• 11<<
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • >>01

BOOK INFOMATION

単行本 『 片付けられない女魂 』 は、Amazonマーケットプレイスで購入できます。
片付けられない女魂     Amazon
(扶桑社 / 全503頁 / 書き下ろしアリ)



4畳半の壁と床を自力でリフォームするにあたり、雨漏りよりもデカい問題があった。
よその集合住宅の事情は知らないが、うちのマンションでは、リフォームをするときは事前に管理組合にその旨を申し出る必要があり、加えて、元々絨毯だった部屋をフローリングに替える時には必要書類を提出しなければならない決まりになっているのだが、問題はその書類。



リフォームにかかる期間を記入する欄があるのだ。



「最長1年。あ、やっぱ1年半」とは書けないし、かといって、終了予定日を書いたところであたしは自分自身と交わした約束を破る常習犯なわけで。
予定日までに終わらないなんてことになったら、途端にやる気が萎えて頓挫するに決まってる。
自分の性格や生活リズムを優先して考える理想形は、片付け同様、期限を決めず自分の気が向いた時にちまちまとやることなのだが、集合住宅に住んでいるからにはそうそう我儘も言ってられない。
そこでひとまず、管理組合の理事長に相談してみることにした。
幸い、2008年の12月まで理事長だったのは、あたしがうちのマンションで唯一「なんとなくメンドクセ」と思っていた人だったが(こら)、今年1月からの理事長は、うちのマンションが誇るチーム・スーパー専業主婦のリーダーである。(正確にはその旦那様が理事長)
というわけで、1月のある週末、リーダーにお伺いをたててみた。



自力リフォームについては前例があったようで、リーダーがアッサリ、「階下の住人に、工期を決めない旨を話して了解が得られれば、問題ないでしょう」と言ってくれ解決したのだが、あたしが自力でリフォームすることを知ったリーダーが話してくれたことは、興味深かった。



リーダー宅は昨年プロに委託して大掛かりなリフォームをした。
メインは、システムキッチンとトイレを丸ごと取り替えることだったが、リフォーム業者と話しているうちにどんどん夢が膨らみ、思い浮かぶままにリフォーム箇所を追加していった結果、業者が出した見積り額は当然、予算を遥かに超えてしまった。

「でもね、それはいいのよ」
「あ、いいんですか」
「そう、いいの。旦那には、予算オーバーするかもしれないって言ってあったから」
「なるほど」
「問題はね、リフォームしたいと思う箇所が、私と旦那では違うってことだったの」
「ふむ」
「うちの旦那は、これまで息子が使ってた北側の4畳半を自分の部屋にしたくてね、でも壁紙は汚いし絨毯もヨレヨレだから、キッチンとトイレの次は4畳半をリフォームしたがってたのよ」
「そうなんですか」
「だから私ね」
「ええ」
「自分でやってみたら?って言ったの」
「おお!」
「そしたらうちの旦那、「自分でやってみてもいいの?いいの?」って喜んじゃって」
「旦那様、そういうことお好きなんですか?」
ううん、全然。なのになんだかやる気になったみたい
「ほ、ほう」 ←なんだかやる気になった女
「それで結局リフォーム箇所は、私の要望が通ることになったんだけど」
「ええ」
「問題は旦那の4畳半」
「へ?」
脚立を倒して壁に穴開けちゃったの。そしたら急にやる気がなくなったみたいで、壁紙を一面剥がしたところで断念しちゃった





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





えーっと。





リーダーの旦那様が未来の俺に思えてきたんですが。





そんなわけでリーダー宅では結局、4畳半のリフォームをしないことに決めた。
壁紙を剥がし穴が開いてしまった一面だけは、旦那様が穴を補修した後で新たに白い壁紙を貼ったらしいが、それが却って他の箇所の古さが際立たせることになってしまい、旦那様はそれっきり、4畳半の部屋に足を踏み入れなくなった。
ところが、やる気と自信を失った旦那様を見るに見かねたリーダーが、数日かけて4畳半をとことん掃除し、壁の傷や壁紙が剥がれていた箇所を補修してあげると、旦那様は涙を流さんばかりに喜び、今では4畳半にたんまり自分の物を運び入れて、趣味の時間を満喫しているそう。
いい話だ。
いい話なんだが、そんな頓挫談を聞いてしまったら、なんだかあたしまで自信がなくなった。
しかしそこは、気遣いと行動力の人・スーパー専業主婦である。
「ちょっと待っててね」と言って旦那様の部屋に入ると、一冊の本を手にして玄関先に戻ってきた。

「これあげるから頑張ってね」
「え?」
「私が旦那のために買ったんだけど、うちではもう必要ないから」




(初めて手したDIY本)



リーダーの心遣いに泣きそうになりながら一旦家に戻り、その勢いですぐ、階下の住人にリフォーム期間について話に行った。
ちなみに階下の住人は、推定40代半ばのご夫婦と生後7ヶ月の赤ちゃんである。
元は、旦那様がご両親と一緒に住んでいたのだが、ご両親は実家に戻り、マンションは若夫婦の物になっているらしい。(リーダー情報)
赤ちゃんを抱っこして出てきた奥様にリフォームについて話をすると、最も音が響くであろう4畳半の部屋は物置きと化しているので問題はなく、寧ろ、赤ちゃんの鳴き声で迷惑をかけていないか心配していたと言う。

