、今こうして奮起しているのだ。 |
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