「全然聞こえませんよー」
「良かったぁー」
「あ、もしかしてうちの足音とか響きますか?」
「いえいえ、全く」
「もし気になることがあったらおっしゃってくださいね」
「いえ、主人とねいつも話してるんですよ。真上が静かなお宅で良かったねって」
「へ?」
「結婚したばかりの頃に住んでいたのが賃貸マンションだったんですけど、真上のお宅が派手な夫婦喧嘩をする方で大変な思いをしたものですから」
「そうなんですか」
「家族仲が良いお宅でよかったねーって、いつも話してるんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



2年に1回くらいはやりますからね?
前回の大喧嘩が2年近く前。ってことはそろそろか?)



奥様は、リフォームの件を旦那様にも話しておくと言ってくれ、その日の夜、旦那様も快諾してくれた旨をわざわざ言いに来てくれた。
で、翌日。
4階にある我が家の下にあるお宅3軒と隣家にちょっとした品を持って挨拶に伺い、どのお宅にも快く了解して貰えたことをリーダーに伝えた。
今のマンションに越してきた頃のあたしは、住人同士の付き合いや挨拶の大切さを知らなかったし、それどころか、「近所付き合いなんてメンドクセ」くらいのことを平気で思っていた。
そんなあたしが挨拶回りとは、歳はくってみるもんだ。



さて。
こうしてようやくリフォームに着手できることになったのだが、モノグサでダラダラでグズグズなあたしが大急ぎで挨拶回りまで済ませたのには理由があった。






それは、リーダー宅にお邪魔した前日の深夜。
過去に水分を吸って反り膨らんだこの石膏ボードの向こうがどうなっているのか確かめたくて、隙間を広げてみようと指をかけ、ボードを手前に引っ張ってみた。
すると。
脆くなっていた石膏ボードがポロっと欠けてしまった。






が、隙間はイマイチ広がらなかったので、欠けたところにまた指をひっかけて手前に引っ張ってみた。
すると。
バキッ!という音と共に石膏ボードが割れてしまった。






念のために書いておくと。
指1本で引っ張って割れたのは、過去に雨水を含んだ石膏ボードが脆くなっていたせいで、あたしが怪力だからではない。
あたしは、鼻をほじるくらいの力しか加えていない。(いらない一行)

さて。
斜めにくっついていたボードが割れ、ダラリと垂れ下がっている。
ここまで破壊する気はなかったけど、こうなったんだもの中を見てみようじゃないか。
割れて垂れ下った石膏ボードを持ち上げてみた。
するとそこには。
前回以上に不可解な物体があった。




(これを見て「なるほどね」と思う人が少ないのを前提に書いています)



石膏ボードの向こう側に何があるのかはイマイチ想像が出来ていなかったから、最初はデカいカビの塊かと思った。
で、恐る恐る素手で触ってみたのだが、意外にもこの塊、ガチガチに硬い。
なんなんだこれ。
ここの右側の石膏ボードも浮いていたので、それをバキっと引っ張ってみると、やはり同じような塊が現れた。




(水色のボードの上に、2個の硬い物体がくっついているように見える)



塊の奥にある青っぽいものが断熱材だということは判ったのだが、この硬い塊が何なのかは見当もつかない。
マジで何だ。
で、よくよく観察してみると。
石膏ボードの痛みが酷かった箇所の向こうにあったのは左の塊で、確かに塊の周囲にはかなり広範囲にカビがある。






ということは。
断熱材の向こうで雨漏ったものが、断熱材と塊の隙間から内側に侵入し、塊の縁を伝って石膏ボードに浸透したってことか?
っていうか、断熱材の向こう側も大変なことになってるんじゃないだろうか。
いや、それよりもまず。
何なのかはサッパリ見当がつかないけれど、でも、



カビにまみれたこの硬い塊を取り除きたい。



で、早速素手で塊を握って前後左右に動かそうとしてみるも塊はビクともしない。
ただ、たとえば頑丈なドライバーをあてて金槌でガンガンやれば剥がせそうな気がしないでもない。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





や、





やってみてぇ。



つまりあたしは、取り除いていいものかどうかも判っていないのにこの塊をガンガンやって剥がしてみたいがために、管理組合や他所んちへの挨拶を急いだのだった。



ちなみに。
我が家の4畳半の壁がGL工法なる方法で張られていることと、この塊がGLボンドなるものだと知ったのは、管理組合からリフォームの承認を貰った翌日の深夜、塊を見つけた3日後のことである。
しかも、石膏ボードについてネットで調べている最中、偶然辿り着いたサイトで見つけた。
で。
「なるほどなるほどー」と納得しながらそのサイトを読み進めるうち、あたしは、もうひとつの発見をしてしまったのである。





ア ド バ イ ザ ー の 出 番 、 な く ね ?





ということに。



(続く)





人気ブログランキング
 うほ!ありがとうございまーす!!!
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック